家づくり、行ったり来たり

ヘンなコダワリを持った家づくりの記録。詳しくは「はじめに」を参照のほど。ログハウスのことやレザークラフトのことも。

古屋の良さ--超低低の実力

2004年10月30日 | 我が家のスペシャルな事情
 我が家が壊さずに残す、築55年超の古屋部分について記録しておきたい。

 55年前(1950年手前)というと、戦後間もない時期。物資は不足していたと思う。それでも祖父は建てた。とても丁寧な仕事をする大工の棟梁に頼んだという。床の間がある10畳の和室と広縁だけだが、それだけで家一軒分くらいの資金をつぎ込んだらしい。金持ちの家でもないのになぜそこまでのことをしたのかは、いまとなってはよくわからない。

 当時のことなので純和風の造り。建具を含めて無垢の材料しか使っていない。断熱とか、気密とかそういう思想のない時期の家なので、超低気密・低断熱である。
 立柱方式なので、床下は環境面では家の外部と同じ。時代劇で忍者が忍び込むのと同じイメージでもぐりこめる。まさに前時代の家である。
 
 外部に面した戸も当然木製。使ってあるガラスはなんと手延べガラス。横の方から見るとわずかに波打っている。骨董的価値を見出してくれる人もいそうだ。
内部の障子戸は雪見障子。下の腰板は柾目の幅広な板が使ってある。凝ったつくりではないものの、ちゃんとした職人が腕をふるって作ったことがわかる。

この家は、無垢材しか使っていないので化学物質とは無縁。さらに、スカスカなのでカビや腐朽菌とも無縁。シックハウスとは対極にある。いつも乾燥しているので材の状態もいい。
軒が深く、きつい日差しをさえぎる。風通しもよく、夏は涼しい。
低低住宅のことをけなして、夏暑く冬寒い家などという人間がいるが、この超低低住宅でも夏は涼しい。ウソはつかないで欲しいと思う。

冬は間違いなく寒い。住むという意味では冬はつらい。
ただ、ここは普段、客間として利用しており、家人が寝るわけではない。
正月は長火鉢を囲んで家族でお屠蘇を飲む。炭火にかけた鉄瓶から静かな湯気の音がして、なんともいえないムード。
手元にも火鉢を用意する。時折、「灰ならし」で整えながら炭の火を眺めているとなごむ。この「日本のお正月」をあじわう空間は捨てられない。

人があつまって、たくさん水蒸気が発生しても結露などまったく気にする必要はない。

しっかりと、まっとうに作られたものは価値がある。「低低」をひとくくりにして貶める言説は乱暴だと思う。