都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力」 東京都庭園美術館
東京都庭園美術館
「ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力」
6/30〜9/17

東京都庭園美術館で開催中の「ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力」を見て来ました。
南米、ブラジル北部のアマゾンやシングー川流域で暮らす先住民の人々は、古くから動物などを象った一木の椅子を作り続けてきました。
サンパウロの出版社、ベイ出版より、先住民の椅子コレクションが日本へとやって来ました。同社は、美術、建築関連の出版社で、出版事業を手がける一方、15年以上も前から、先住民の椅子の収集を行ってきました。なお「ベイ」とは、ブラジルの先住民の言葉で「もう少し」を意味するそうです。

中南米アメリカで椅子が使用されたのは、約4000年前のことで、主に共同体の長老やシャーマンが用いました。また椅子は、男性が占有し、婚姻時に新郎から義父や義兄に贈られることもありました。

椅子は、丸太から削り出されて作られ、カヌーや家を作るような、虫の害が及びにくい樹木が選ばれました。そしてタイトルに「野生動物」とあるように、動物を単純化させた形で作り上げられました。

また椅子だけに、座面、すなわち座るための平面の部分が存在していて、座面や脚の部分に、幾何学的な装飾がなされているのが大きな特徴でした。さらに文様は、ボディ・ペインティングと共通することもあり、一つの部族の共同体を表していました。

シングー川上流域の人々にとっては、猛禽類などの鳥類こそが、異世界により近い、聖なるもののと考えていました。よって椅子の対象としても、鳥類が重要視されました。そして椅子に腰掛けることは、人間と精霊の住む異界をつなぐ意味を持ち得ていたとも指摘されています。こうした動物の椅子は、我々が考える以上に、重要な存在であったのかもしれません。

ブラジルに古くから住む人々は、現在も、動物の椅子を作り続けています。それらは一つのアイディンティーの発露であり、共同体の存続の手段でもありました。

会場構成が秀逸でした。まずアール・デコの旧朝香宮邸の本館では、あえて低い位置に抽象的な展示台を設置し、椅子を載せていました。

また椅子の彫刻と建物の装飾が、不思議と響き合うような趣きもたたえていて、まるで動物は邸宅を飾る調度品のようにも見えました。空間自体の借景を、うまく引き出していたと言えるかもしれません。

一転して、新館のホワイトキューブでは、一部を除き、床へ直に彫刻を設置していました。そして随所にクッションを並べ、自由に座りながら、彫刻と同じ視点で鑑賞出来るように工夫されていました。

構成は建築家の伊東豊雄が手がけました。さすがに動物彫刻へ座ることは叶いませんが、新旧でがらりと様相を変える空間を、効果的に用いた展示と言えそうです。

椅子の持つ文化的背景についても踏み込んで紹介していましたが、単にお気に入りの動物を探して歩くのも楽しいかもしれません。

ジャガー、バク、サル、ウミガメ、カピパラ、ハナグマ、コウモリ、ハチドリ、エイなどと、陸や海を問わず、たくさんの動物たちが集っていました。

なお現在、ベイ出版は、ブラジル先住民の27部族における、計350点の椅子を有しているそうです。一連のコレクションが、ブラジル国外で公開されるのは、初めての機会でもあります。
会場内の撮影も可能です。9月17日まで開催されています。
「ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力」 東京都庭園美術館(@teienartmuseum)
会期:6月30日(土)〜 9月17日(月・祝)
休館:第2・第4水曜日(7/11、7/25、8/8、8/22、9/12)
時間:10:00~18:00。
*7月20日〜8月31日までの毎週金曜は21時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200(960)円 、大学生960(760)円、中・高校生・65歳以上600(480)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
*第3水曜日のシルバーデーは65歳以上無料。
住所:港区白金台5-21-9
交通:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩6分。JR線・東急目黒線目黒駅東口、正面口より徒歩7分。
「ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力」
6/30〜9/17

