都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「越後妻有 大地の芸術祭の里」を旅する Vol.1「森の学校キョロロ」・「夢の家」
「越後妻有 大地の芸術祭の里」へ行ってきました。

ジェームス・タレル「光の館」
http://hikarinoyakata.com
はてなブログ「日毎に敵と懶惰に戦う」の@zaikabouさんから、越後妻有の「光の館」へのお誘いをいただいたのは、今から2ヶ月ほど前、7月初旬のことでした。
それは、「光の館を、定員上限の12名で貸し切ったので、皆さんで泊まりませんか。」という、大変に有り難いお誘いでした。「光の館」とは、光のアーティスト、ジェームス・タレルの設計した、世界で唯一、宿泊の可能な作品です。とても人気が高く、春から秋にかけては、土日はおろか、平日でもなかなか予約が取れません。その館を貸し切りにする、@zaikabouさんならではのアイデアです。そもそも私自身、越後妻有に一度も行ったことがありませんでした。
よって「光の館」に宿泊することを目標に、1泊2日の日程で、越後妻有の「大地の芸術祭の里」を巡ることにしました。
私がアート関連の先輩や友人の5名と、東京駅で待ち合わせたのは、初日の朝の8時頃でした。上越新幹線の「MAXとき」に乗車し、越後妻有の玄関口である越後湯沢へ向かいました。@zaikabouさんのグループとは、夕方前に「光の館」で集合することにしました。
「大地の芸術祭の里」のエリアは広大です、展示施設は、鉄道のアクセスが不便な山岳地帯にも点在しています。よって越後湯沢駅でレンタカーを借り、越後妻有を目指しました。

国道17号から国道353号に折れ、西へ向かうと、すぐに山道に入ります。幾つかのトンネルを抜けると十日町市です。同エリアは日本有数の米どころです。たわわに稲穂を実らせた水田が目に飛び込んできました。

「越後妻有 大地の芸術祭の里」は、十日町を中心に東西南北、中里、津南、松之山、松代、そして川西の6つのエリアから成っています。「光の館」は最北部の川西地区に位置しますが、まずはエリア最西部の松之山、松代地区から見ることにしました。最初の目的地は「森の学校 キョロロ」でした。

越後湯沢から山を越え、信濃川を渡り、再び山岳部の松之山へと車を進めると、約1時間で「森の学校 キョロロ」に到着しました。キョロロは越後妻有一体の自然科学をテーマにした科学館で、2003年の越後妻有トリエンナーレの開催に伴って建設されました。キョロロの名は、同地へ田植えの時期に渡ってくる、カワセミのアカショウビンの鳴き声に由来するそうです。

建物は全て鋼で出来ていて、左手の塔を除くと、ほぼ平屋です。ともかく横へ長く、全長で160メートルほどあります。青空のもと、緑と対比的なサビ色が殊更に印象的でした。ちなみに冬季は雪に埋もれてしまうそうです。

キョロロの館内では地域の暮らしや生き物を紹介する展示が行われています。「森の水族館」では、たくさんの水槽の中に、サンショウウオのほか、十日町地域に生息する魚や水生昆虫が飼育されています。

古民家の再現展示も見どころの一つです。なお冬季は炉端に火が入り、里山の料理を味わうことも出来るそうです。年季の入った建具や釜なども置かれていました。

松之山の豪雪を体感的に知ることが出来るのが、「実寸大積雪ポール」でした。過去35年間の年間最大積雪深をポールで表現。1メートル越えは当たり前です。中には2メートルを超え、3、4メートル、さらには5メートル50センチに達した年もあります。キョロロの建物自体も耐候性の鋼板で造られているそうです。

窓からは鬱蒼とした緑に覆われた森が見えましたが、冬になれば白一色。全く異なった景色が開けているに違いありません。
キョロロの最大の目玉は「クワカブルーム」かもしれません。部屋の中にはクワガタ、カブトムシが放し飼いにされています。

その数が半端ありません。右も左もクワガタにカブトムシ。何頭いるのでしょうか。足元にも要注意です。うっかりすると踏んでしまいそうになります。いずれも地域の人々が繁殖させたクワガタだそうです。居合わせた子どもたちも大はしゃぎでしたが、私もこれほどたくさんのクワガタを一度に見たのは、生まれて初めてでした。

キョロロの塔は展望台になっていて、登ることが出来ます。ただしアクセスは階段のみで、全部で160段あります。さらに青い光を用いた逢坂卓郎の「大地・水・宇宙」の展示のために、ほぼ真っ暗闇でした。足元は悪く、登るのには思いの外に難儀しました。

