明日から、ここミュンヘンでオクトーバーフェステバル(ビール祭りが行われる。バイエルン州最大のお祭りだ。が、私はK氏と一緒にインスブルックへ向かう。ミュンヘンからU-バーンに乗ってトンネルの中を走ったが、ウトウトしたと思ったら明るい郊外を走っていた。途中シュタルンベルク湖(周囲約50km)の畔の小さなホテルに泊まった。K氏は絵を画きに出かけた。私は一人でカメラを持って湖へ行った。湖はそれ程大きくない。久しぶりにノンビリした。
翌日再び電車に乗ってガルミッシュへ向かった。ガルミッシュは小さな都市であった。町並みは古い建物ものと新しい建物が幾分別れて建っていた。落ち着いた町並みを見せていた。3時間ほどを過ごしてミッテンワルドへ向かった。この町は山間にある小さな町で南西方向に大きな岩山があるというのでケーブルカーに乗って出かけた。頂上へ着くと観光客が沢山いた。チョットした町並みを歩くとバイオリンを並べた店があった。中へ入ると「あなたは日本人か」と問われた。そうだというと「チョット聞いてくれ」というので何か特別なことがあったのかと思い聞くことにした。
話はこうこうである。といって店主が話し出した。最近日本人のバイヤーがやってきた。彼はバイオリンのことを全く知らないようで音も試さずにここに置いてあるものを全部買いたいという。店主にしてみれば全部売れるのは誠に嬉しいことであるが、職人が精魂込めて作った作品を弾いて見もしないで買いたいというのは納得が出来なかった。それでなぜそのような買い方をするのかと問うと、バイヤーは日本人の若いバイオリニストがどこかの国際コンクールで優勝した。その人が入っているバイオリン教室に大勢の入学者が来ると予想されるのでたくさん必要になるからだ、といった。この店ではそういう売り方はしないと断ると、バイヤーは作ってくれればもっともっと買う約束をすると言った。結局店主は折角の話だがと丁重に断ったという。
「日本人は音楽や楽器についてまだあまり深い理解を持っていないようですね。バイオリンに限らず楽器は個々にいろんな特色を持つものだから自分に合ったものを買うように希望したい」
私は文化程度の低さを思わず詫びてしまった。そう言えばウィーンでもこんな話を聞いたことがあった。日本人の音楽留学生は授業料が無料だという。なぜかというと発展途上国からの留学生に対して音楽をりかいしてほしいので無料にしているという。ヨーロッパ人から見ると残念なことではあるが、経済大国と言っても文化的にはまだ幼児期だと思われているらしい。
明日はいよいよインスブルックへ入る。何が待っているのだろうか。
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