「樂歴代 用の美−作陶の広がり」 樂美術館

樂美術館
「樂歴代 用の美-作陶の広がり」
2020/3/14~9/6



樂美術館で開催中の「樂歴代 用の美-作陶の広がり」を見てきました。

安土桃山時代、初代長次郎によって創設された樂焼は、赤や黒の茶碗だけでなく、水指、花入、懐石道具など、時に三彩技法を反映した様々なうつわをつくり続けてきました。

そうした樂歴代の多様な作陶を紹介するのが「用の美-作陶の広がり」で、長次郎から十五代直入までの手がけた焼きものを中心とした作品、約50点ほどが展示されていました。


「素三彩魚蝦文盤」

樂焼のルーツとされる三彩にも優品が少なくありません。そのうち中国の明の時代の「素三彩魚蝦文盤」は、緑、黄色などの色を用いた盤で、長次郎も同様の技法を持つ三彩の鉢、「三彩瓜文平鉢」を制作しました。現在は東京国立博物館に収蔵されているそうです。


五代 宗入「三彩瓔珞文鉢」

五代宗入の「三彩瓔珞文鉢」にも魅せられました。緑釉に赤樂の技法による鉢は肉厚で、周囲には古代インドの装身具に遡り、吉祥の柄とされる瓔珞(ようらく)の紋様が施されていました。そこには抽象的な美意識を見出すこともできるかもしれません。


六代 左入「香炉釉木瓜形牡丹彫文皿」、「緑釉木瓜形牡丹彫文皿」

縁に牡丹の模様を彫った六代左入の「香炉釉木瓜形牡丹彫文皿」や「緑釉木瓜形牡丹彫文皿」にも目がとまりました。いずれも木瓜の形をした皿や向付で、三彩の色釉も鮮やかに彩られていました。それこそお刺身などを盛ると映えて見えるのではないでしょうか。


十二代 弘入「大津絵汲出茶碗」

十二代弘入の「大津絵汲出茶碗」も可愛らしい作品でした。江戸時代初期より滋賀で伝わる民俗絵画、大津絵のモチーフを茶碗に象っていて、瓢箪鯰や鬼念仏などがまるでゆるキャラを思わせるタッチで描かれていました。樂家では九代了入以来、隠居後は滋賀の石山の地にて作陶を行ってきた歴史を有していて、まさにご当地ならではのうつわと言えるかもしれません。


十二代 弘入「宋胡録大鉢」

同じく十二代弘入の「宋胡録大鉢」は、タイの伝統的な古陶磁窯に倣った作品で、ろくろを用いずに樂家伝統の手捏ねで形が造られました。鉄絵によって描かれた、風に靡くような勢いのある草花の模様も魅力的に思えました。


三代 道入「織部釉樂茶碗 銘 光陰」

三代道入の「織部釉樂茶碗 銘 光陰」の佇まいにも心を引かれました。織部の様式を取り入れた茶碗で、緑釉が口縁より垂れるようにかけられていました。ねっとりと広がるような濃い釉薬と、比較的明るい地のコントラストも美しいかもしれません。


初代 長次郎「向獅子香炉」

初代長次郎の「向獅子香炉」も興味深いのないでしょうか。そもそも長次郎の茶碗以外の作品は極めて少なく、確定されているものは「二彩獅子像」に過ぎませんが、この作品も箱書の書付けによれば長次郎だと考えられるそうです。


初代 長次郎「黒樂茶碗 銘 勾当」

この他にも長次郎の「黒樂茶碗 銘 勾当」や十五代直入の「焼貫黒樂茶碗 銘 猫割り手」など惹かれた作品を挙げればきりがありません。


十五代 直入「焼貫黒樂茶碗 銘 猫割り手」 1985年頃 樂家蔵

茶の湯から広がる樂焼の多様な造形の魅力に改めて見入りました。



新型コロナウイルス感染症対策に伴う情報です。まず開館時間が一部短縮し、閉館が16時まで(最終入場は15時半まで)となりました。



入場時には、マスク着用をはじめ手指の消毒のほか、混雑を緩和するため10名以上のグループは入館することができません。さらに館内の同時入館数が20名と制限されています。



私自身、実に約13年ぶりに樂美術館を訪れましたが、窯元の樂家に隣接して建てられた美術館の佇まいは、かつてと同様にひっそりとしていて、ゆったりとした時間の流れる館内にて樂焼の名品を愛でることができました。



また当時は撮影が叶いませんでしたが、今回は携帯やスマホに限って、写真を自由に撮ることも可能でした。



9月6日まで開催されています。

「樂歴代 用の美-作陶の広がり」 樂美術館
会期:2020年3月14日(土)~9月6日(日)
休館:月曜日。但し祝日の場合は開館。展示替え期間。
時間:10:00~16:00。
 *最終入館は15時半まで。
 *短縮開館を実施。
料金:一般1000円、大学生800円、高校生400円、中学生以下無料。
住所:京都市上京区油小路通一条下る
交通:京都市バス堀川中立売、一条戻橋下車徒歩約3分。地下鉄烏丸線今出川駅下車6番出口より徒歩約13分。
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