「コズミック・トラベラーズ」 エスパス ルイ・ヴィトン東京

エスパス ルイ・ヴィトン東京
「コズミック・トラベラーズ - 未知への旅」 
1/21-5/6



オープニングのヴェイヤン、そして前回のショッツ展と、表参道のアートスポットとして定着しつつあるエスパス ルイ・ヴィトン東京ですが、現在、同ギャラリー開設以来初めてとなるグループ展が開催されています。

それが今回の「コズミック・トラベラーズ 未知への旅」です。コズミックとは宇宙または無限大、そしてはトラベラーと結びつくことで肉体や精神の旅とも意味される言葉ですが、そうした主題の元、全5名のアーティストが絵画に立体、そして映像からインスタレーションなどを展開しました。

出品作家は以下の通りです。

原口典之
佐藤允
塩保朋子
高木正勝
渡辺豪


さて全面ガラス張りの開放的なメインスペースに、高さ6メートルにも及ぶ立体の他、液体を浸したプール状の作品などの大作を持ち込んだのが原口典之です。


原口典之「Triad」2012年

ともかく原口というとかつての横浜NYKの個展、「社会と物質」でも見られたように、工業製品や廃棄物などを用い、非常に物質感のある構造物を作ることでも知られていますが、今回もまた素材の硬軟を使い分け、空間そのものの表情を変化させるようなインスタレーションを繰り広げました。

そして作品の中核となるのが床面に広がる直径3メートルの円形プール、「Triad」です。


原口典之「Triad」2012年(部分)

黒光りする水面には周囲の風景が強く写り込んでいますが、これは水ではなく、何と油です。

油の表面は光を確かに捉え、鏡のように空間の景色を変化させています。見ていて飽きることはありません。またちょうど私が出向いた時は昼間でしたが、外が暗くなり、照明の効果が増す日没後もまた趣きを変えるのではないでしょうか。

ヨコハマトリエンナーレも記憶に新しいのではないでしょうか。 常に変化し、また拡張するのは佐藤允のドローイングです。その線描は既にフレームをはみ出し、空間を侵食し始めていました。


佐藤允、展示風景

鬱蒼と生い茂る草花、また奇怪な動物や昆虫のモチーフ、そして妖怪か悪魔のような人間が細かなタッチで絡みあい、そこから見開かれた瞳が爛々と輝いています。


佐藤允、展示風景

なお会期中、このドローイングは佐藤の手によって描き足されていくのだそうです。会期末にはそれこそ魔界のジャングルとでも言えるような世界が作り上げられているかもしれません。

静寂のアニメーションで魅せるのはお馴染みの渡辺豪です。


渡辺豪「ひとつの風景の旅」2012年

渡辺は全部で約20分ほどの映像を出品しています。限りなく静止に近いものの、それでも緩やかに動くカップやボウルを眺めていると、それこそ日常の時間の感覚を揺さぶられるのではないでしょうか。ここはしばし見入りました。


塩保朋子「Bubbles」2011年

気の遠くなるようなカッティングの作業によって、どこか有機的でかつ繊細なオブジェを作り上げたのが塩保朋子です。


塩保朋子「Flowing sky」2012年

また気象現象をモチーフともした「Flowing sky」では、メタリックな原口の作品をさも優しく包み込むかのように掲げられています。カッティングによる細かな穴を通して、まさに木漏れ日の如く光が差し込んでいました。

人気の高木正勝は一階の店舗部分での展示です。ちょうど入口の正面、突き当たり部分にある大型の縦長のスクリーンで映像を展示しています。色に光が交錯し、輝かしいまでの幻想風景は、ヴィトンの華やいだフロアスペースによく似合っていました。

なお会場では作品図版、またキュレーターの西沢氏のテキストが入った豪華冊子の図録も無料でいただけます。いつもながらに至れり尽くせりのもてなしでした。


ルイ・ヴィトン表参道ビル

ロングランの展覧会です。5月6日まで開催されています。

「コズミック・トラベラーズ - 未知への旅」 エスパス ルイ・ヴィトン東京
会期:1 月21日(土)~5月6日(日)
休廊:不定休
時間:12:00~20:00
住所:渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル7階
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A1出口より徒歩約3分。JR線原宿駅表参道口より徒歩約10分。
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