都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」 東京国立博物館・本館 特別5室
東京国立博物館・本館 特別5室
「国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」
2021/6/22~9/12

東京国立博物館・本館 特別5室で開催中の「国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」の報道内覧会に参加してきました。
奈良県桜井市の聖林寺に安置された国宝「十一面観音菩薩立像」は、天平様式の仏像の傑作として知られ、多くの人々の信仰を集めてきました。

『十一面観音菩薩立像』 奈良時代・8世紀 奈良・聖林寺 国宝
その「十一面観音菩薩立像」が史上初めて奈良県外で公開されたのが「国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」で、同像と関連の仏像、ないしは大神神社の自然信仰を示す三輪山禁足地の出土品などが展示されていました。

奈良時代後期の作とされ、像高2メートルを超える「十一面観音菩薩立像」は、長らく三輪山をご神体とする大神神社の神宮寺である大神寺に安置されていて、鎌倉時代後期には大御輪寺と寺号を変更し、本尊として祀られていていました。しかし明治時代の廃仏毀釈のあおりを受け、大御輪寺は廃寺となったため、同像は僧侶の手により聖林寺へと移されました。

今回の展示では「十一面観音菩薩立像」を独立したガラスのケースに納めていて、360度の角度からぐるりと一周して鑑賞することができました。

反りの強い蓮弁が連なる蓮華座の上に立つ仏像は堂々たる姿を見せていて、切れ長の目尻や引き締まった口元などの顔立ちは険しく、まさに威厳に満ちていました。また横から見るとかなり胸板が厚く、それでいて腰のあたりにかけては絞られていることも分かるのではないでしょうか。
左手で水瓶を持つ一方、右手はすらりと降ろしていて、手首をわずかに曲げては、指先をしなやかに内外へと屈していました。こうした繊細ともいえる造形美も「十一面観音菩薩立像」の魅力といえるかもしれません。
頭の上には当初11面あったうちの8面の小さな仏像がのっていて、穏やかであったり、怒っていたりと異なった表情を見せていました。なお同像は奈良時代後期から平安時代前期にかけて用いられた、木心の上に漆と木粉の練り物で形をつくる木心乾漆造りと呼ばれる技法で造られました。

左から『月光菩薩立像』と『日光菩薩立像』。ともに平安時代・10~11世紀、奈良・正暦寺
「十一面観音菩薩立像」とともに並ぶのが、同じくかつて大神寺にあり、後に正暦寺や法隆寺などへ移された「月光菩薩立像」と「日光菩薩立像」、それに「地蔵菩薩立像」でした。そのうち法隆寺の「地蔵菩薩立像」は江戸時代まで「十一面観音菩薩立像」とともに祀られたと伝えられていて、太づくりの体躯と穏やかな表情を特徴としていました。なおこれらの諸像が一堂に会したのは、実に150年ぶりのことでもあります。

「十一面観音菩薩立像 光背残欠」 奈良時代・8世紀 奈良・聖林寺 国宝
中軸部分を残して多くを失ったものの、生命力に満ちた植物文が広がる「十一面観音菩薩立像」の光背残欠も見どころかもしれません。

奈良県桜井市 三輪山禁足地出土品 古墳時代・5〜6世紀 奈良・大神神社
さらに仏教伝来以前、三輪山への自然信仰を示す出土品もあわせて紹介されていました。大神神社の祭神である大物主大神が酒造りと関係が深いことから、酒造りに因む器物を象った製品が多く出土しているそうです。

左:『朱塗金銅装盾』 鎌倉時代・嘉元3(1305)年 奈良・大神神社 重要文化財 右:『三輪山絵図』 室町時代・16世紀 奈良・大神神社
混雑緩和のためWEBでの事前予約制が導入されました。入場に際しては日時指定券の予約が必要です。予約不要の当日券も若干枚用意されていますが、日時指定券は観覧料が割引で設定されています。予約がお得です。チケットの購入方法などについては公式サイトをご参照ください。
私自身、奈良は何度か旅したことがありますが、三輪山や大神神社、それに聖林寺の位置する桜井へは行ったことがありません。是非とも一度訪ね歩きたいと思いました。
9月12日まで開催されています。
「国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」(@shorinji2020) 東京国立博物館・本館 特別5室(@TNM_PR)
会期:2021年6月22日(火)~9月12日(日)
時間:9:30~17:00。
*当面の間、金・土曜日の夜間開館を中止。
休館:月曜日。但し8月9日(振休)は開館。
料金:一般1500(1400)円、大学生800(700)円、高校生500(400)円、中学生以下無料。
* ( )内は前売日時指定券の料金
*当日に限り総合文化展も観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
注)写真は特別内覧会時に主催者の許可を得て撮影しました。
「国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」
2021/6/22~9/12

