1か月に1度だけレッスンに来る べっきー君(メンズ)。
今日は「雨なので」と「雨だれ(ショパンのプレリュードOp.28 No.15)」を持参しました。
おおー、こういうとこがべっきー君のロマンチスト&おしゃれな所なんだよね。
ショパン大好きなべっきー君ですが、「雨だれ」は 今日初めてです。
なのにもう最後まで完全に弾きこんであって、さすがヒバリ教室特待生。
ちなみに「雨だれ」というのは 前奏曲28-15の通称なのですが、その名の由来はこうです。
全曲を通して、ある一つの鍵盤が淡々と打ち続けられ、その音がポタポタと落ちる雨だれを連想させる、というもの。
その「一つの鍵盤」は、図にあるように「3本並んだ黒鍵の真ん中の鍵盤」、「ラ♭」です。
この鍵盤が最初からずーっと鳴り続けます。
♩ ♩ ♩ ♩ ♩ ♩ ラ♭、ラ♭、ラ♭、ラ♭、ラ♭…
この「雨だれの前奏曲」は変ニ長調(フラット5つ)で、弾く音はほとんど黒鍵ばかり、という調性なので、楽譜を見ただけでうわー、難しそう…と敬遠する人も多いかもしれませんが、弾いてみたら、こんなに甘く柔らかくロマンチックな調性はまたとないほどです。
「雨だれ」の他に変ニ長調の有名曲を挙げると、ショパンのノクターンのうち その美しさで人気ナンバーワンの「8番」、ドビュッシーの「月の光」、リストの「ため息」などがあります。
いずれも夢のように美しい曲ばかりなのがお分かりいただけると思います。「変ニ長調」は、まさに天国へ誘(いざな)われるかのような至上の美しさを持った調性なのです。
さて、ポタ、ポタ、ポタ、ポタ、ラ♭、ラ♭、ラ♭、ラ♭、ラ♭…と続いてきた美しい音楽が中盤に来たとき、バックに流れる曲調は一転、暗く重い世界へと変わります。調性は変ニ長調から 同主調の「嬰ハ短調」となって、今までラ♭だとばかり思っていた♩ ♩ ♩ ♩ ♩ ♩…の音はソ♯と名を変えている!
「変ニ」=レのフラット、「嬰ハ」=ドのシャープってことだから、両者は同じ音なのよね。
同時に「ラのフラット」と「ソのシャープ」は同じ音なのね。

実はこの「嬰ハ短調」こそ、調性の中で最も暗く重く陰惨と言われる 恐怖の調なのです。
嬰ハ短調の代表的な曲を列挙すると、ベートーヴェンのピアノソナタ「悲愴」、「月光」、ラフマニノフの前奏曲「鐘」など。
どうです。暗黒ミュージックオンパレードではありませんか。
「雨だれ」は、この真っ暗な嬰ハ短調へ転調された後 また元の 明るく透明な変ニ長調へ転調し、何もなかったかのように終わっていきます。
同じ一つの曲の中で、至上の天国と 暗黒の世界をスイッチしている「雨だれ」。
光と影が 同じ一つの鍵盤を介して交錯している、巨匠ショパンの「雨だれ」を、梅雨に向かうこの季節、あなたも是非堪能してくださいませ。
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