都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「琳派から日本画へ」 山種美術館
山種美術館(千代田区三番町2 三番町KSビル1階)
「琳派から日本画へ - 宗達・抱一・御舟・観山 - 」
11/8-12/25
ちらし表題作二点のそろい踏みは、かの東博対決展を思い起こさせるほどに大胆でかつ熱気に溢れています。山種美術館で開催中の「琳派から日本画へ」へ行ってきました。
宗達、抱一、其一から、春草、平八郎、御舟、土牛と言った近代日本画家らまで追う意欲的な展覧会です。冒頭、黄金の装飾紋様の前で裸婦の横たわる又造の「裸婦習作」の展示には驚かされましたが、それに続いてもすすきがリズミカルに靡く平八郎の「彩秋」、または二頭の牛が重なり合うように並ぶ土牛の「犢」など、この系譜に並ばなければ琳派云々とは受け取れないような作品がいくつも並んでいます。もちろん又造では光琳の金屏風を思わせるきらびやかな装飾性、そして平八郎で抱一のすすきを連想させるシンプルな造形美、さらに土牛では宗達を思うたらし込みなど、琳派の謂れと結びつけてもおかしくはない部分かもしれませんが、率直なところ、かつての近美のRIMPAで受けたようなどことない戸惑いを覚えるのも事実でした。とは言え、ざっくばらんな山種らしい展示構成が、逆に語り尽くされた感もある「琳派とは何か。」を改めて考えさせる切っ掛けにもなっています。限定された絵師による、誰もが異論のない琳派を提示した東博琳派展とは相当に対照的でした。
メイン『対決』、宗達「槙楓図」に対する御舟の「名樹散椿」は、たとえ御舟が宗達を意識したものではなかったとしても、不思議とその系譜をイメージしてしまう見事な作品です。画面右で大きく曲がりながら上へと伸びる幹の力感はもとより、空間を埋め尽くさんとばかりに広がる濃密な枝葉などは、思わず二点が時を超えて互いに呼応しているかのような関係すら期待してしまいます。時間と空間を閉じ込め、快活な槙と雅やかな楓を屏風へ形として切り出した宗達に対し、御舟は落ちる椿と木のシュールな造形によって、有限でかつ実景を通り越した幻想の空間を絵に取り込むことに成功しました。この二点を見るだけでも十分に価値のある展示だとも言えそうです。
春草の「月四題」が久々に出ていました。モノトーンに沈む桜の花びらがひらひらと舞い降りる様は、抱一の叙情性に近い部分が十分に感じられます。未見の作品は多くありませんが、抱一、御舟、春草と、偏愛の絵師たちが並ぶだけでも満足出来ました。
今月25日までの開催です。
*現在開催中の国内琳派展
・細見美術館「花の協奏曲」(~2008/2/8):琳派の草花図に焦点を当てる。伊年の草花図、芳中や後期琳派の花鳥図など。
・MOA美術館「所蔵琳派展」(~12/24):主に琳派の装飾美、工芸を見る。宗達「群鶏図」、乾山「色絵十二ヶ月歌絵皿」、抱一「雪月花図」など。光琳の「紅白梅図屏風」は出ません。(早速、今日行ってきました。感想は後日に。)
「琳派から日本画へ - 宗達・抱一・御舟・観山 - 」
11/8-12/25
ちらし表題作二点のそろい踏みは、かの東博対決展を思い起こさせるほどに大胆でかつ熱気に溢れています。山種美術館で開催中の「琳派から日本画へ」へ行ってきました。
宗達、抱一、其一から、春草、平八郎、御舟、土牛と言った近代日本画家らまで追う意欲的な展覧会です。冒頭、黄金の装飾紋様の前で裸婦の横たわる又造の「裸婦習作」の展示には驚かされましたが、それに続いてもすすきがリズミカルに靡く平八郎の「彩秋」、または二頭の牛が重なり合うように並ぶ土牛の「犢」など、この系譜に並ばなければ琳派云々とは受け取れないような作品がいくつも並んでいます。もちろん又造では光琳の金屏風を思わせるきらびやかな装飾性、そして平八郎で抱一のすすきを連想させるシンプルな造形美、さらに土牛では宗達を思うたらし込みなど、琳派の謂れと結びつけてもおかしくはない部分かもしれませんが、率直なところ、かつての近美のRIMPAで受けたようなどことない戸惑いを覚えるのも事実でした。とは言え、ざっくばらんな山種らしい展示構成が、逆に語り尽くされた感もある「琳派とは何か。」を改めて考えさせる切っ掛けにもなっています。限定された絵師による、誰もが異論のない琳派を提示した東博琳派展とは相当に対照的でした。
