「藤村龍至 ちのかたち―建築的思考のプロトタイプとその応用」 TOTOギャラリー・間

TOTOギャラリー・間
「藤村龍至 ちのかたち―建築的思考のプロトタイプとその応用」 
7/31~9/30



TOTOギャラリー・間で開催中の「藤村龍至 ちのかたち―建築的思考のプロトタイプとその応用」を見てきました。

1976年に東京都で生まれた藤村龍至は、2005年に藤村龍至建築設計事務所(現PFA)を設立し、ニュータウンや中心市街地の再生や、日本の将来像の提言を行うなど、幅広く活動してきました。

その藤村は、建築を「知識と形態の想像的な関係」、すなわち「ちのかたち」にあると捉えています。それでは、一体、どのような「ちのかたち」が展開されていたのでしょうか。

最初のフロアは、「ちのかたち」のタイムラインでした。過去に設計してきた建築を、模型や動画で紹介するもので、各プロジェクト毎に番号が付けられていて、アーカイブとして整理されていました。


「BUILDING K」 2008年

「BUILDING K」は、東京都杉並区の商店街に計画された、共同住宅と店舗からなるビルで、設備と構造を内包したメガ・ストラクチャーが採用されました。


「倉庫の家」/「小屋の家」 2011年

「倉庫の家」は、2011年に神奈川県の住宅地で設計された、文字通りに倉庫のような住宅で、2階の地上部と、地下の3層で建てられました。続く「小屋の家」も、同年に神奈川県で建てられた住宅で、海に面したテラスの面と、山側の山小屋風の外観を特徴としていました。


「つるがしま中央交流センター」 2018年

「つるがしま中央交流センター」は、今年の3月、埼玉県鶴ヶ島市に完成したばかりの自治会館で、地域包括支援センターが入居し、コミュニティレストラン機能を併設するなど、地域の経営拠点として整備されました。


「鶴ヶ島太陽光発電所環境教育施設」 2014年

大きな三角の屋根が特徴的であるのが、「鶴ヶ島太陽光発電所環境教育施設」で、工場跡地に建てられた太陽光発電施設内の教育施設でした。デザインは「駅」や「教会」のモチーフで生成されていて、確かに内部の天井の組み方などは、教会を連想させるものがありました。


「G Chair」 2014年

無数の椅子の模型が目を引きました。これは「G Chair」と呼ばれた、グーグルの画像検索で得られた椅子のデザインを、立体化して設計した試みでした。世界9か国の言語で検索し、ヒットした椅子の要素を再構成していて、一番大きな椅子は、全世界の要素を合わせたものでした。

藤村は、建築においても、一つの解に近づくには、「三人寄れば文殊の知恵」、より多くの知識を集めることであると語っています。つまり椅子は、人の知だけでなく、ネットの集合知を利用して出来たと言えるのかもしれません。

1つ上のフロアでは、「離散空間」として、空間をテーマに、未来の社会のモデルを提案されていました。厚紙を利用した構造体のインスタレーションが展開し、モニターにて藤村の建築を捉えた映像も映されていました。


「ROOM_DS 離散空間」

迷路のような構造体は、動線の役割も果たしていて、縫うように歩いて行くと、映像に突き当たるように構築されていました。空間における「連続と切断」も1つのキーワードと呼べそうです。


「ROOM_MA マルシェ」

中庭では「マルシェ」と題し、ニュータウンの再生などで活用するための家具を展示していました。


「離散空間家具H」 2018年

「離散空間家具H」は、埼玉県の鳩山ニュータウンの施設にて、衣類や小物の販売スタンドとして使用されるそうですが、スチールパイプを曲げて加工されていて、かなり独創的な形でもありました。



一つ一つ、あまり変化しているように見えない模型は、多くの要望や課題を反映し、設計段階で調整した上、出来上がったものだそうです。それも藤村の語る「三人寄れば文殊の知恵」、ひいては「人の知」の現れなのかもしれません。



「平凡に映る意見の集合も、十分に大きな集合であれば、一人の天才を超える可能性が開かれます。」 藤村龍至 *キャプションより



9月30日まで開催されています。

「藤村龍至 ちのかたち―建築的思考のプロトタイプとその応用」 TOTOギャラリー・間
会期:7月31日(火)~9月30日(日)
休館:月曜日。夏期休暇(8月11日~8月15日)
時間:11:00~18:00
料金:無料。
住所:港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅3番出口徒歩1分。都営大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅7番出口徒歩6分。
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