展望台からの景色はご覧の通りです。絶景かなと言ったところでしょうか。さすがに見晴らしも良好です。遥か彼方にまで里山が続いていました。

遠藤利克「足元の水」
遠藤利克の「足元の水」も興味深い作品でした。大きな鉄板が地面に広がっていますが、その下には大量の水が溜められているそうです。建物の鉄板とも響きあっているように見えました。
マリーナ・アブラモヴィッチ「夢の家」
http://www.tsumari-artfield.com/dreamhouse/

キョロロを出た後は、松之山温泉を抜け、「夢の家」へと向かいました。「夢の家」とは、旧ユーゴスラビアのマリーナ・アブラモヴィッチが、築100年超の民家を改修して作った作品で、「家」の名が示すように、実際に宿泊もすることが出来ます。

内部の観覧は事前予約制ですが、この日は飛び込みだったため、外観のみ見てきました。一口で言えばともかく古い家です。もし「夢の家」と知らなければ、単なるあばら屋かと思って、通り過ぎてしまうかもしれません。なお「夢の家」は、2011年の長野県北部地震により被害を受け、一時閉鎖したものの、翌年に修復を経て再開されました。何せこれだけの古い家屋です。維持管理だけでも相当な労力が必要なことが想像されます。

コンセプトによれば、まさしく夢を見るための家です。銅の風呂で身を清め、夢見るためのスーツを着て、黒曜石の枕のベットで寝るとあります。そして見た夢を翌朝に記して記録するそうです。徹底しています。
温泉街からも外れた山の上の古民家での夢の一夜。ここで一体、どのような夢を見るのか想像しながら見学しました。

「夢の家」からは、再び車に乗り、松之山の北にある松代の「農舞台」へ向かいました。
Vol.2「まつだい 農舞台」・「里山食堂」へと続きます。
*「越後妻有 大地の芸術祭の里」を旅する
Vol.1「森の学校キョロロ」・「夢の家」
Vol.2「まつだい 農舞台」・「里山食堂」
Vol.3「光の館」
Vol.4「越後妻有里山現代美術館 キナーレ」
Vol.5「絵本と木の実の美術館」
Vol.6「たくさんの失われた窓のために」・「ポチョムキン」
越後松之山「森の学校」キョロロ(十日町市立里山科学館) 「越後妻有 大地の芸術祭の里」(@echigo_tsumari)
休館:火曜日。年末年始(12月26日~31日)。
*但し祝日の場合は翌日休館。
時間:9:00~17:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:大人500円、小・中学生300円。
住所:新潟県十日町市松之山松口1712-2
交通:北越急行ほくほく線まつだい駅より車で20分。JR線越後湯沢駅より車で約60分。

ジェームス・タレル「光の館」
http://hikarinoyakata.com
はてなブログ「日毎に敵と懶惰に戦う」の@zaikabouさんから、越後妻有の「光の館」へのお誘いをいただいたのは、今から2ヶ月ほど前、7月初旬のことでした。
それは、「光の館を、定員上限の12名で貸し切ったので、皆さんで泊まりませんか。」という、大変に有り難いお誘いでした。「光の館」とは、光のアーティスト、ジェームス・タレルの設計した、世界で唯一、宿泊の可能な作品です。とても人気が高く、春から秋にかけては、土日はおろか、平日でもなかなか予約が取れません。その館を貸し切りにする、@zaikabouさんならではのアイデアです。そもそも私自身、越後妻有に一度も行ったことがありませんでした。
よって「光の館」に宿泊することを目標に、1泊2日の日程で、越後妻有の「大地の芸術祭の里」を巡ることにしました。
私がアート関連の先輩や友人の5名と、東京駅で待ち合わせたのは、初日の朝の8時頃でした。上越新幹線の「MAXとき」に乗車し、越後妻有の玄関口である越後湯沢へ向かいました。@zaikabouさんのグループとは、夕方前に「光の館」で集合することにしました。
「大地の芸術祭の里」のエリアは広大です、展示施設は、鉄道のアクセスが不便な山岳地帯にも点在しています。よって越後湯沢駅でレンタカーを借り、越後妻有を目指しました。

国道17号から国道353号に折れ、西へ向かうと、すぐに山道に入ります。幾つかのトンネルを抜けると十日町市です。同エリアは日本有数の米どころです。たわわに稲穂を実らせた水田が目に飛び込んできました。

「越後妻有 大地の芸術祭の里」は、十日町を中心に東西南北、中里、津南、松之山、松代、そして川西の6つのエリアから成っています。「光の館」は最北部の川西地区に位置しますが、まずはエリア最西部の松之山、松代地区から見ることにしました。最初の目的地は「森の学校 キョロロ」でした。

越後湯沢から山を越え、信濃川を渡り、再び山岳部の松之山へと車を進めると、約1時間で「森の学校 キョロロ」に到着しました。キョロロは越後妻有一体の自然科学をテーマにした科学館で、2003年の越後妻有トリエンナーレの開催に伴って建設されました。キョロロの名は、同地へ田植えの時期に渡ってくる、カワセミのアカショウビンの鳴き声に由来するそうです。

