東京都の小池知事は、2020東京五輪を控えて、「英語教育」を東京のレガシー(遺産)の一つにしたい考えだと語ったそうだ。
以下、12日の産経ニュースから抜粋。産経新聞との新春インタビューから...
『都立高校などで語学指導を行う
外国青年招致事業「JETプログラム」で、外国語指導助手の受け入れ数を平成28年度の200人から将来的に400人に倍増することを目指す考えを示した。
小池氏は「生きた英語を教えてくれるJETプログラムは大変価値がある」と指摘。2020年東京五輪・パラリンピックを3年後に控え、小池氏は「英語教育」を東京のレガシー(遺産)の一つにしたい考えだ。』
さらに、『都が国より2年前倒しで平成30年度から小学校で英語を教科化することを受けて、英語専科教員の積極配置も視野に入れる考えも示した。』
小学校にも「英語の先生」を
配置?する考えだそうだ。
外国語指導助手というのは、ALT(Assistant Language Teacher)と呼ばれる、小中高の英語の時間に、日本人教師のアシスタントをする外国人たちのことで、主に「JETプログラム」という国の事業を利用するケースと、民間企業に依頼して派遣してもらうケースがあり、各自治体が独自の判断でどちらかを選択している。

あくまでも「助手」
最初JETプログラムという言葉を耳にしたのは7年ほど前だったか、夏の登山シーズンに富士山の五合目で、外国人登山客の登山指導や観光案内をするアルバイトをしたときだった。
広島県から来たという、20代半ばくらいのカナダ人女性が、夕方五合目の山小屋に到着し、翌朝登山する予定だが天候はどうかと尋ねてきた。
色々立ち話をする内に、彼女は中学校で英語を教えている。JETプログラムで来日したALTだ。富士山には前から登りたかった。などなど、ベラベラ自分のことをおしゃべりしてくれた。まるで、久しぶりに英語で会話できる快感を満喫しているようだった。

人種もいろいろ
JETとは、「J]:Japan、「E]:English、「T]:Teacher の略語なんだろうなと勝手に想像していたのだが、後でネットで調べてみたら、まったく違っていた。
The Japan Exchange and Teaching Programme の略語で、日本語名は「語学指導等を行う外国青年招致事業」と呼ぶそうだ。詳しくは
JETプログラムのホームページを見ていただければ、何から何まで詳しい情報が参照できる。
Exchange (イクスチェンジ)という単語は「交換」という意味なので、「外人が英語を教えに来て、日本人が日本語を教えに行く」プログラムなのかと思っていたら、そうではなかった。
ホームページを見ると、『Work in Japan, Exchange cultures, Inspire through Teaching』 と表記されていた。これは意訳すると、『日本で仕事しよう。授業を通じて、互いの文化を交換しよう。』といった意味になる。
ああ、文化を紹介し合う(exchange)ということか、と理解できた。交換留学生(exchange student)の exchange とは異なるわけだ。

文化交換事業?
カナダ人女性は、しきりに「どうやって英会話を習ったんですか?学校で勉強したのですか?いつ勉強したんですか?」などと矢継ぎ早に質問してきて、私は閉口した。
同時に、話しながら彼女は、自分の生徒たちが授業にあまり熱心ではないと悩んでいる様子だったのが、強く印象に残っている。
その後も欧米人の登山客の一団と話したとき、十数人の青年男女は埼玉県から来た「英語教師」たちだと聞いて、「JETプログラムのALTか?」と言うと、「イェース!!」と元気一杯で返事していた。
そんなこんなで、JETプログラムに興味を持った私は当時から、youtube で「JET ALT]などと検索しては、在日ALTたちがアップした動画をよく観るようになったのだった。
ALTたちは、実に様々な動画をアップしていて非常に興味深くて、多分ALT同士での情報交換ツールとして youtube が利用されているようだった。
しかもそれは、日本にいるALTたちだけでなく、これからJETプログラムに応募しようと考えている海外の若者建ち向けへの情報提供ツールとしても活用されていることがよく理解できた。
つまり、JETプログラムの面接で聞かれたこととか、その模範的な答え方とか、言ってはいけない事など、要するに合格テクニックを伝授する動画などがたくさんあったことからも分かる。
また、日本中に配属されたALTたちが、各地方でどのようなところに住んでいるかを動画で紹介する『アパート・ツアー』はなかなか面白くて、意外にも立派なアパートに住んでいることにも驚かされた。これは、住居費は自治体の負担であるためらしい。

