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「かわいい江戸絵画」 府中市美術館

府中市美術館
「春の江戸絵画まつり かわいい江戸絵画」
3/9~5/6



府中市美術館で開催中の「かわいい江戸絵画」展へ行ってきました。

今年も春の府中は江戸絵画。恒例の江戸絵画シリーズが始まっています。今回のキーワードは「かわいい」。さて「かわいい」と聞いて、一体、何を連想するでしょうか。

当然ながら一言に「かわいい」としても、その対象なり内容は様々。子どもたち、またユーモラスなもの、そして小さな草花への想い。そもそも「かわいい」とは気の毒などを意味する「かわいそう」から派生したもの。中世には「かわいそう」から反対の「愛らしい」へ。ようは哀れみの気持ちも含む、実に広い意味を持つ言葉でもあるわけです。

よって本展でも江戸絵画の多様な「かわいい」を展観。「かわいい」を感覚的に楽しみながら、そのエッセンスを探る内容となっていました。

では早速、かわいいものを。まずはわんこ。対青軒印の「子犬図」です。対青軒とは宗達工房の印。たっぷりとした墨の滲みを活かしてまるっこい子犬を描いています。


円山応挙「狗児図」 個人蔵 *後期展示

小さくて丸いもの。そしてくるりと巻いたしっぽ。その辺もかわいらしく感じるポイントではないでしょうか。また展示では応挙犬も何匹か登場。和みます。にやりとしてしまいました。

さて先に触れた「哀れみ」の観点から興味深い一枚を。それが窪田雪鷹の「駱駝図」です。

ラクダの背中の毛までを細かに表した作品。一見するとかわいくはないかもしれません。しかしながら賛に注目。何とそこには「見せ物のように引き回されてラクダが可哀想だ。」、という意味の文が記されているのです。当時、ラクダはオランダ船でやってきて全国津々浦々に巡回。珍しい動物だとして民衆の人気を博していたとか。それに対しての哀れみの心情が表れているというわけでした。


歌川国芳「猫のすずみ」 渡邊木版美術画舗 *前期展示

続いてはもう少し別の「かわいい」を。変なものに対するおかしさ、そこから由来するかわいらしさです。


与謝蕪村「火桶図」 個人蔵 *後期展示

ここでは鈴木松年の「蛙と蟹図押絵貼屏風」。確かに蛙と蟹が描かれている屏風ですが、その姿は人間。蛙が着物を着て下駄を履き、傘を持って立っています。これは講釈で人気があり、歌舞伎の演目にもなったお話だそうですが、その滑稽な出立ちはには思わず噴き出しそうになってしまいました。

また純粋無垢なものへの眼差しとしては狩野惟信の「菊慈童図」も。古代中国の故事の画題ですが、山深き里で菊を摘む女性の姿はまさに清楚。これも一つのかわいらしさの表れかもしれません。

それに一風変わったものではミニチュアの屏風も出品。小さなものにかわいいと思う心の現れです。また展示ではかわいい形とは何かを追求。たとえば一例として円や三角などの単純な形、またそれを繰り返す幾何学的な形をとった作品もお目見えします。


伊藤若冲「伏見人形図」 個人蔵 *前期展示

小さな目白が三匹連なっている森狙仙の「藤花繍眼児図」、そして托鉢僧が斜めになってズラリ50名近くはいる若冲の「托鉢図」なども形からしてかわいい作品。また大津絵から白隠のすたすた坊主も出てきます。


仙がい義梵「猫に紙袋図」 福岡市美術館 *後期展示

かわいいかわいい江戸絵画まつり。府中ならではの切り口で楽しめました。


長沢蘆雪「群猿図屏風」 草堂寺 *後期展示

さて最後に重要なことを。実は本展は前後期の完全2期制。4月8日を挟んで作品がほぼ全点入れ替わります。

「かわいい江戸絵画」(出品リスト
前期:3月9日(土)~4月7日(日)
後期:4月9日(火)~5月6日(月)


ようは2つで1つの展覧会。しかも嬉しいことに、1度目の観覧券を提示すると、2度目は半額という特典つきです。

【展覧会講座】
4月29日(月) 「子犬をかわいらしく描くこと」音ゆみ子(同館学芸員)
5月4日(土) 「かわいい江戸絵画-その論理と歴史」金子信久(同館学芸員)
*いずれも14時から。講座室にて無料。

【子ども向けイベント「かわいい探検隊!」】
展覧会を見ながら「探検隊ワークシート」のクイズに挑戦。要観覧料。但し府中市内の小中学生は「府中っ子学びのパスポート」で入場フリー。大人も参加可。会期中随時。

前期は4/7まで。まだの方はひとまず今週末がタイムリミットです。是非とも府中へお出かけ下さい。



前期展示は4月7日まで、展覧会は5月6日まで開催されています。

「春の江戸絵画まつり かわいい江戸絵画」 府中市美術館
会期:3月9日(土)~5月6日(月・祝) *前期:3/9(土)~4/7(日)、後期:4/9(火)~5/6(月)
休館:月曜(但し4/29、5/6を除く)。3/21(木)、4/30(火)
時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
料金:一般700(560)円、大学・高校生350(280)円、中学・小学生150(120)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *府中市内の小中学生は「府中っ子学びのパスポート」で無料。
 *2度目の観覧料は半額。
場所:府中市浅間町1-3 都立府中の森こうえん
交通:京王線東府中駅から徒歩15分。京王線府中駅からちゅうバス(多磨町行き)「府中市美術館」下車。
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