かえでさん(大人):
ハロウィーンコンサートで弾く「ノクターン」を練習しています。
もう、暗譜はほとんど出来上がり、ピアノの音色もしっとりと、大人らしい美しさを増してきました。
あとは、前半に比べてまだ弾き込み回数の少ない後半を、前半に追いつくレベルまでもっていくのが目標でしょうか・・・
レッスン時間が終わりに近づいたころ、
「あのう・・・前から聞きたかったことがあるの」と、かえでさんが言いました。
「この、前半から後半に入るところ・・・急に転調して、違った雰囲気になってくるんだけど・・・ここで、いつも違和感があって・・・どう弾いたらいいのか迷ってしまうの」
というのです。
なるほど、前半の終わりで 一度曲が終わったような感じになり、けれどもすぐに転調された後半が続いて出てくるので、きっと聞いているお客さんも当惑するだろうし、弾いているかえでさんも、どう弾いたらいいのかわからない、ということなのですね。
私は言いました。
「かえでさんは、いつも人形劇や朗読で、たくさんの表現を 人前でやってるでしょ。その時は、文章をそのまま、同じテンポや抑揚で読んだりしてないでしょ。セリフや文章の内容によって、ゆっくり読んだり、早口で読んだり、声の色合いを変えたり、間をあけたり、たたみかけるように読んだり・・・ ピアノだって、それは同じなの。なにも、四分休符が書いてあるからって、1拍きっちりのテンポで休んだりするんじゃなく、その1拍だって、たっぷり休んだり、だんだんゆっくりしたり、曲の内容によって いろいろ表現するのよ。
今言ってた、この、前半と後半をつなぐ部分・・・ここは、大きく曲調が変わるところだから、一度 しっかり落ち着いた感じに納めてから、一息いれて、『さあ、つぎが始まります!』という感じに、決然と弾くところ。ほら、オーケストラだったら、指揮者が、全員を見て、大きくサッ!と指揮棒を振り上げるところ」
「ああ、それだったらよくわかる。じゃあ、そのように表現してもいいの?」
「もちろんよ。 どんなものでも、伝えたいことは同じ。心は一つなの。自分の気持ちやメッセージを、ピアノ演奏で表現したり、文学や芝居で表現したり、絵画で表現したり・・・どんなジャンルでも、自分の思いを どうやったら人に伝え、感動を分かち合えるか、と工夫して、抑揚や間合い、声音なんかで表情をつけるのよ。かえでならよーくわかってるでしょ、そういう気持ち」
「うん、わかってる。だけどピアノで、そんなことしちゃいけないのかと思ってたの。でも、もう、自分なりに弾いていいんだってわかったから、工夫していろいろやってみます」
かえでさんには、目標が見えて 道が明るく開けたような気がしました。
芸術の心・・・魂はひとつ、美しいものに感動する心です。
それを表現するのに、みんな自分の分野、得意な方法で、美しい魂を表現しているのです。
自分の気持ちを表すのに、遠慮はいりません。自分の感動に正直に、すてきな表現をしてください。
ハロウィーンコンサートで弾く「ノクターン」を練習しています。
もう、暗譜はほとんど出来上がり、ピアノの音色もしっとりと、大人らしい美しさを増してきました。
あとは、前半に比べてまだ弾き込み回数の少ない後半を、前半に追いつくレベルまでもっていくのが目標でしょうか・・・
レッスン時間が終わりに近づいたころ、
「あのう・・・前から聞きたかったことがあるの」と、かえでさんが言いました。
「この、前半から後半に入るところ・・・急に転調して、違った雰囲気になってくるんだけど・・・ここで、いつも違和感があって・・・どう弾いたらいいのか迷ってしまうの」
というのです。
なるほど、前半の終わりで 一度曲が終わったような感じになり、けれどもすぐに転調された後半が続いて出てくるので、きっと聞いているお客さんも当惑するだろうし、弾いているかえでさんも、どう弾いたらいいのかわからない、ということなのですね。
私は言いました。
「かえでさんは、いつも人形劇や朗読で、たくさんの表現を 人前でやってるでしょ。その時は、文章をそのまま、同じテンポや抑揚で読んだりしてないでしょ。セリフや文章の内容によって、ゆっくり読んだり、早口で読んだり、声の色合いを変えたり、間をあけたり、たたみかけるように読んだり・・・ ピアノだって、それは同じなの。なにも、四分休符が書いてあるからって、1拍きっちりのテンポで休んだりするんじゃなく、その1拍だって、たっぷり休んだり、だんだんゆっくりしたり、曲の内容によって いろいろ表現するのよ。
今言ってた、この、前半と後半をつなぐ部分・・・ここは、大きく曲調が変わるところだから、一度 しっかり落ち着いた感じに納めてから、一息いれて、『さあ、つぎが始まります!』という感じに、決然と弾くところ。ほら、オーケストラだったら、指揮者が、全員を見て、大きくサッ!と指揮棒を振り上げるところ」
「ああ、それだったらよくわかる。じゃあ、そのように表現してもいいの?」
「もちろんよ。 どんなものでも、伝えたいことは同じ。心は一つなの。自分の気持ちやメッセージを、ピアノ演奏で表現したり、文学や芝居で表現したり、絵画で表現したり・・・どんなジャンルでも、自分の思いを どうやったら人に伝え、感動を分かち合えるか、と工夫して、抑揚や間合い、声音なんかで表情をつけるのよ。かえでならよーくわかってるでしょ、そういう気持ち」
「うん、わかってる。だけどピアノで、そんなことしちゃいけないのかと思ってたの。でも、もう、自分なりに弾いていいんだってわかったから、工夫していろいろやってみます」
かえでさんには、目標が見えて 道が明るく開けたような気がしました。
芸術の心・・・魂はひとつ、美しいものに感動する心です。
それを表現するのに、みんな自分の分野、得意な方法で、美しい魂を表現しているのです。
自分の気持ちを表すのに、遠慮はいりません。自分の感動に正直に、すてきな表現をしてください。