メイン『対決』、宗達「槙楓図」に対する御舟の「名樹散椿」は、たとえ御舟が宗達を意識したものではなかったとしても、不思議とその系譜をイメージしてしまう見事な作品です。画面右で大きく曲がりながら上へと伸びる幹の力感はもとより、空間を埋め尽くさんとばかりに広がる濃密な枝葉などは、思わず二点が時を超えて互いに呼応しているかのような関係すら期待してしまいます。時間と空間を閉じ込め、快活な槙と雅やかな楓を屏風へ形として切り出した宗達に対し、御舟は落ちる椿と木のシュールな造形によって、有限でかつ実景を通り越した幻想の空間を絵に取り込むことに成功しました。この二点を見るだけでも十分に価値のある展示だとも言えそうです。
春草の「月四題」が久々に出ていました。モノトーンに沈む桜の花びらがひらひらと舞い降りる様は、抱一の叙情性に近い部分が十分に感じられます。未見の作品は多くありませんが、抱一、御舟、春草と、偏愛の絵師たちが並ぶだけでも満足出来ました。
今月25日までの開催です。
*現在開催中の国内琳派展
・細見美術館「花の協奏曲」(~2008/2/8):琳派の草花図に焦点を当てる。伊年の草花図、芳中や後期琳派の花鳥図など。
・MOA美術館「所蔵琳派展」(~12/24):主に琳派の装飾美、工芸を見る。宗達「群鶏図」、乾山「色絵十二ヶ月歌絵皿」、抱一「雪月花図」など。光琳の「紅白梅図屏風」は出ません。(早速、今日行ってきました。感想は後日に。)
コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )
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私も行って参りました!
意外ですが…とても、落ち着いてゆっくり観られましたね
はろるどさんの言う通り、宗達「槙楓図」に対する御舟の「名樹散椿」は、見応え充分で、確かに゛対決"していましたね私は、御舟の椿に惹かれました…しかし宗達の槙に楓、桔梗も味わい深い作品でなんとも…振り返って何度も見てしまいました。
私も細見美術館へ行きたいと思っていました
もう一度、抱一の『白蓮図』が観たくて
あらためてこの展覧会の良さを想いおこしました。
宗達の《槙楓図》と御舟の《名樹散椿》が並べて
あって、ほんとうに二つが呼応しているようで、
不思議な空間、ためつすがめつ、近く遠く、
ゆっくり、お互いを引き立てあってすばらしい
ながめでした。
こんにちは。
>落ち着いてゆっくり観られました
山種はあの雰囲気がまたのんびりしていて良いですよね。
宗達VS御舟は対決展に出ていても相当話題になったのではないかなと思います。本当に見応えありました。
>細見美術館へ行きたい
同感です!会期が長いので何とか…。
@すぴかさん
こんにちは。
>ほんとうに二つが呼応しているようで、不思議な空間、ためつすがめつ、近く遠く、ゆっくり、お互いを引き立てあってすばらしい
素敵なご感想をありがとうございます!
本当に仰る通りですね。
私も前を行き来しつつ、斜めに見たり腰掛けて見たりと、
存分に楽しむことが出来ました。
山種の御舟展、今からとても楽しみです。
御舟は最近気になる画家の1人でもあります。
宗達との対決のようでしたが、私には寧ろ日本人の“間”の取り方などの美を双方から感じ、時空を超え日本人独特の間合いの近似点を楽しめそうで生で拝見したかったです。
年が明けたら、ゆっくりと近代日本画巡りをしようと思います。
構図がそっくりなのが、一目瞭然ですね。
美術館では、ここまで気づきませんでした。
こんばんは。
>日本人の“間”の取り方などの美
なるほど互いに間の取り方では特徴的な部分がありますよね。
その近似点、仰るように確かに見て取れるかと思います。
>ゆっくりと近代日本画巡り
そろそろこちらへ戻られるのでしょうか。
またオフ会なども宜しくお願いします。
@一村雨さん
こんばんは。
>上下並べて見ると
図版では形の類似点が一目瞭然ですよね。
琳派と御舟の関係は良く語られますが、
実際に彼がどれほど宗達を意識していたのかも気になるところです。
宗達と御舟、300年の隔たりのある2点を隣同士で眺められ、本当に贅沢な時間でした。
御舟の椿は、撒きつぶしの金が幻想を誘うように思いました。
はろるどさんの素晴らしいブログ、アート初心者には勉強になることばかりです。
これからもよろしくお願いいたします。
こちらこそコメントをありがとうございます。
>御舟の椿は、撒きつぶしの金が幻想を誘うように思いました。
そうでしたね。
金屏風の金とはまた違った趣が感じられました。あの二点、是非また別の場でも拝見したいなと思います。
私には勿体ないお言葉を恐縮です。
今後とも宜しくお願いします。