都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」 DIC川村記念美術館
DIC川村記念美術館
「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」
8/31-12/24

DIC川村記念美術館で開催中の「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」を見て来ました。
1969年に生まれ、近年では主にアメリカで注目を集めるペインター、五木田智央。何でも美術館では初めての個展だそうです。出品は本年の最新作11点を含む90点。アクリルの平面から未発表の素描シリーズまで、五木田の多様な制作を見ることが出来ます。
会場内、撮影が可能でした。
さてはじめの展示室、右から奥へ順に並ぶのが本年に描かれた新作、全11点です。うち10点は僅か一ヶ月足らずで描かれたものです。

右:「私のマネキン人形」 2014年 アクリルグワッシュ、ジェッソ、カンヴァス
左:「新しい義足」 2014年 アクリルグワッシュ、ジェッソ、カンヴァス
正方形のフォーマットに即興的な筆致でモチーフが象られる。どうでしょうか。かつての作品よりもどこか揺らぎがあり、また動的でもある。いわゆる抽象と言えるのかもしれませんが、何らかの情景が浮かび上がってくるかのようです。その何とも言い難い幻影、もしくは立ち上がる現象を捉えたようなモチーフも魅惑的と言えるかもしれません。

「串焼き同窓会」 2014年 アクリルグワッシュ、ジェッソ、カンヴァス
タイトルに驚きました。上の一枚は「串焼き同窓会」です。言われてみれば中央に連なる球体が串焼きのようにも見えます。しかしながらタイトルを伏せればやはり抽象的、何ら具体的なものを表していないようにも映ります。その狭間は意図的なのか曖昧です。ちなみにタイトルは五木田自身がどこかふざけたいと思いながら名付けたそうです。にやりとさせられます。
それにしてもラフなストロークです。作家の中では細かに描き込みたい場合とそうでない時があるそうですが、今はこうしたラフな筆致で描く方が楽しいと感じているとか。言葉が相応しいか分かりませんが、アクロバチックでさえあります。

左:「週末は暗雲低迷」 2014年 アクリルグワッシュ、ジェッソ、カンヴァス
「週末は暗雲低迷」はどうでしょうか。またまた謎めいたタイトル、脚を露にした女性がソファに腰掛けて寛ぐ姿が描かれているようにも見えます。そう言えば全体として女性のモチーフが多いのも特徴です。さも映画のワンシーンのような臨場感。必ずしも明らかではありませんが、画中に何らかの物語が進行しているかのようでもあります。

中央:「ハーフ・ネルソン・コートシッフ」 2012年 アクリルグワッシュ、カンヴァス カウズ氏(ニューヨーク)蔵
奥へ進むと2008~2013年頃の近作が並んでいました。いずれも大作です。大きいものでは縦2メートル50センチを超えるものもある。川村記念の広い展示室にも負けない存在感、いずれも本年にNYのギャラリーで行われた個展で好評を博した作品だそうです。

「スラッシュ・アンド・スラスト」 2008年 アクリル、カンヴァス カウズ氏 (ニューヨーク) 蔵
モノクロームによる人物表現、例えればキュビズムを連想させはしないでしょうか。ただもちろん単純にそれだけでは語れません。まるで内蔵が飛び出したような顔面に幾何学的なギザギザ模様が交錯する。モチーフは謎めき、時に不穏ですらありますが、不思議と形自体は危ういまでのバランス感覚をもって静止、言わば見事なまでにキマっています。
硬軟使いわける五木田の筆致、時に塗り残しを活かしてまで質感を追求しています。水に溶けるように形がゆがみ、蒸気が噴き出すようにして崩れていく。白と黒のアクリルというシンプルな素材ながらも作品は雄弁です。色々な表情を見せてくれます。

「カイロ #1-#20」(一部) 2013年 アクリル、紙
そのほかステンシルの作品や2003年の未発表の素描シリーズ、それに2013年のペーパーワークの「CAIRO」なども出展。これが思いがけないほどに美しい。ニュアンスに富んだ色彩です。アクリル画とは異なった魅力をたたえていました。

「無題」 2008-2014年 グワッシュ、鉛筆、紙 サン・ギョーム蔵
私が五木田智央の作品を初めて見知ったのは、ここ川村、現代美術作家7名を紹介するグループ展、「抽象と形態」(2012年)のことでした。

右:「150 ビューティフル・ガールズ・イン・アクション・トゥナイト」 2000年 エナメル、テントシート 協力:タカ・イシイギャラリー
率直なところその時は強く印象に残るまでに至りませんでしたが、今回はやや違います。特に最新作を中心とする多彩な画風に心惹かれました。

「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」会場風景
お出かけには千葉市美術館と行き来する無料直行送迎バスも便利かもしれません。土日限定、両館を無料で送迎しています。
千葉市美術館「赤瀬川原平の芸術原論 1960年代から現在まで」展との連携(DIC川村記念美術館)
「TOMOO GOKITA THE GREAT CIRCUS」
12月24日まで開催されています。
「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」 DIC川村記念美術館(@kawamura_dic)
会期:8月31日(日)~12月24日(水)
休館:月曜日。但し9/15、10/13、11/3、11/24は開館。9/16、10/14、11/4、11/25は休館。
時間:9:30~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般1200(1000)円、学生・65歳以上1000(800)円、小・中・高生500(400)円。
*( )内は20名以上の団体。
住所:千葉県佐倉市坂戸631
交通:京成線京成佐倉駅、JR線佐倉駅下車。それぞれ南口より無料送迎バスにて30分と20分。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)
「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」
8/31-12/24

