「越後妻有 大地の芸術祭の里」を旅する Vol.2「まつだい 農舞台」・「里山食堂」

Vol.1「森の学校キョロロ」・「夢の家」に続きます。「越後妻有 大地の芸術祭の里」へ行ってきました。

「越後妻有 大地の芸術祭の里」を旅する Vol.1「森の学校キョロロ」・「夢の家」

「夢の家」の松之山から、「農舞台」の松代へは、道なりで約10キロあります。「農舞台」も「キョロロ」同様に、2003年のトリエンナーレ開催時に建てられました。現代美術のコレクションも有する総合文化施設で、ほくほく線のまつだい駅の目の前に位置します。



オランダの建築家グループMVRDVによる設計で、白い外観と、宙に浮いたような構造が特徴的な建物でした。1階に展示空間はなく、全ての施設が2階に存在しています。また建物真下に柱がありません。2階へアクセスするチューブのみで建物を支えていました。

入口のチューブを抜けると階段があり、左に「里山食堂」、右にミュージアムショップと展示スペースがあります。ちょうどお昼時でした。よって先に「里山食堂」で、昼食をとることにしました。



「里山食堂」で供されるのは、地元の野菜を中心としたメニューによる「里山ビュッフェ」です。大人は1500円で、大皿の料理を好きに取りに行くスタイルでした。キャラブキやヤーコンの天ぷら、それにミョウガのピクルスなど、地場の食材が目を引きました。



写真が拙くて恐縮ですが、いずれも想像以上に美味しく、野菜の旨みや滋味を感じられる料理ばかりでした。そして白米と玄米のご飯も抜群に美味しい。営業日とビュッフェ開催日に注意が必要ですが、まつだいへお出かけの際は是非ともおすすめします。


ジャン=リュック・ヴィルムート「カフェ・ルフレ」

なお「里山食堂」のスペース自体も作品です。手がけたのはフランスのジャン=リュック・ヴィルムートで、天井の円形照明に松代界隈の写真をはめ込みました。テーブル上の天板から鏡越しに見ることが出来ます。


ジョゼ・デ・ギマランイス「イエローフラワー」

腹ごしらえをしたあとは、「農舞台」から、背後の里山へ展開する、現代美術作品を鑑賞しました。「農舞台」は、「越後妻有 大地の芸術祭の里」の中核施設だけあり、多くの作品が設置されています。


ジョセップ・マリア・マルティン「まつだい住民博物館」

まつだい駅からのアプローチに、1500本にも及ぶカラーバーが設置されています。スペインのジョセップ・マリア・マルティンによる「まつだい住民博物館」で、旧松代町の各家庭が選んだというバーには、それぞれの屋号が記されていました。住民と協働して制作されたそうです。


草間彌生「花咲ける妻有」

青空の元、陽光を受けて華やぐのが、草間彌生の「花咲ける妻有」でした。2003年に制作された作品ですが、周囲にも花壇が整備され、かなり手入れが行き届いている印象も受けました。


イリヤ&エミリア・カバコフ「棚田」

「農舞台」で最も人気があるのが、イリヤ&エミリア・カバコフの「棚田」かもしれません。川の対岸の棚田設置された人型の彫刻と、「農舞台」にあるテキストで構成された作品で、舞台側の展望台から見ると、詩と彫刻が融合して見えます。カバコフは、春から秋の稲作の情景を、詩に表現しました。


大西治・大西雅子「ゲロンパ大合唱」

カエル型の謎めいたオブジェは、堆肥製造のための機械でもあるそうです。上部には口があり、刈り終えた草を入れると、堆肥を作り出します。移動可能とのことでしたが、確かに脚の部分にタイヤが付いていました。

「農舞台」は、裏手の里山にも、たくさんの作品が点在しています。ただし里山といっても、城址も残る、かなり急な山です。全て歩いて回ると3時間ほどかかります。


パスカル・マルティン・タイユー「リバース・シティー」

幾つかは車でも観覧が可能です。よって山道を車で上がることにしました。まず目立つのが、パスカル・マルティン・タイユーの「リバース・シティー」です。色鉛筆の群れを模した大型のオブジェです。いずれも高さ2メートルの位置に吊るされ、一本一本には、世界の各国の国名が書かれていました。


田中信太郎「○△□の塔と赤とんぼ」

さらに大きな赤トンボの作品がランドマークの如くにそびえ立ちます。全長14メートルもありました。ビルの4〜5階の高さに相当するそうです。


松田重仁「円ー縁」

トーテムポールが結界を築いているかのようでした。松田重仁の「円ー縁」です。5本のトーテムポールが、円を描いて立っています。中央にはパイナップルのような実が置かれていました。まるで捧げ物のようです。一体、何が入っているのでしょうか。


ハーマン・マイヤー・ノイシュタット「WDスパイラル・パート3 マジック・シアター」

ドイツのハーマン・マイヤー・ノイシュタットは、城山の休耕田の中に、劇場空間を作り上げました。筒状の彫刻が3つ連なっている建築物で、実際に中へ入ることが可能です。内部には鏡や半透明の壁があり、外の景色を見やることも出来ました。


ハーマン・マイヤー・ノイシュタット「WDスパイラル・パート3 マジック・シアター」

作家は、住民が集まって欲しいという願いを込め、劇場の意味のタイトルを付けたそうですが、率直なところ、中はややくたびれています。私には、不時着した宇宙船のように見えました。


ペリフェリック「まつだいスモールタワー」

城山で最も高い位置にあるのが、ペリフェリックの「まつだいスモールタワー」でした。松代の街を一望するロケーションです。背後には、急峻な山の上に建つ、松代城の模擬天守も見え隠れしています。



時間の関係で、全てを鑑賞出来ませんでしたが、自然の地形も取り込んだ作品は、越後妻有だからこそ可能な展示と言えるのではないでしょうか。見応え十分でした。



一通り、「農舞台」を見終えた後は、「クロステン」と呼ばれる十日町の道の駅へ立ち寄り、お酒や諸々の食品を購入した上で、初日の最終目的地である「光の館」へと向かいました。

Vol.3「光の館」へと続きます。

*「越後妻有 大地の芸術祭の里」を旅する
Vol.1「森の学校キョロロ」・「夢の家」
Vol.2「まつだい 農舞台」・「里山食堂」
Vol.3「光の館」
Vol.4「越後妻有里山現代美術館 キナーレ」
Vol.5「絵本と木の実の美術館」
Vol.6「たくさんの失われた窓のために」・「ポチョムキン」

まつだい「農舞台」 「越後妻有 大地の芸術祭の里」@echigo_tsumari
休館:水曜日。
 *但し祝日の場合は翌日休館。
時間:10:00~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:大人600円、小・中学生300円。
住所:新潟県十日町市松代3743-1
交通:北越急行ほくほく線まつだい駅下車すぐ。JR線越後湯沢駅より車で約80分。
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