建物は全て鋼で出来ていて、左手の塔を除くと、ほぼ平屋です。ともかく横へ長く、全長で160メートルほどあります。青空のもと、緑と対比的なサビ色が殊更に印象的でした。ちなみに冬季は雪に埋もれてしまうそうです。

キョロロの館内では地域の暮らしや生き物を紹介する展示が行われています。「森の水族館」では、たくさんの水槽の中に、サンショウウオのほか、十日町地域に生息する魚や水生昆虫が飼育されています。

古民家の再現展示も見どころの一つです。なお冬季は炉端に火が入り、里山の料理を味わうことも出来るそうです。年季の入った建具や釜なども置かれていました。

松之山の豪雪を体感的に知ることが出来るのが、「実寸大積雪ポール」でした。過去35年間の年間最大積雪深をポールで表現。1メートル越えは当たり前です。中には2メートルを超え、3、4メートル、さらには5メートル50センチに達した年もあります。キョロロの建物自体も耐候性の鋼板で造られているそうです。

窓からは鬱蒼とした緑に覆われた森が見えましたが、冬になれば白一色。全く異なった景色が開けているに違いありません。
キョロロの最大の目玉は「クワカブルーム」かもしれません。部屋の中にはクワガタ、カブトムシが放し飼いにされています。

その数が半端ありません。右も左もクワガタにカブトムシ。何頭いるのでしょうか。足元にも要注意です。うっかりすると踏んでしまいそうになります。いずれも地域の人々が繁殖させたクワガタだそうです。居合わせた子どもたちも大はしゃぎでしたが、私もこれほどたくさんのクワガタを一度に見たのは、生まれて初めてでした。

キョロロの塔は展望台になっていて、登ることが出来ます。ただしアクセスは階段のみで、全部で160段あります。さらに青い光を用いた逢坂卓郎の「大地・水・宇宙」の展示のために、ほぼ真っ暗闇でした。足元は悪く、登るのには思いの外に難儀しました。

展望台からの景色はご覧の通りです。絶景かなと言ったところでしょうか。さすがに見晴らしも良好です。遥か彼方にまで里山が続いていました。

遠藤利克「足元の水」
遠藤利克の「足元の水」も興味深い作品でした。大きな鉄板が地面に広がっていますが、その下には大量の水が溜められているそうです。建物の鉄板とも響きあっているように見えました。
マリーナ・アブラモヴィッチ「夢の家」
http://www.tsumari-artfield.com/dreamhouse/

キョロロを出た後は、松之山温泉を抜け、「夢の家」へと向かいました。「夢の家」とは、旧ユーゴスラビアのマリーナ・アブラモヴィッチが、築100年超の民家を改修して作った作品で、「家」の名が示すように、実際に宿泊もすることが出来ます。

内部の観覧は事前予約制ですが、この日は飛び込みだったため、外観のみ見てきました。一口で言えばともかく古い家です。もし「夢の家」と知らなければ、単なるあばら屋かと思って、通り過ぎてしまうかもしれません。なお「夢の家」は、2011年の長野県北部地震により被害を受け、一時閉鎖したものの、翌年に修復を経て再開されました。何せこれだけの古い家屋です。維持管理だけでも相当な労力が必要なことが想像されます。

コンセプトによれば、まさしく夢を見るための家です。銅の風呂で身を清め、夢見るためのスーツを着て、黒曜石の枕のベットで寝るとあります。そして見た夢を翌朝に記して記録するそうです。徹底しています。
温泉街からも外れた山の上の古民家での夢の一夜。ここで一体、どのような夢を見るのか想像しながら見学しました。

「夢の家」からは、再び車に乗り、松之山の北にある松代の「農舞台」へ向かいました。
Vol.2「まつだい 農舞台」・「里山食堂」へと続きます。
*「越後妻有 大地の芸術祭の里」を旅する
Vol.1「森の学校キョロロ」・「夢の家」
Vol.2「まつだい 農舞台」・「里山食堂」
Vol.3「光の館」
Vol.4「越後妻有里山現代美術館 キナーレ」
Vol.5「絵本と木の実の美術館」
Vol.6「たくさんの失われた窓のために」・「ポチョムキン」
越後松之山「森の学校」キョロロ(十日町市立里山科学館) 「越後妻有 大地の芸術祭の里」(@echigo_tsumari)
休館:火曜日。年末年始(12月26日~31日)。
*但し祝日の場合は翌日休館。
時間:9:00~17:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:大人500円、小・中学生300円。
住所:新潟県十日町市松之山松口1712-2
交通:北越急行ほくほく線まつだい駅より車で20分。JR線越後湯沢駅より車で約60分。
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