東京都庭園美術館で開催中の「ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力」を見て来ました。
南米、ブラジル北部のアマゾンやシングー川流域で暮らす先住民の人々は、古くから動物などを象った一木の椅子を作り続けてきました。
サンパウロの出版社、ベイ出版より、先住民の椅子コレクションが日本へとやって来ました。同社は、美術、建築関連の出版社で、出版事業を手がける一方、15年以上も前から、先住民の椅子の収集を行ってきました。なお「ベイ」とは、ブラジルの先住民の言葉で「もう少し」を意味するそうです。

中南米アメリカで椅子が使用されたのは、約4000年前のことで、主に共同体の長老やシャーマンが用いました。また椅子は、男性が占有し、婚姻時に新郎から義父や義兄に贈られることもありました。

椅子は、丸太から削り出されて作られ、カヌーや家を作るような、虫の害が及びにくい樹木が選ばれました。そしてタイトルに「野生動物」とあるように、動物を単純化させた形で作り上げられました。

また椅子だけに、座面、すなわち座るための平面の部分が存在していて、座面や脚の部分に、幾何学的な装飾がなされているのが大きな特徴でした。さらに文様は、ボディ・ペインティングと共通することもあり、一つの部族の共同体を表していました。

シングー川上流域の人々にとっては、猛禽類などの鳥類こそが、異世界により近い、聖なるもののと考えていました。よって椅子の対象としても、鳥類が重要視されました。そして椅子に腰掛けることは、人間と精霊の住む異界をつなぐ意味を持ち得ていたとも指摘されています。こうした動物の椅子は、我々が考える以上に、重要な存在であったのかもしれません。

ブラジルに古くから住む人々は、現在も、動物の椅子を作り続けています。それらは一つのアイディンティーの発露であり、共同体の存続の手段でもありました。

会場構成が秀逸でした。まずアール・デコの旧朝香宮邸の本館では、あえて低い位置に抽象的な展示台を設置し、椅子を載せていました。

また椅子の彫刻と建物の装飾が、不思議と響き合うような趣きもたたえていて、まるで動物は邸宅を飾る調度品のようにも見えました。空間自体の借景を、うまく引き出していたと言えるかもしれません。

一転して、新館のホワイトキューブでは、一部を除き、床へ直に彫刻を設置していました。そして随所にクッションを並べ、自由に座りながら、彫刻と同じ視点で鑑賞出来るように工夫されていました。

構成は建築家の伊東豊雄が手がけました。さすがに動物彫刻へ座ることは叶いませんが、新旧でがらりと様相を変える空間を、効果的に用いた展示と言えそうです。

椅子の持つ文化的背景についても踏み込んで紹介していましたが、単にお気に入りの動物を探して歩くのも楽しいかもしれません。

ジャガー、バク、サル、ウミガメ、カピパラ、ハナグマ、コウモリ、ハチドリ、エイなどと、陸や海を問わず、たくさんの動物たちが集っていました。

なお現在、ベイ出版は、ブラジル先住民の27部族における、計350点の椅子を有しているそうです。一連のコレクションが、ブラジル国外で公開されるのは、初めての機会でもあります。
【ブラジル先住民の椅子展】ハチドリをモチーフにした椅子。椅子を作ったパリクールの人々は、特別な機会にだけ制作しますが、そのほとんどは鳥をかたどったものです。椅子はシャーマンのためのもので、椅子に座ることで目に見えない精霊と対話できると信じられています。写真:石野千尋 pic.twitter.com/kT23FXiNJx
— 東京都庭園美術館 (@teienartmuseum) 2018年8月28日
会場内の撮影も可能です。9月17日まで開催されています。
「ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力」 東京都庭園美術館(@teienartmuseum)
会期:6月30日(土)〜 9月17日(月・祝)
休館:第2・第4水曜日(7/11、7/25、8/8、8/22、9/12)
時間:10:00~18:00。
*7月20日〜8月31日までの毎週金曜は21時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200(960)円 、大学生960(760)円、中・高校生・65歳以上600(480)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
*第3水曜日のシルバーデーは65歳以上無料。
住所:港区白金台5-21-9
交通:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩6分。JR線・東急目黒線目黒駅東口、正面口より徒歩7分。
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