ヴァイオリン:シン・ヒョンス ピアノ伴奏:佐藤卓史
ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第5番「春」
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ
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ミルシテイン:パガニニアーナ(無伴奏曲)
ブラームス:ヴァイオリンソナタ第3番
(アンコール)
クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ・カプリス 、愛の悲しみ
マスネ:タイス の瞑想曲
韓国期待の新鋭ヴァイオリン・ソリスト、シン・ヒョンス、新潟に登場!「これは即ソールドアウトだな…、出遅れたか…。」と思ったのだが、一時「全然売れてない!」と言う情報も入り、「えっ、嘘?」と言う中、足を運んだ本コンサート、結局は9割近い入りで、とりあえず何より。
前から5列目中央に陣取っていると、ヒョンスさん、颯爽と黒ドレスで登場。なんかイメージと違って長身というか、大柄な事実にちょっとビックリ。(ピアノの佐藤卓史さんより大きかったりして…。)
オープニング、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第5番「春」。第一感、使用楽器のガダニーニを良く鳴らしているな…という印象。春近し…という感じで気分良く聴くことができた。しかし、本領発揮はこれから。サン=サーンスの序奏とロンド・カプリチオーソになると一転、激しい演奏で「うおぉぉ…。」という感じでびっくり。
第二部、鮮やかなクリムゾン色のドレスに着替え、ヒョンスさん再登場。ミルシテインのパガニニアーナ、ブラームスのヴァイオリンソナタ第3番は緊張感を強いるテンションの高い演奏、弓の糸が何度か切れる熱演振り。正直、ブラームスのヴァイオリンソナタでは、ちょっと荒削りかな…と思った瞬間もないわけではなかったが、ダイナミックな演奏と美しい演奏姿(なんと言ってもヴァイオリン・ソリストにはこれが重要)には「魅せてくれるなぁ…。」という感じで圧倒させられた。演奏が終わった瞬間「ふぅ…。」とため息。
アンコールはサービス満点という感じで3曲。緊張感は消え、ゆったりと聴かせてくれて幕となった。
独特の緊張感を強いる演奏は好き嫌いが分かれるかな…と言う気はしたが、ダイナミックな演奏に加え、豊かな表情、大きなアクションは天性のものを感じた次第。私の好きな自転車ロードレース界では「エースは生まれながらにエース」という言葉があるが、その言葉を借りると、シン・ヒョンスさん、まさに「ソリストは生まれながらにソリスト」という感じ。
演奏中、厳しい表情のヒョンスさん、演奏が終わった瞬間に見せるはにかんだ笑顔(ちょっと堀北真希さんに似ている感じ)との落差が、また、ファンにはたまらないんだろうな…と思った次第。(私も今日からファンになっちゃいましたけどね。)
会場のだいしホールは正式な音楽ホールではなく、響きはデッド、伴奏のヴェーセンドルファーの音はこもり気味で、ヴァイオリンの音と分離気味になってしまっていたのはちょっと残念だったが、ソリストとしてのスケールの大きさ、これからの可能性…を十分感じ取ることが出来、個人的には大満足のリサイタルだった。
今度、いつ新潟に再登場してくれるか分からないが、再登場の際には東京交響楽団をバックにヴァイオリン・コンチェルトを聴いてみたい…そんな期待を抱かせてくれた。いずれにしても、これからのヒョンスさんの飛躍に期待したいと思う。(って、そんなこと言わなくても間違いなく超一流ソリストになると思うけど…。)