2007年の色は、ピンク、ピンク、ピンク
大晦日の夜をN響の『第九』と共に過ごし、元日はウィーン・フィルの「ニューイヤー・コンサート」を楽しむ。ここで重要なのは、『第九』と「ニューイヤー・コンサート」のどちらが欠けても、晴れ晴れした気持ちでお正月を迎えられないこと(旅行とかに出かけているときは別ですが)。自分にとって、ウィーン・フィルの「ニューイヤー・コンサート」は、(箱根駅伝に往路と復路があるように)N響の『第九』の後を受けて演奏されるからこそ意味が生じる、大晦日に元日と、二夜にわたって繰り広げられる一大イベントになってしまったようです(子供の頃は、「紅白」と「隠し芸」が暮れと正月のアイテムでした)。来年は、デジタル・ハイビジョンで見たいものですが・・・
今年の指揮はズービン・メータ。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とは気心の知れた仲ということもあり、楽しいマチネ(現地時間)になりそうな予感・・・
しかも去年一年間で、こちらもロック体質からクラシック体質に変わってしまったせいか、例年以上にコンサートへ期待する気持ちも強くなっています。今年は、会場のどこかに千秋&のだめがいるかもしれないし、青緑色で頑張っている黒木君も、ピンクに彩られた黄金のホールでウィンナ・オーボエの音色を聴けば、再びピンクに染まって、ターニャとワルツを踊る仲に発展してくれるかも?
そうなんです。コンサート会場となる〈楽友協会 黄金のホール〉を飾る美しい花々は、毎年イタリアのサンレモから贈り届けられるのですが、今年のテーマ色は何とピンク! ということで、ただでさえ明るく陽気なシュトラウスのワルツも、「ピンク」に染まる? NHKの特設スタジオも、ピンクを基調に彩られていました。
楽友協会 黄金のホール
〈黄金のホール〉は残響時間が2.1秒と長く、1824年に創立された歴史あるオーケストラは、今日までかたくなに伝統を守りながら演奏を続けています。コンサート・マスターを除く全ての楽器を楽団が所有しているとか、弦楽器の独特の弾き方とか、マーラーが常任指揮者になったときの楽員の反発とか、これまで数々の逸話を残しました。NHKは、コントラバスの配置やホルンの構造の違い(オーボエも、ウィンナ・オーボエといって、独自のものを使っているとか・・・)など、丁寧に解説してくれました。1997年、女性ハープ奏者のアンナ・レルケスがメンバーに採用されてから、女性楽員の数も少しずつ増えているようです。(コンバスの桜ちゃん、がんばれ?)
時代は変わる?
第一部では『ワルツ〈調子のいい男〉作品62』と『ポルカ〈水車〉作品57』(ヨーゼフ・シュトラウス)、『妖精の踊り』(ヘルメスベルガー)が素晴らしかったです。〈水車〉の演奏の際に挿入された映像は、余計な気もしますが、絵そのものは良かったので、例えばDVDになったとき、マルチ・アングルで発売されてくれないかしら? 用意したDVD-RWの調子が悪くて、第一部の演奏が再生できなくなっちゃった・・・休憩時間に再度初期化して、第二部は無事に録画できました。
第二部の注目曲は、まず『ワルツ〈レモンの花の咲くところ〉作品364』(ヨハン・シュトラウス)。この曲に合わせて何か出てくるかと思っていたら、シェーンブルン宮殿の〈大温室〉が・・・鉄骨とガラスで作られた建物は産業革命の申し子ともいえ、エッフェル塔にも匹敵する19世紀末の芸術品。いったいどうやってガラスを取り付けたんだろう? メンテナンスは?
『ワルツ 〈ディナメーデン〉 作品173』(ヨーゼフ・シュトラウス)で、恒例となったバレエが、ハプスブルグ家の夏の離宮〈シュロスホーフ〉を舞台に、ウィーン国立歌劇場バレエ団とウィーン・フォルクスオーパーバレエ団のメンバーによって演じられました。
第二部の白眉は、ヨハン・シュトラウス父が名バイオリニストを偲んで作った『エルンストの思い出』。オケの各セクションのかけあいで大変盛り上がりました。特に、ピッコロの超絶ソロには、メータも途中で握手を求めるほど! オーボエに続いてフルートが歌い、ファゴットやホルンやペットに打楽器が合いの手を入れ、コンサート・マスターの軽妙なヴァイオリン・ソロがあったかと思うと、繊細にチェロが奏でるといった具合・・・変幻自在で息の合った演奏は、まるでジャム・セッションのような楽しさに溢れていて、この曲の間にオケ全体がピンク色に染まりました。音楽って、こんなに楽しいものだったんだ~
Bravo!!!
