劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

新国立の「さまよえるオランダ人」

2022-01-27 11:14:29 | オペラ
1月26日(水)の夜に新国立劇場で、ワーグナーのオペラ「さまよえるオランダ人」を見る。当初予定されていたキャストはほぼ全滅で、外国からは来ずに日本人だけのキャストとなった。観客の入りは薄く、7割程度。新国立劇場では今でも来場者カードを毎回書かせているが、いったいいつまでやるのだろう。濃厚接触者の調査も保健所はあきらめ始めているし、ほかのコンサートでも購入時の履歴から調べることにしたようだし、新国立だけいつまでも続ける必要はないようにおもう。

ワーグナーの作品はどれも長いので見るほうも大変だが、「オランダ人」は初期の作品なので、長くはあるが、7時に始まり25分の休憩をはさみ10時に終了した。これ以上長いと途中で腹ごしらえしたくなるが、現在は食堂がほとんど閉まっているので、やはり大変だ。

ほとんど日本人歌手となったので、それほど期待しなかったのだが、ゼンダ役の田崎尚美の声がしっかり出ていて、思わぬ喜びだった。日本人のソプラノであれだけしっかりした声を出す人はあまりいない気がするので、今回の一番の収穫だった。船長役の妻屋秀和はいつもながら安定した歌唱。

ほかにエリック役の城宏憲とマリー役の山下牧子も、それなりの水準でこれなら日本人キャストも捨てたもんじゃないと感じさせた。問題はタイトルロールのオランダ人役を歌った河野鉄平で、声に芯がなくてふにゃふにゃした歌いっぷりに加えて、ディクションも悪く、全体のバランスを著しく損ねていた。

前半の1幕は、妻屋と河野の二人が主に歌うのだが、河野の声がしっかりと出ていないので、ただ長くて退屈なだけ。おまけにオーケストラが東京交響楽団で管が弱いせいか、序曲がえらく長いと感じさせられた。まるで下手な歌舞伎で「まま炊き」を見せられたような気分。

後半の2幕、3幕は田崎が出てきて歌うので、舞台も引き締まり、退屈しなかった。いろいろと制約はあるのだろうが、歌手を決めるときにはちゃんとオーディションをして、しっかりと歌えるのかどうか確認してほしいと思う。オペラ団体からの推薦だけで決めるなんてことはないと思うのだが、今回の例などを見ると、やはり実力以外のものがあるのではないかと邪推してしまう。

コロナのために、10時から食堂では食べられないので、家に帰って食事。作っておいた、けんちんうどんで暖まった。