都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」 東京国立近代美術館
東京国立近代美術館
「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」
2021/6/18~9/26

東京国立近代美術館で開催中の「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」を見てきました。
1954年に生まれた隈研吾は、木材や石などの自然の素材を用いた建築で知られ、日本を代表する建築家として活動してきました。

「東京大学大学院 情報学環 ダイワユビキタス学術研究館」 2014年
その隈の公共的な建築に着目したのが「新しい公共性をつくるためのネコの5原則」と題した展覧会で、建築の模型や写真をはじめ、映像やVR、さらにはネコの視点で都市生活を見直すというリサーチプロジェクトなどが紹介されていました。

「国立競技場」 2019年
まず今回の展覧会で興味深いのは、会場を有料と無料の2つのスペースに分けて構成していることでした。有料の第1会場では隈自身が選定したという公共的な建築物68件の模型や写真を、「孔」、「粒子」、「斜め」、「やわらかい」、「時間」の5の観点(原則)から紹介していました。
また高知県梼原町にある6つの建築を瀧本幹也が4K映像にまとめたインスタレーションや、アオーレ長岡の日常をドキュメンタリータッチで撮影した藤井光の映像、はたまたスコットランドの博物館「V&Aダンディー」のタイムプラス映像なども公開されていて、ダイナミックな視覚体験を伴って隈建築を鑑賞することができました。

「高輪ゲートウェイ駅」 2020年
第1会場では一部スペースの模型も撮影することも可能でした。(但しパネルは不可)なお会場デザインは隈研吾建築都市設計事務所が行い、作品解説は隈研吾自身が執筆を担いました。

「北京 前門」 2016年
各章毎に展示の設えが変化していくのも面白いポイントかもしれません。例えば「斜め」では展示壁そのものが斜めに切り込むように設置されていて、「時間」のエリアでは小さく古びたような石を積み上げては自然の遺跡のような空間を築き上げていました。

「ホテルロイヤルクラシック大阪」 2020年
東京国立近代美術館は天井高に制約があり、必ずしも開放感のあるスペースとはいえませんが、それでも構成に変化をつけつつ映像を挟むことで、メリハリのある内容となっていたかもしれません。
インタビュー映像やネコのリサーチからなる第2会場(無料)の展示も重要だったのではないでしょうか。ここではまず「復興と建築をめぐるインタビュー」として、南三陸町長の佐藤仁氏や浜田醤油研究開発責任者の浜田浩成氏といった発注者や利用者にインタビューした映像を流していました。
ここでは隈との最初の出会いでの印象や仕事の段取りやすすめ方などについても語られていて、いわば建築を使う側の個人的でかつ肌感覚とも呼べるような声を聞くことができました。
第2会場のラストで公開されたが「東京計画2020 ネコちゃん建築の5656原則」とするプロジェクトでした。これはデザイン・イノベーション・ファームであるTakramと協働し、隈の住む神楽坂の猫の生態をBPSを用いてリサーチしたもので、東京湾に海上都市を築く丹下健三の「東京計画1960」への応答として発表されました。隈はいわゆるコロナ禍の現在において、「人は一箇所に定まらずテンテンと暮らし、スキマに入り込んで自らノラミチをつくっていくネコの生態」(解説より)に学ぶべきとしていて、建築を上からの視点ではなく、また人でもなく、より地面に近いネコの視点から見ることこそ、ヒューマンな建築が生まれると訴えました。

「スターバックスコーヒー 太宰府天満宮表参道店」 2011年
こうした視点は第1会場の「孔」、「粒子」、「斜め」、「やわらかい」、「時間」の5原則とも呼応していて、例えば「孔」はネコの通り道であり、「やわらかい」はネコの好きなものであるとしています。また「斜め」もネコは苦にすることなく移動するといいます。

「オドゥンパザル近代美術館(OMM)」 2019年
それこそネコの視点を追体験すべく、建築模型の中に潜むネコを辿りながら見るのも楽しいかもしれません。写真ではほとんど分かりませんが、模型の随所にネコがいました。

「国立競技場」のためのランプシェード 2019年
神楽坂の路地を自由に行き来し、建物の隙間を生きるネコの生態から着想を得つつ、今後の建築のあり方を提案する意欲的な建築展ではないでしょうか。この他、オリンピックの開幕を控えた「国立競技場」の家具や建物の一部、またペデストリアンデッキなどの模型も見応えがありました。

「浮庵(フアン)」 2007年
混雑緩和のためにオンラインでの事前日時予約制が導入されました。会場受付でも当日券が販売されていますが、混雑時は入場規制が行われ、当日券の販売が終了する場合があります。

「住箱」 2016年
平日の夕方前に出かけてきましたが、会期の早い段階としては思いがけないほど賑わっていました。今後、土日や後半にかけて混み合う可能性があります。事前に予約してから出かけることをおすすめします。
9月26日まで開催されています。
「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」 東京国立近代美術館(@MOMAT60th)
会期:2021年6月18日(金)~9月26日(日)
時間:10:00~17:00。
*金曜・土曜は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し7月26日、8月2日、9日、30日、9月20日は開館。8月10日(火)、9月21日(火)は休館。
料金:一般1300(1100)円、大学生800(500)円、高校生以下無料。
*当日に限り所蔵作品展「MOMATコレクション」も観覧可。
住所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」
2021/6/18~9/26

東京国立近代美術館で開催中の「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」を見てきました。
1954年に生まれた隈研吾は、木材や石などの自然の素材を用いた建築で知られ、日本を代表する建築家として活動してきました。

「東京大学大学院 情報学環 ダイワユビキタス学術研究館」 2014年
その隈の公共的な建築に着目したのが「新しい公共性をつくるためのネコの5原則」と題した展覧会で、建築の模型や写真をはじめ、映像やVR、さらにはネコの視点で都市生活を見直すというリサーチプロジェクトなどが紹介されていました。

「国立競技場」 2019年
まず今回の展覧会で興味深いのは、会場を有料と無料の2つのスペースに分けて構成していることでした。有料の第1会場では隈自身が選定したという公共的な建築物68件の模型や写真を、「孔」、「粒子」、「斜め」、「やわらかい」、「時間」の5の観点(原則)から紹介していました。
また高知県梼原町にある6つの建築を瀧本幹也が4K映像にまとめたインスタレーションや、アオーレ長岡の日常をドキュメンタリータッチで撮影した藤井光の映像、はたまたスコットランドの博物館「V&Aダンディー」のタイムプラス映像なども公開されていて、ダイナミックな視覚体験を伴って隈建築を鑑賞することができました。

「高輪ゲートウェイ駅」 2020年
第1会場では一部スペースの模型も撮影することも可能でした。(但しパネルは不可)なお会場デザインは隈研吾建築都市設計事務所が行い、作品解説は隈研吾自身が執筆を担いました。

「北京 前門」 2016年
各章毎に展示の設えが変化していくのも面白いポイントかもしれません。例えば「斜め」では展示壁そのものが斜めに切り込むように設置されていて、「時間」のエリアでは小さく古びたような石を積み上げては自然の遺跡のような空間を築き上げていました。

「ホテルロイヤルクラシック大阪」 2020年
東京国立近代美術館は天井高に制約があり、必ずしも開放感のあるスペースとはいえませんが、それでも構成に変化をつけつつ映像を挟むことで、メリハリのある内容となっていたかもしれません。
インタビュー映像やネコのリサーチからなる第2会場(無料)の展示も重要だったのではないでしょうか。ここではまず「復興と建築をめぐるインタビュー」として、南三陸町長の佐藤仁氏や浜田醤油研究開発責任者の浜田浩成氏といった発注者や利用者にインタビューした映像を流していました。
ここでは隈との最初の出会いでの印象や仕事の段取りやすすめ方などについても語られていて、いわば建築を使う側の個人的でかつ肌感覚とも呼べるような声を聞くことができました。
隈研吾展(-9/26)開催中!都市を見直すリサーチプロジェクト《東京計画2020 ネコちゃん建築の5656原則》は、デザイン・イノベーション・ファームであるTakramとの協働により、3DCGやプロジェクションマッピングで展示しています。ネコの視点から街を感じてみてください。https://t.co/0PYLBzHLDN pic.twitter.com/8kXJs8Hq4c
— 【公式】東京国立近代美術館 広報 (@MOMAT60th) July 1, 2021
第2会場のラストで公開されたが「東京計画2020 ネコちゃん建築の5656原則」とするプロジェクトでした。これはデザイン・イノベーション・ファームであるTakramと協働し、隈の住む神楽坂の猫の生態をBPSを用いてリサーチしたもので、東京湾に海上都市を築く丹下健三の「東京計画1960」への応答として発表されました。隈はいわゆるコロナ禍の現在において、「人は一箇所に定まらずテンテンと暮らし、スキマに入り込んで自らノラミチをつくっていくネコの生態」(解説より)に学ぶべきとしていて、建築を上からの視点ではなく、また人でもなく、より地面に近いネコの視点から見ることこそ、ヒューマンな建築が生まれると訴えました。

「スターバックスコーヒー 太宰府天満宮表参道店」 2011年
こうした視点は第1会場の「孔」、「粒子」、「斜め」、「やわらかい」、「時間」の5原則とも呼応していて、例えば「孔」はネコの通り道であり、「やわらかい」はネコの好きなものであるとしています。また「斜め」もネコは苦にすることなく移動するといいます。

「オドゥンパザル近代美術館(OMM)」 2019年
それこそネコの視点を追体験すべく、建築模型の中に潜むネコを辿りながら見るのも楽しいかもしれません。写真ではほとんど分かりませんが、模型の随所にネコがいました。

「国立競技場」のためのランプシェード 2019年
神楽坂の路地を自由に行き来し、建物の隙間を生きるネコの生態から着想を得つつ、今後の建築のあり方を提案する意欲的な建築展ではないでしょうか。この他、オリンピックの開幕を控えた「国立競技場」の家具や建物の一部、またペデストリアンデッキなどの模型も見応えがありました。

「浮庵(フアン)」 2007年
混雑緩和のためにオンラインでの事前日時予約制が導入されました。会場受付でも当日券が販売されていますが、混雑時は入場規制が行われ、当日券の販売が終了する場合があります。

「住箱」 2016年
平日の夕方前に出かけてきましたが、会期の早い段階としては思いがけないほど賑わっていました。今後、土日や後半にかけて混み合う可能性があります。事前に予約してから出かけることをおすすめします。
9月26日まで開催されています。
「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」 東京国立近代美術館(@MOMAT60th)
会期:2021年6月18日(金)~9月26日(日)
時間:10:00~17:00。
*金曜・土曜は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し7月26日、8月2日、9日、30日、9月20日は開館。8月10日(火)、9月21日(火)は休館。
料金:一般1300(1100)円、大学生800(500)円、高校生以下無料。
*当日に限り所蔵作品展「MOMATコレクション」も観覧可。
住所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
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