DIC川村記念美術館で開催中の「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」を見て来ました。
1969年に生まれ、近年では主にアメリカで注目を集めるペインター、五木田智央。何でも美術館では初めての個展だそうです。出品は本年の最新作11点を含む90点。アクリルの平面から未発表の素描シリーズまで、五木田の多様な制作を見ることが出来ます。
会場内、撮影が可能でした。
さてはじめの展示室、右から奥へ順に並ぶのが本年に描かれた新作、全11点です。うち10点は僅か一ヶ月足らずで描かれたものです。

右:「私のマネキン人形」 2014年 アクリルグワッシュ、ジェッソ、カンヴァス
左:「新しい義足」 2014年 アクリルグワッシュ、ジェッソ、カンヴァス
正方形のフォーマットに即興的な筆致でモチーフが象られる。どうでしょうか。かつての作品よりもどこか揺らぎがあり、また動的でもある。いわゆる抽象と言えるのかもしれませんが、何らかの情景が浮かび上がってくるかのようです。その何とも言い難い幻影、もしくは立ち上がる現象を捉えたようなモチーフも魅惑的と言えるかもしれません。

「串焼き同窓会」 2014年 アクリルグワッシュ、ジェッソ、カンヴァス
タイトルに驚きました。上の一枚は「串焼き同窓会」です。言われてみれば中央に連なる球体が串焼きのようにも見えます。しかしながらタイトルを伏せればやはり抽象的、何ら具体的なものを表していないようにも映ります。その狭間は意図的なのか曖昧です。ちなみにタイトルは五木田自身がどこかふざけたいと思いながら名付けたそうです。にやりとさせられます。
それにしてもラフなストロークです。作家の中では細かに描き込みたい場合とそうでない時があるそうですが、今はこうしたラフな筆致で描く方が楽しいと感じているとか。言葉が相応しいか分かりませんが、アクロバチックでさえあります。

左:「週末は暗雲低迷」 2014年 アクリルグワッシュ、ジェッソ、カンヴァス
「週末は暗雲低迷」はどうでしょうか。またまた謎めいたタイトル、脚を露にした女性がソファに腰掛けて寛ぐ姿が描かれているようにも見えます。そう言えば全体として女性のモチーフが多いのも特徴です。さも映画のワンシーンのような臨場感。必ずしも明らかではありませんが、画中に何らかの物語が進行しているかのようでもあります。

中央:「ハーフ・ネルソン・コートシッフ」 2012年 アクリルグワッシュ、カンヴァス カウズ氏(ニューヨーク)蔵
奥へ進むと2008~2013年頃の近作が並んでいました。いずれも大作です。大きいものでは縦2メートル50センチを超えるものもある。川村記念の広い展示室にも負けない存在感、いずれも本年にNYのギャラリーで行われた個展で好評を博した作品だそうです。

「スラッシュ・アンド・スラスト」 2008年 アクリル、カンヴァス カウズ氏 (ニューヨーク) 蔵
モノクロームによる人物表現、例えればキュビズムを連想させはしないでしょうか。ただもちろん単純にそれだけでは語れません。まるで内蔵が飛び出したような顔面に幾何学的なギザギザ模様が交錯する。モチーフは謎めき、時に不穏ですらありますが、不思議と形自体は危ういまでのバランス感覚をもって静止、言わば見事なまでにキマっています。
硬軟使いわける五木田の筆致、時に塗り残しを活かしてまで質感を追求しています。水に溶けるように形がゆがみ、蒸気が噴き出すようにして崩れていく。白と黒のアクリルというシンプルな素材ながらも作品は雄弁です。色々な表情を見せてくれます。

「カイロ #1-#20」(一部) 2013年 アクリル、紙
そのほかステンシルの作品や2003年の未発表の素描シリーズ、それに2013年のペーパーワークの「CAIRO」なども出展。これが思いがけないほどに美しい。ニュアンスに富んだ色彩です。アクリル画とは異なった魅力をたたえていました。

「無題」 2008-2014年 グワッシュ、鉛筆、紙 サン・ギョーム蔵
私が五木田智央の作品を初めて見知ったのは、ここ川村、現代美術作家7名を紹介するグループ展、「抽象と形態」(2012年)のことでした。

右:「150 ビューティフル・ガールズ・イン・アクション・トゥナイト」 2000年 エナメル、テントシート 協力:タカ・イシイギャラリー
率直なところその時は強く印象に残るまでに至りませんでしたが、今回はやや違います。特に最新作を中心とする多彩な画風に心惹かれました。

「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」会場風景
お出かけには千葉市美術館と行き来する無料直行送迎バスも便利かもしれません。土日限定、両館を無料で送迎しています。
千葉市美術館「赤瀬川原平の芸術原論 1960年代から現在まで」展との連携(DIC川村記念美術館)

12月24日まで開催されています。
「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」 DIC川村記念美術館(@kawamura_dic)
会期:8月31日(日)~12月24日(水)
休館:月曜日。但し9/15、10/13、11/3、11/24は開館。9/16、10/14、11/4、11/25は休館。
時間:9:30~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般1200(1000)円、学生・65歳以上1000(800)円、小・中・高生500(400)円。
*( )内は20名以上の団体。
住所:千葉県佐倉市坂戸631
交通:京成線京成佐倉駅、JR線佐倉駅下車。それぞれ南口より無料送迎バスにて30分と20分。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)
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