日本人先生の助手
さらに学校でどんなことをしているのか、動画を使って赤裸々に紹介していたり、仕事上や生活していく上での悩み事とか、日本の教育現場への提言などもテーマにしている動画もあった。
すでにこのプログラムが始って20数年近く経つのだが、始まりはどうもバブル期のジャパンバッシングへの対策が根底にあったようで、要するにアメリカの青年達を日本政府の金で優遇してご機嫌を伺う事業だったようだ。
それは、このJETプログラムの中身を見れば納得できる。ALT(外国語指導助手)には、母国語が英語で大学卒業者あるいは卒業見込みであれば、教職経験や教員資格などは一切要求していない。
渡航費、住居費、社会保険などは受け入れ側負担で、ALTの報酬は手取り約30万円。しかし、受け入れ側が実際に負担する経費はALT一人当たり年間600万円以上になるという。
年間4000人以上のALTが来日しているわけだから、この事業で年間およそ240億円の税金が使われていることになる。
しかも、更なる問題は、そのALTの質もさることながら、それだけ金をかけている割に期待される効果が非常に少ないのではないかということのようだ。
それは、ALTに日本語会話能力を求めていないため、使う側もほとんど英語でのコミュニケーションができないことから、有体に言えば、お客様としてしか対応できていない自治体がほとんどで、費用対効果は極めて小さいのが現状らしい。
これは、充分予想できる。
そもそも、この事業の趣旨の一つに、外人などいない地方に海外の青年を英語指導助手として送り込み、生の外人に接する機会を作り、外人コンプレックスや英語コンプレックスを軽減させる、という考えがあった。
外国語の教育効果などは二の次、三の次となり、それが証拠に、英語の共通テスト結果をみても相変わらず日本はアジアで劣等生であり続け、同じようなことをやっている南朝鮮の後塵を拝している。
夏休みなど、ALTが学校に行っても特にすることはなくパソコンでゲームして時間を潰す。それでも給料はしっかり支払われるので、youtube の動画でもその点は非常に「評価」しているALTたちだった。
逆に、8時に学校に行き4時には帰宅する生活が続くと、しだいにその単調な生活や孤独感に耐えられなくなってきて、希望して契約を延長していけば5年までALTでいられるにもかかわらず、1年で帰国するALTも結構いるようだ。
東京都は、2018年から全国に2年前倒しで小学校3年生から英語が「必修化」となり外国語活動と呼ばれる時間が割り当てられ、5年生からは「教科化」され英語が教科に加えられる。
小学生に英語を教える教員は養成されているのだろうか?
あの慎重な小池都知事が絶賛しているJETプログラムのALTたちと会話して、彼らに指示する立場になる教員は、それなりの英会話能力も必要になるはずだ。
「ALT 問題点 課題」などと検索すると、英語教育の専門家の報告やブログなどで実に様々な問題が浮き彫りになっている。
NOVAとかジオスとかECCなどの駅前留学が流行ったとき、英語教師の質が問題視されたことがあった。東南アジアを放浪するいわゆるバックパッカーたちが一時の金稼ぎで働いていたり、小児性愛者などや薬物愛好者や、単に外人好きの日本人女性のナンパ目的の外国人がはびこっていたりした。
英語教育の早期化で、中学に入学した時点ですでに英語嫌いになっている生徒が目立つと報告する、英語教育の専門家もいるようだ。
馬鹿みたいにカタカナ言葉を連発し、国際化だのグローバルだの騒ぎ立てて、英語英語と煽るのは異常事態である。
子供たちの勉強時間は限られている。大切なのは「優先順位」であろう。
外国語習得に欠かせない「母国語」をまずじっくりと覚えさせることは、決して回り道ではない。
ワイズスペンディング(賢い使い方)を強調する小池都知事が言う事、やる事がすべて正しいわけではない。都民ならずとも、これは国家の将来を左右する深刻な案件であると捉えるべきだろう。
小池都知事自身が非常に外国語や外人にコンプレックスを持った方なのでは・・。
最近そう思い始めている。