エンブレルに関する質問主意書回答 11月18日

川内博史議員が提出した「BSE問題に関する質問主意書」に対する政府答弁書が、今日、正式に回答された。取り急ぎ、抗リウマチ薬「エンブレル」に関する部分のみ紹介する。

三の(7)についての答弁

薬事法に基づく生物由来原料基準(平成15年厚生労働省告示第210号)においては、米国産の反すう動物に由来する原材料を医薬品等に用いることは原則として認められていないが、治療上の効果が当該原材料を用いることによるリスクを上回る場合等には、その使用が認められているところである。御指摘の抗リウマチ薬エンブレル(以下「エタネルセプト製剤」という。)については、その製造工程において米国産の子牛の血清が原料として用いられていることから、そのリスク及び治療上の効果について十分な検討を行い、使用者が伝達性海綿状脳症に感染するリスクは極めて低い一方、エタネルセプト製剤は既存の治療では効果が不十分な関節リウマチ患者に用いられるものであることから、その治療上の効果はリスクを上回るものと判断し、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いた上で、平成17年1月19日に薬事法に基づく輸入承認が行われた。このような事例は他にも存在するが、これらについては、輸入承認を受けた事業者に対して、BSEが発生していない国を原産国とする原料への速やかな切替え、切替えがなされるまでの間における使用者に対する情報提供等を指導しているところである。

また、エタネルセプト製剤に係る輸入承認が行われた後、当該輸入承認を受けた事業者から、海外においてエタネルセプト製剤を投与中にCJDを発症した二症例についての報告があり、薬事・食品衛生審議会伝達性海綿状脳症対策調査会において検討を行ったところ、当該二症例がvCJD患者である可能性は非常に低く、国内での販売を見合わせる必要はないとの結論を得た。また、二症例のうち既に死亡している一症例については、脳の組織検査が行われたと承知している。

以上が、エンブレルに関する答弁の全文だ。特筆すべき真新しい記述はなく、これまで通りの厚労省の言い分だ。3月31日のブログに書いたように、本答弁の中でも承認の根拠とされている「薬事・食品衛生審議会」の意見というのが、実は決定的に怪しいのだ。この審議会のメンバーのうち5名は、先日、米国産牛肉の輸入再開にGOサインを出した「食品安全委員会プリン専門調査会」のメンバーなのだ。

「エンブレル」が日本で承認された後、ワイス社は、海外でエンブレルを使用した患者がクロイツフェルト・ヤコブ病を発症し死亡したと、重い口を開いた。この報告を受けて、「薬事・食品衛生審議会安全対策部会伝達性海綿状脳症対策調査会」が開かれるが、ご承知のように「米国産牛肉を食べるか食べないかは、消費者の選択だ」と暴言をはき、「科学的な根拠はないがリスクの差は非常に小さい」という結論を出したプリオン専門調査会のメンバーと一部重なる本調査会が、果たして公平公正な立場で、的確な結論を出したかどうかは甚だ疑問だ。

本調査会は、当のワイス社から提出された資料のみを根拠とし、エンブレルと変異型クロイツフェルト・ヤコブ病との因果関係は極めて低いと、あっさりと結論を出し、間髪いれず3月29日、「エンブレル」はついに日本で発売されることになったのである。答弁書の「リスク及び治療上の効果について十分な検討を行い」とは、いつ誰が行ったものなのか、もう一度ただしたい。発売当初ワイス社は、エンブレルを使用しクロイツフェルト・ヤコブ病を発症した2症例について、1症例は既に死亡しているため調査不可能であり、もう1症例は生存中なので脳の検査が出来ないと答えていた。その後の調査で、生存中の症例については、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病ではないことが証明されたということか。また、とっくに死亡した患者については、脳の解剖が可能な状態にあったというのだろうか。答弁書の「脳の組織検査が行われたと承知している」との一文は、極めて玉虫色の表現だ

また、今回の答弁書からも明らかなように、依然として原料となるウシ血清は、米国産のものが使用されている。BSEが発症していない国に速やかに切り替えるよう厚労省から指導されているにもかかわらず、ワイス社にその姿勢は見えない。ワイス社は、エンブレルの安全性の確立よりも、利益の追求を優先しているのだ。いかに表現を曖昧にして売り上げを伸ばすか、それだけに終始しているように見えるのは私だけだろうか

牛肉の輸入再開で明らかになったように、「選ぶか選ばないかは消費者の判断」なのだ。少なくとも、米国産牛肉については、牛の肉骨粉が鶏の飼料となり、それが鶏糞や鶏舎のゴミを通して再び牛に戻ってくる現実をふまえると、到底安全とは言い難い。それでも、食べたら必ずvCJDを発症するなんて大抵の人は想像もしないから、ついつい安価な米国産牛肉に手が出てしまうのだ。

一方のエンブレルは、医療用注射薬だ。スーパーで牛肉を買うのとはわけが違う。医師は、エンブレルとBSEとの関係を正確に患者に伝え、患者の十分な同意のもと投与されることが望ましい。薬害エイズの二の舞にならぬよう、インフォームドコンセントの充実が必要不可欠だ。

エンブレルに関して初めて出された政府の公式見解は、予想通り、患者寄りというよりもワイス社(武田薬品)を正当化するものだった。この答弁の限りにおいて、エンブレルの安全性が確立されたとは到底見なすことはできない。ワイス社がエンブレルについてネガティブな資料を積極的に公表するわけがない。患者にとって、厚労省が最後の砦なのだ。ワイス社(武田薬品)の利益のために、患者に一か八かの賭けをさせることのないよう、慎重な対応が厚労省には望まれる。

今回、エンブレルの他にも、治療上の効果がリスクを上回るという理由で米国産ウシ血清を原料に使用している医薬品が存在することが明らかになった。それについても積極的な情報開示を求めていく。今回の答弁書を出発点として、更なる追及が必要だ。勿論、川内博史議員も、やる気マンマン。街角の薬剤師として、リウマチ患者のQOL向上を目指し、安心安全な治療薬の提供のために、決意を新たにする!

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )