「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」 東京都現代美術館

東京都現代美術館
「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」
2020/6/9〜9/27



東京都現代美術館で開催中の「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」を見てきました。

1967年にコペンハーゲンで生まれたオラファー・エリアソンは、光や水、霧などの自然現象を知覚的に再現するインスタレーションで知られ、世界各地で展覧会を開くだけでなく、環境やエネルギーを巡る社会的問題に取り組むプロジェクトを行ってきました。

そのエリアソンの新旧作から成るのが「ときに川は橋となる」と題した展覧会で、写真のシリーズや大型のインタレーション、それに体験型の作品、約20点弱を展示していました。


「あなたの移ろう氷河の形態学(過去)」、「メタンの問題」、「あなたの移ろう氷河の形態学(未来)」 2019年

まず入口の正面に目を引いたのが、「あなたの移ろう氷河の形態学(過去)」、「メタンの問題」、「あなたの移ろう氷河の形態学(未来)」の3枚の絵画で、薄い水色やピンクの色彩が滲むようにして広がっていました。いずれの作品もグリーンランドの氷河の水を用いて描かれていて、紙の上で溶ける氷の水と絵具が混じり合っては模様を築いていました。融解といった自然現象を内在化した作品と呼べるかもしれません。


「太陽の中心への探査」 2017年

一転して展示室に鮮やかな光を放っていたのが、ガラスの多面体から構成された「太陽の中心への探査」でした。宙に浮く星のようなオブジェからは、四方八方へと光線が散っていて、床や壁へと映り込み、さながら氷の結晶のような形を見せていました。


「太陽の中心への探査」 2017年

まさに太陽のような天体を想起させつつも、多面体が生み出す光景は幾何学的でもあり、人工的な要素も垣間見られました。それこそ宇宙を探査する人工衛星をイメージさせる面もあったかもしれません。


「あなたに今起きていること、 起きたこと、これから起きること」 2020年

ライトのみを用いてインタラクティブな仕掛けを築いた、「あなたに今起きていること、 起きたこと、これから起きること」も楽しい作品ではないでしょうか。展示室の一方の床面に設置されたライトより、もう一方の壁へと光が映し出されていて、前を横切ると重なり合う複数の影が姿を現しました。


「あなたに今起きていること、 起きたこと、これから起きること」 2020年

その影は来場者が入れ替わり、様々なポーズをとる毎に変化していって、一定な光景は見られませんでした。また展示室の左右だけでなく、壁際に寄ったり、ライト側に近づいては変化する姿も面白く、映される像の全ては来場者に委ねられていました。


「おそれてる?」 2004年

3つの円形ガラス板が緩やかに回転し、シアン、マゼンタ、イエローの光を展示室へ映すのが、「おそれてる?」と題したインスタレーションでした。ガラスには特定の波長の光を反射し、補色の光を投下させる加工が施されていて、ガラス板の回転に伴い光も多様に変化しながら、展示室内を漂うように移動していました。


「ときに川は橋となる」 2020年

現代美術館の広いアトリウムに暗幕を張り、水やLEDライトを用いた作品を展開したのが、新作で展覧会のタイトルでもある「ときに川は橋となる」でした。中へ入ると中央に水の張ったシャーレが置かれていて、スポットライトで照らされ、上部のスクリーンに水面のさざなみが映し出されていました。


「ときに川は橋となる」 2020年

水面の僅かな揺れとともに、スクリーンのさざなみも変化していて、波紋というよりも、惑星が連なった天体現象とも言えるような独特のイメージを生み出していました。


「ビューティー」 1993年

その「ときに川は橋となる」の奥の一室で展開していたのが、エリアソンの初期の代表作として知られる「ビューティー」でした。


「ビューティー」 1993年

暗い展示室には細かなミスト状の水が絶えず降り注いでいて、光を当てることにより、帯状の虹が現れていました。またミストの中へ立ち入り、前後に行き来することも可能で、ひっきりなしに色や形を変えるオーロラのような虹の姿を見ることができました。またしばらく虹とミストを眺めていると、まるで魂が浮遊する光景を目にするようで、端的な自然現象とは言い切れない、不思議な印象も与えられました。


「溶ける氷河のシリーズ 1999/2019」 2019年

エリアソンが20年間に渡ってアイスランドの氷河をリサーチし、作品として発表したのが「溶ける氷河のシリーズ 1999/2019」でした。30枚の写真には、1999年と2019年の同一の地点の氷河が、対になるように記録されていて、いずれの氷河も後退し、地表部分がより露わになる光景を目の当たりにできました。気候変動に伴う影響をこれほど端的に示した作品もあまりないかもしれません。


「サステナビリティの研究室」

この他、ベルリンにあるスタジオの一端を見るかのような「サステナビリティの研究室」や、灯台の光の仕組みを利用したという「人間を超えたレゾネーター」なども展示されていて、過去から現在へと至るエリアソンの様々な創作や活動を追うこともできました。作品のスケール、展示数を鑑みても、一つの集大成な展覧会と呼んで差し支えありません。


「人間を超えたレゾネーター」 2019年

新型コロナウイルス感染症対策に関する情報です。入館時に手指の消毒、及び検温が行われます。37.5度以上の発熱があると認められた場合は、原則、入館できません。



事前予約制ではありませんが、会場内で来館者同士の間隔があけられるように、一定数以上の入場者数を制限しています。現在のところ、概ね混雑の集中する週末に規制がかかるようです。


休業要請や緊急事態宣言等を受け、当初3月の開幕が大幅に遅れたエリアソン展も、残すところ約1ヶ月半ほどとなりました。



今後、会期末に向け、更なる混雑や規制も予想されます。お出かけの際は同館の公式ツイッターアカウント(@MOT_art_museum)もご参照ください。



9月27日まで開催されています。遅くなりましたが、おすすめします。

「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」 東京都現代美術館@MOT_art_museum
会期:2020年6月9日(火)〜9月27日(日) *会期変更
休館:月曜日。但し8月10日、9月21日は開館。8月11日、9月23日。
時間:10:00~18:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1400円、大学・専門学校生・65歳以上1000円、中高生500円、小学生以下無料。
 *団体受付は当面中止。
 *MOTコレクションも観覧可。
 *同時開催の「もつれるものたち」、「おさなごころを、きみに」とのセット券もあり。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分。都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
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