そしてコンサートは、リストの『半音階的大ギャロップ』をモチーフに使った『狂乱のギャロップ 作品114』(ヨハン・シュトラウス父)で、一気にフィナーレに向かいました。物凄い速さなのに、一糸乱れず見事なアンサンブルを奏でるウィーン・フィル。さすが、「世界に比類がない」と言われるオーケストラの本領発揮といったところ!
アンコールには約束事があって、必ず『美しき青きドナウ』(ヨハン・シュトラウス)と、『ラデツキー行進曲』(ヨハン・シュトラウス父)が演奏されます。『美しき青きドナウ』では一端振り上げた指揮棒を降ろして指揮者が挨拶、最終曲の『ラデツキー行進曲』では、観客全員が演奏に合わせて手拍子を打ち、会場全体が一体化して幕が閉じられます。
シェーンブルン宮殿の〈大広間〉を舞台に、バレエが披露されて・・・
ラデツキー行進曲で一つになる
ここからは、第二部です。ナナ・ムスクーリのライブDVDで、1月1日を締めくくることにしましょう。2002年7月13日にドイツのストットガルトで開催された〈 Jazzopen Festival 〉、ナナ・ムスクーリは「ベルリン・ラジオ・ビッグ・バンド」と共演して、その昔クインシー・ジョーンズにNYに招かれた際に録音したアルバム、『ナナ・ムスクーリ・イン・ニューヨーク』の曲を歌ってくれるのでした。題して、「nana swings」!
〈ベルリン・ラジオ・ビッグ・バンド〉は、個々のプレーヤーが皆ソロを吹けるテクニシャン揃い。大きな味方を得て、ナナも思い切りスウィングします。
DVDは16×9のスクイーズ高画質収録(ジャケットには4:3と表記されているが間違い)。音声は5.1ch ドルビー・デジタル or ステレオ。ホームシアターで、じっくり味わいたい・・・ 最後はお年玉です。『のだめカンタービレ』の音楽監修に携わったオーボエ奏者、茂木大輔さんの〈クラシック虎の巻〉と呼びたい名著『くわしっく名曲ガイド』を読んで、今年の目玉(お年玉)は、これしかない~と思いました。これとは、アダム・フィッシャー指揮による『ハイドン 交響曲全曲』C D!
ハイドンがくれたお年玉、交響曲全104曲・・・
ハイドンは「交響曲の父」と呼ばれていますが、私は殆ど聴いたことがありません。100曲以上も交響曲を作っていたなんて・・・全く知りませんでした。でも、単に数多く作曲しただけでなく、茂木さんのようなプロの目から見ると、「ハイドンの交響曲の全ては前衛的で、実験的。新鮮で驚きに満ちている。黄金の彫刻のようだ」そうです。
茂木さんが「未知の宝」と名付けたハイドンの交響曲全曲を録音した閑人?指揮者が何人かいますが、アダム・フィッシャーの33枚組C D(輸入盤)は、相場?の半額以下の1万円と一番安く、しかも入手し易いこともあって、一生楽しめるスグレモノとして、茂木さんが太鼓判を推しているC Dです。銀座の山野楽器では1割引で売られていたので、約9100円。C D一枚あたりの単価は何と275円。交響曲1曲あたりだと、わずか87.5円。これを安いと言わずに何が安いといえるのか? しかも、安かろう悪かろうではなくて、名曲揃いですぞ~!
三日に一曲聴いたとしても、全曲走破するまで一年近くかかります。気長にゆっくり、ハイドンさんと交際したいと思います。それでは、今日はこのへんで。
皆さんが良い初夢を見られますように・・・
指揮者の「使用前と使用後」の写真に涙してください・・・