GOCCIのオトコヲミガク旅(w)

旅行記や、日常の面白い、或いはキレイなモノの写真を中心に
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「怖い絵」中野京子著、読んで見ました。

2010年10月30日 | *本*BOOKS*


「怖い絵」中野京子著、読んで見ました。



「怖い画」中野京子著、読んで見ました。ぶっちゃけ、絵画の本を借りて読むなんて海外旅行に出かけていなかったら有り得なかったでしょうね。

2002年に初めてヨーロッパに行って「ゴッホ」絵を目の当たりにし深く感動、それ以来「絵画」に興味を持つようになり、今では「美術館めぐり」をするまでになってしまいました。やっぱり旅って「男を磨き」ますね(w)

この本なんですが、ラ・トゥールの「いかさま師」って言う絵の表紙でやられちゃいました。まだ、絵とか全然分からないころ(今でもですが・・・・・・・)、 ルーヴル美術館で観て、その時の印象が強烈で鮮明に記憶に残っていました。

内容は「いかさま師」の様に意外と「分かりやすい怖さ」
だけではなく、時代背景や作者の境遇、当時の知識etc を理解しなければ決して分からない様な作品も多く、とても興味深く読み進めました。



そのなかでも、印象に残った作品を数点PICK PUして見ます。



まずは、エドガー・ドガ作の「エトワール、又は舞台の踊り子」です。この絵は実物は観た事ないんですが、「美の巨人たち」「NHK プレミアム8」とかで取り上げられていて、馴染みのある絵なんです。

この絵・・・・・・・・、普通に観れば「美しいバレリーナが描かれている絵」で終わってしまうんでしょうが、実は舞台の書割の影に佇む「黒服の男」が肝なんですよね。当然、それらの番組でも「黒服の男」ついては彼女らの「パトロン」であると解説されていましたが・・・・・・・・・・・

当時の「バレエ」の置かれた状況を知ると、絵の見方が随分違ってきちゃうんですよね。現代の感覚だと「高尚な芸術」で、バレエをやっている少女なんかは「裕福な家庭の子供」・・・・・・・、なんていう捉え方が普通だと思うのですが・・・・・・・・・・・

どうやら19世紀半ば頃は「オペラ座は上流階級の男たちのための婦館」であり、「踊り子=娼婦」のような状況との事、TVを見ていた時は、真に芸術を支援する「パトロン」
を連想していたのですが・・・・・・・・・・、時代の背景を知れば、絵の見方もかなり変ってきますね。










次の作品はブロンツィーノ作の「愛の寓意」です。まずは、大きく描かれた美しい主役の二人に眼が行くのですが・・・・・・・・・・・、小さな男の子の背後の寂しげな表情の少女・・・・・・・・、よく見ると首が妙に長かったり、手の付き方が逆だったり、下半身が獣であったり・・・・・・・・・、単純に怖いです。

絵の中の人物や、さまざまな物はそれぞれ「快楽」「嫉妬」「善・悪」「愛欲」「時」等を象徴していて、少女は「欺瞞の象徴」との事・・・・・・・・・・、背筋が寒くなるような不気味さですね。

あと、この絵の怖いところが主役の二人なんですね、「ヴィーナス」「キューピッド」を描いた「母子像」のはずなんですが、キューピッドの右手やヴィーナスの恍惚の表情・・・・・・・・、この「エロティシズム」を感じさせる描写が本能的に「アブノーマル」な違和感を生じさせる・・・・・・・・・・、どうやらこの辺りが鑑賞の肝のようですね。










次は、ブリューゲルの「絞首台の上のかささぎ」です。この絵は絞首台の下で農民たちが踊り楽しんでいる様子が描かれているのですが、中世のヨーロッパにおける、戦争、飢餓、ペスト、死刑、拷問etc で死が身近すぎ、「死に麻痺してしまった人々」の振る舞いっていう捉え方が出来るのですが・・・・・・・・・

絞首台の上に小さく描かれている「かささぎ」が意味するものこそが、この絵を理解するためのツボのようです。

この「かささぎ」という鳥、日本や中国では「縁起の良い鳥」
、韓国に至っては「国鳥」とされているほど「ポジティブ」なイメージの鳥なんですが、ヨーロッパでは「偽善の象徴」「悪魔の鳥」と非常に「ネガティブ」な存在であり、そこから派生して「密告者」の譬えに使われていたそうです。

中世ヨーロッパで「密告者」の犠牲になったのが、「魔女狩り」に遭った罪のない人々・・・・・・・・・、
一説には4万人が犠牲になったとも、この絵は「かささぎ=密告者」
の前で明るく振舞い、自分たちは魔女ではない、潔白であると証明している様を描いてもいると言うことの様です。風俗や時代背景が分かってくると色々な物が浮かび上がってきますね。










最後は、この本の表紙に使われている、ラ・トゥールの「いかさま師」です。この絵には何の説明も要りませんね。見ての通りの解釈で間違いないと思います。中央の女性の表情がたまらないですね。



実はまだまだ紹介したい作品が沢山あるのですが、キリがないのでこの辺で(w)、中野京子著の「怖い画」なんですが、絵に少しでも興味がある人ならば「必読」のような気がします。とても面白かったです。



                   


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