デンマーク・ハーフキッズ

デンマークについての情報やニュースを紹介、またデンマーク人と日本人のハーフの子供たちの子育て日記。

『ウッラの小さな抵抗』

2009-06-04 06:32:13 | デンマーク 映画・芸術関係
 図書館の蔵書を検索していて、偶然見つけた『ウッラの小さな抵抗』という児童向けの小説を読みました。タイトルに『ナチス占領時代の少女』という副題がついています。本の扉のところに書かれた、この本の紹介文です。

   1940年4月から5年間、デンマークはナチスドイツに占領された。
   ユダヤ人迫害の手は、ウッラのピアノの先生にもせまっていた。
   「先生を家にかくまってあげれば。」と言うウッラに、お母さんは
   危険だからかかわってはいけないと答える。ウッラは初めてお母さん
   に不信感をおぼえる。
   親友のグレタと遊んでいたウッラは、地下室であやしい人影を見る。
   やがて二人は、つきまとう密告者におびえながら、ユダヤ人救出に
   立ち会うことに・・・。
   ナチス占領下のデンマークに暮らす、思春期の多感な少女を、自らの
   体験に重ねて生き生きとえがいた作品。

 子ども向けであること、小説であること、そしてやや物事を美化して書いている面も考えられますが、それでも占領下の当時のデンマークの雰囲気は、確かにこんな感じだったのかなと考えました。大人たちの緊迫した雰囲気、対独協力者や地下活動者がいて、破壊工作、尾行、ドイツ軍による制裁などが行われ、やはり日々、ぴりぴりした張り詰めた空気があったのだと思います。その中で、子どもたちは子どもたちなりの感性で、ときに敏感に、この時代を経験していったのでしょう。

 デンマーク語ではこうした小説や当時の状況を伝えるノンフィクションなどがたくさん出版されているのでしょうが、私は初めて読んだので、ああ、こういった感じだったんだ、と新鮮な気持ちで読みました。昔、アンネの日記を吸い込まれるような気持ちで読んだものでしたが、そのくらいの年齢の目線で書かれたものは多感な時期であり、若者の感性もあり、大人とは違った新鮮な見方で書かれていると思います。

 この小説の主人公ウッラも、ドイツ軍占領の下、恐怖を感じながらも同時に、ときにスリルを味わい、アイスの味が水っぽくなってきたことに気づき、友達と映画や映画俳優の話をし、髪にパーマをかけ(ちりちりになって大失敗)、ダンスを習い、父親が食卓でドイツ軍への怒りをぶちまけているときに突然「イタリア人は超直にもマカロニを食べるのかな?」と言い出してみたり・・・。そういった、普通の子どもの生活をしながら、占領下のデンマークをひしひしと感じています。

 私の息子たちがもう少し大きくなったら、この本をぜひ読んでもらいたいと思います。日本の戦時中とはまたちがったデンマークの占領下の様子を、この本で垣間見てもらいたいと思います。

 『ナチス占領時代の少女 ウッラの小さな抵抗』
  インゲ・クロー作 
  枇谷玲子訳 杉田幸子絵
  文研出版