コロナワクチン接種後に女性死亡 愛知県医師会が調査結果発表「その場でアドレナリン注射をすべきで体制に問題があった」
2022/11/17 17:45
(CBCテレビ)
新型コロナワクチンの接種後に体調が急変し、愛知県愛西市の女性が死亡した問題で、愛知県医師会は17日、直ちにアドレナリンを打たなかった体制に問題があったとの調査結果を発表しました。
CBC
〈愛知県医師会が発表した時間経過〉
14:18 ワクチン接種
14:25 咳が出るため車いすで救護室へ移送
14:29 医師初診
顔面蒼白、呼吸苦、皮膚粘膜所見なし、消化器症状なし、聴診上喘鳴なし
Sp02(酸素飽和度)60% 酸素投与5L、救急要請
14:30 泡沫状の血痰を大量に吐く
14:34 意識レベル低下、呼吸停止、心停止、CPR(心肺蘇生法)開始
14:36 AED装着、ルートとれず、アドレナリン使用できず
14:40 心拍再開、自発呼吸あり、血圧:73/57、脈拍:90/分
14:42 心肺停止 救急隊到着
14:45 挿管を行うが、食道挿管で断念
14:55 救急車同乗
15:15 高次病院到着
〈愛知県医師会 医療安全対策委員会報告〉
・死亡診断書の病名として、急性左心不全、致死的不整脈とされており、死亡後のAi(死亡時画像診断)からは高度な肺うっ血の所見が認められた。初診時に皮膚症状、消化器症状なく一般的なアナフィラキシーで認められる所見がなかったこと、及び泡沫状の血痰を多量に排出したことなど急性肺水腫を想定する症状であった。観察室に移動するときに、接種前から実は具合が悪かったということを訴えられており、ACS(急性冠症候群)やARD(急性呼吸促迫症候群)をきたしうる病態も鑑別として考えられる。ワクチン接種後であったことからアナフィラキシーの存在は強く疑われた。
・アナフィラキシーショックであった場合には、最重症型であったと考えられる。最重症型のアナフィラキシーは、非常に稀な病態であり、致命率も高い病態である。残念ながら病理解剖がされていないこともあり、最終的な病態の解明には至らなかった。
・咳の症状が認められてから約4分後に、接種業務に当たっていた医師が呼ばれ、その時にはすでに顔面蒼白、呼吸苦があり、Sp02が60%に低下していた。急遽5Lの酸素投与を行い、救急要請が行われた。病態を判断する間も無く、泡沫状の血痰を大量に排出。意識レベルが低下し、呼吸停止、心停止となっている。直ちに心肺蘇生法が開始され、静脈確保を試みるができず、アドレナリンの静注ができなかった。
・救急対応に当たった医師が、問診しワクチンを打った医師ではなく、状況の把握が遅れた事は考えられるが、アナフィラキシーを想定しての早期にアドレナリンの筋注は行われなかった。アナフィラキシーが疑われる場合は、診断に躊躇することなくアドレナリンの筋肉注射をずべきであった。今回の事例では、看護師が女性の体調変化に気付いた時点で救護室に運ばず、その場でアドレナリンの筋肉注射をすべきで体制に問題があった。
14:42頃に救急隊が到着。気管挿管を試みるが、泡沫状の血痰が多量の為できなかった。
14:45、救急車に同乗し、15:15に高次病院到着となった。高次病院において救命措置が行われ、8回のアドレナリンの静注が試みられたが、残念ながら救命し得なかった。
・早期にアドレナリンを打てなかった要因にはシステム的な問題を含めいくつか考えられる。ワクチン接種担当医師としては、ワクチン接種会場においてアナフィラキシーの発生を考慮して、発生時の準備を怠らないことが重要である。アドレナリンの発生を考慮して、発生時の準備を怠らないことが重要である。アドレナリンを即座に打てるように接種会場の救急備品の準備、配置をするのみでなく、使い方も周知しておく必要があったと考えられる。
・医師個人の問題と捉えるのでなくシステム的な問題もいくつか考えられる。医師のみでなく会場のスタッフ全員にアナフィラキシーの発生を予期する様に協力体制を整える必要があり、アナフィラキシーを常に疑い、発生時には迅速にアドレナリンを投与できる様に協力体制を確認しておく必要があった。また、急変時にも全員が患者のまわりに集まり協力できる体制を確認し、指揮する人の役割を明確にしてあらかじめ確認しておく必要があったと考えられる。ただ、アドレナリンを準備しておけば体制が十分であったという事では、突然起こるアナフィラキシーには対応出来なかったと考えられる。この様なシステム的な対応ができていて初めてアナフィラキシーの患者を救命し得たものと考えられる。
・残念ながら本事例は、最重症型であった可能性が想定され、医師が呼ばれた時点においてアドレナリンの投与が行われたとしても救命できなかった可能性が高いと考えられる。
(以上、愛知県医師会の発表文より)