東京国立博物館・本館 特別5室で開催中の「国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」の報道内覧会に参加してきました。
奈良県桜井市の聖林寺に安置された国宝「十一面観音菩薩立像」は、天平様式の仏像の傑作として知られ、多くの人々の信仰を集めてきました。

『十一面観音菩薩立像』 奈良時代・8世紀 奈良・聖林寺 国宝
その「十一面観音菩薩立像」が史上初めて奈良県外で公開されたのが「国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」で、同像と関連の仏像、ないしは大神神社の自然信仰を示す三輪山禁足地の出土品などが展示されていました。

奈良時代後期の作とされ、像高2メートルを超える「十一面観音菩薩立像」は、長らく三輪山をご神体とする大神神社の神宮寺である大神寺に安置されていて、鎌倉時代後期には大御輪寺と寺号を変更し、本尊として祀られていていました。しかし明治時代の廃仏毀釈のあおりを受け、大御輪寺は廃寺となったため、同像は僧侶の手により聖林寺へと移されました。

今回の展示では「十一面観音菩薩立像」を独立したガラスのケースに納めていて、360度の角度からぐるりと一周して鑑賞することができました。

反りの強い蓮弁が連なる蓮華座の上に立つ仏像は堂々たる姿を見せていて、切れ長の目尻や引き締まった口元などの顔立ちは険しく、まさに威厳に満ちていました。また横から見るとかなり胸板が厚く、それでいて腰のあたりにかけては絞られていることも分かるのではないでしょうか。
左手で水瓶を持つ一方、右手はすらりと降ろしていて、手首をわずかに曲げては、指先をしなやかに内外へと屈していました。こうした繊細ともいえる造形美も「十一面観音菩薩立像」の魅力といえるかもしれません。
頭の上には当初11面あったうちの8面の小さな仏像がのっていて、穏やかであったり、怒っていたりと異なった表情を見せていました。なお同像は奈良時代後期から平安時代前期にかけて用いられた、木心の上に漆と木粉の練り物で形をつくる木心乾漆造りと呼ばれる技法で造られました。

左から『月光菩薩立像』と『日光菩薩立像』。ともに平安時代・10~11世紀、奈良・正暦寺
「十一面観音菩薩立像」とともに並ぶのが、同じくかつて大神寺にあり、後に正暦寺や法隆寺などへ移された「月光菩薩立像」と「日光菩薩立像」、それに「地蔵菩薩立像」でした。そのうち法隆寺の「地蔵菩薩立像」は江戸時代まで「十一面観音菩薩立像」とともに祀られたと伝えられていて、太づくりの体躯と穏やかな表情を特徴としていました。なおこれらの諸像が一堂に会したのは、実に150年ぶりのことでもあります。

「十一面観音菩薩立像 光背残欠」 奈良時代・8世紀 奈良・聖林寺 国宝
中軸部分を残して多くを失ったものの、生命力に満ちた植物文が広がる「十一面観音菩薩立像」の光背残欠も見どころかもしれません。

奈良県桜井市 三輪山禁足地出土品 古墳時代・5〜6世紀 奈良・大神神社
さらに仏教伝来以前、三輪山への自然信仰を示す出土品もあわせて紹介されていました。大神神社の祭神である大物主大神が酒造りと関係が深いことから、酒造りに因む器物を象った製品が多く出土しているそうです。

左:『朱塗金銅装盾』 鎌倉時代・嘉元3(1305)年 奈良・大神神社 重要文化財 右:『三輪山絵図』 室町時代・16世紀 奈良・大神神社
混雑緩和のためWEBでの事前予約制が導入されました。入場に際しては日時指定券の予約が必要です。予約不要の当日券も若干枚用意されていますが、日時指定券は観覧料が割引で設定されています。予約がお得です。チケットの購入方法などについては公式サイトをご参照ください。
私自身、奈良は何度か旅したことがありますが、三輪山や大神神社、それに聖林寺の位置する桜井へは行ったことがありません。是非とも一度訪ね歩きたいと思いました。
【お知らせ】7月12日(月)より東京都に緊急事態宣言が発令されます。東京国立博物館は日本博物館協会による「博物館における新型コロナウィルス感染予防対策ガイドライン」に従い、感染対策を徹底したうえで、引き続き事前予約制により開館を継続します。#聖林寺展https://t.co/6DHeia5rsV
— 【聖林寺展公式】太田種子 (@shorinji2020) July 9, 2021
9月12日まで開催されています。
「国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」(@shorinji2020) 東京国立博物館・本館 特別5室(@TNM_PR)
会期:2021年6月22日(火)~9月12日(日)
時間:9:30~17:00。
*当面の間、金・土曜日の夜間開館を中止。
休館:月曜日。但し8月9日(振休)は開館。
料金:一般1500(1400)円、大学生800(700)円、高校生500(400)円、中学生以下無料。
* ( )内は前売日時指定券の料金
*当日に限り総合文化展も観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
注)写真は特別内覧会時に主催者の許可を得て撮影しました。
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