奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その688)

2018-07-13 08:15:00 | 奈良・不比等
「私物化される国家~支配と服従の日本政治(中野晃一著・角川新書2018刊)」を読んだ。中野晃一(なかのこういち1970生れ)氏は、東大(哲学科)卒で、オックスフォード、プリンストン大学を経て、上智大学(国際教養学部)教授である。専門は比較政治学、政治思想とのこと。-----
中野晃一氏は現代日本のリベラル派の超エリートの一人と目されており、「私物化される国家」では、温厚で従順な日本国民がいとも簡単に洗脳されて支配され服従する生活を送らされているのは何故かと云うことについて、歴史的に解き明かして呉れている。然しながら、そこから脱してもっと自由で充実した生活を獲得するにはどうすれば良いかについては教えてくれていない。リベラルエリートの人に多く見られるところの些(いささ)か冷たい、庶民への上から目線が至る処で鼻に付くのだから、どうしようもなく救われない。-----
最終章“リベラリズムは息を吹き返すか”では、次のように述べている。「安倍政権論としての私物化される国家についての論考でありつつも、戦前から戦後日本に長らく連なって来た保守反動政治の系譜やアンチリベラルなオリガーキー・小数寡頭支配が世界で同時代的に拡散する中の、対米追随の経済安保政策の展開についてのより広い視野からの論考であることも目指した。それは、国家の私物化は安倍のみによってなされたものでなく、戦後政治の流れの中、とりわけ冷戦後のグローバル資本主義時代に入ってから世界同時進行的に推し進められているからである。」-----
リベラルエリートも戦後健闘しては来たのだが、保守陣営から次々と切り崩されて、人材の枯渇をきたしていると云うか、象牙の塔やマスメディアに安住して、理想の社会を上から目線で説いていただけであったがために、保守の飴と鞭に結局は降参してしまっているのだろう。多くの選挙民も余りに従順なために疑うと云うことを知らないできたのだと、諦めモードになっているのは残念だが、冷戦終結後の新自由主義の弱肉強食の世界は行き着くところにまで行くしか解決はしないのだろうと思わせられた。
コメント
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