「国宝青不動御開帳」(後編・将軍塚) 青蓮院門跡・将軍塚青龍殿

青蓮院門跡・将軍塚青龍殿
「青龍殿落慶記念 国宝青不動御開帳」
10/8-12/23



前編(青蓮院)に続きます。青蓮院門跡・将軍塚青龍殿で行われている「国宝青不動御開帳」を見て来ました。

「国宝青不動御開帳」(前編・青蓮院) 青蓮院門跡・将軍塚青龍殿(はろるど)

将軍塚行きのシャトルバスは青蓮院の入口前から発着しています。そして将軍塚の場所は門跡の裏手の東山山頂です。直線で結べば距離もありませんが、そこは意外と急な東山、一気に登ることは出来ません。ゆえにバスは蹴上方面に一度あがり、三条通を少し下ってから山道へと入る。ぐるっと廻る形でしょうか。バスに揺られること約15分、将軍塚に到着しました。


将軍塚大日堂。シャトルバス降り場の目の前です。

まずは将軍塚大日堂が構えます。一般的に知られた市の駐車場のさらに奥です。そして門をくぐれば青蓮院の境内、新たに完成した青龍殿が建っていました。


大日堂から青龍殿方向

ところで青龍殿をてっきり新築だと勘違いしていた私にとって、建物を見た時に少々驚いてしまいました。というのも古い。何故なら新築ではなく移築だったのです。では何を移築したのでしょうか。答えはかつて京都府警の武道場として使われていた平安道場。それを2012年に解体、護摩堂として東山の山頂に移したというわけなのです。


将軍塚青龍殿(旧平安道場)

ちなみに道場と言えどもここは京都。竣工は古く大正3年です。もちろん木造で総檜造り。大正天皇の御大典の記念に建てられました。面積は160坪。幅は奈良の大仏殿の横半分ほどです。高さが5階建てビルとほぼ同じ15メートル。高い。まるで大きな吹き抜けのように天井が彼方にある。中に入ると思わず上を見上げてしまいます。


青龍殿内部

道場は一時、老朽化のために取り壊されることになったものの、保存運動が勃発。その後、紆余曲折あり、青蓮院が移築を前提に譲渡を受けた。しかしそれからも必ずしもスムーズにはいきません。移築に際して青蓮院が京都府や市の認可を受けるのに通算5年11ヶ月も要したそうです。


青龍殿の天井を見上げる

また移設とはいえ、法的には新築の扱いになり、建物の高さが基準を超えてしまうなど、諸々の制約があったとか。(建築基準法では高さ13メートルを超える木造建築は新築出来ないそうです。ただし耐火など一定の要件を満たせば、その限りではありません。)それを一から解決しては実現にこぎ着けた。当然ながら移築自体はもちろん、補強等の費用も多大です。そのため多くの信徒や支援者による寄進も重要になりました。多大な苦労があったことが伺えます。


「国宝青不動明王と東伏見慈晃門主」*お寺より写真を拝借しました。

移築した平安道場の奥に内陣と青不動を安置する奥殿があります。こちらは新築です。奥殿に入ると目の前には堂々たる国宝の「青不動」、正式には「不動明王二童子像」が控えていました。ここは近くに寄れませんが、修復の結果なのか、遠目でも平安時代の作とは思えないほど鮮やかに見える。そして何と言っても力強い。火焔を背にしての不動明王のお姿。まさに畏怖の念を感じさせます。

その「青不動」を前にして行われた慈晃門主による護摩祈祷に参加しました。


国宝「不動明王二童子像(青不動明王)」 平安時代 青蓮院門跡

何よりも信仰の対象である「青不動」、実際に長らく秘仏でした。もちろんあわせて貴重な文化財、国宝でもある。それに向かって門主が護摩木で炎を焼べるわけです。防火に際しては間違いないように作られていることでしょう。ただそれでも端的に凄みがある。めらめらと揺らめく実際の炎と「青不動」に描かれた炎が重なりあいます。この体験、ほかではなかなか出来ません。正直なところかなり感動的でした。


青龍殿大舞台

護摩を受けた後は青龍殿の裏へ廻りました。見晴らしのよいスペースが広がります。大舞台です。何と面積は清水寺の舞台の5倍、1046平方メートルです。収容人数は2000名。ここから京都市内を一望出来ます。


大舞台より京都市内

北に目を向ければ「妙」に「法」、そして「船形」と「左大文字」も見える。右手には比叡山、眼下には鴨川が流れています。下鴨神社や御所の杜も望めました。


将軍塚枯山水庭園

大日堂の北側には枯山水庭園が広がっていました。新設です。もちろんこの時期は紅葉が美しいもの。一際目立つ大きなモミジは造園に際して移されたものです。周囲の地面を掘っては根を痛まないように養生し、クレーンで吊り上げ、現在の位置に移植しました。


枯山水庭園内の大紅葉

実のところこれまで将軍塚は夜景スポットという程度しか認識していませんでしたが、今回、訪ねて考えを改めました。ここまで変化したことはおそらく京都の方にもあまり知られていないのではないでしょうか。大護摩堂の青龍殿に「青不動」、そして庭園に大舞台。まさかこれほど見るべき場所だとは思いませんでした。


将軍塚庭園にて

「青不動」の前での護摩祈祷は御開帳中(~12/23)、連日行われるそうです。是非とも参加されることをおすすめします。(参加は基本的に無料です。拝観料に含まれます。)

シャトルバスは主に土日を中心に混み合うことがあるそうです。(実際、私が出向いた日は行きも帰りもほぼ満員でした。)なおバスの混雑情報については特設サイトに案内があります。参考になりそうです。

「国宝青不動明王御開帳」拝観のご案内とアクセス(青蓮院門跡)

秋の京都、紅葉のベストシーンです。各地に見どころも多いかもしれませんが、この御開帳もやはり外せないもの。そもそも創建以来、青蓮院で「青不動」が初めて公開されたのはただの一度、平成21年のことに過ぎません。(それまで寺外でも3度しか公開されなかったそうです。)そして今回が修復後の初公開。ようは僅か2回しかないわけです。



また時間の関係で見ることは叶いませんでしたが、御開帳中は連日、門跡と将軍塚の双方でライトアップ(夜間特別拝観)も行われています。先にも触れたように将軍塚は京都一の夜景スポットでもあります。こちらにあわせて出かけても良さそうです。


展望台より将軍塚青龍殿全景

青蓮院青龍殿落慶記念、「国宝青不動御開帳」は12月23日まで行われています。

「青龍殿落慶記念 国宝青不動御開帳」 青蓮院門跡・将軍塚青龍殿
会期:10月8日(水)~12月23日(火・祝)
休館:会期中無休。
時間:9:00~21:30 *受付終了は21時まで。
料金:一般1300円、ライトアップ1500円。
 *ライトアップは青龍殿が17時、青蓮院が18時より開始。
 *上記は青蓮院・青龍殿共通拝観券。(青龍殿、将軍塚の個別拝観券あり。)
 *シャトルバスは片道100円。(8:00~20:30まで30分間隔にて運行。共通拝観券を提示すると無料。)
住所:青蓮院門跡(京都市東山区粟田口三条坊町69-1)、将軍塚青龍殿(京都市山科区厨子奥花鳥町28
交通:青蓮院門跡(地下鉄東西線東山駅下車徒歩5分、京都市営バス5・46・100系統神宮道下車徒歩3分。)、将軍塚青龍殿(青蓮院よりシャトルバスで15分。地下鉄東西線蹴上駅よりタクシー5分。)
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