箱庭の様な街を走り回っていた。
自分でも、”夢だって”分かってる街だ。
狭い街並みはどこかノスタルジック。
何の為に走り回ってるのか?
目的は?
往き行けば、
風景が流れ荒涼とした野原になる。
起伏がある野を越えて往くと、
川が流れていた。
恐る恐る岸に近付くと、
何かが泳いでいる。
大きな生物だ。
白いアザラシの様な海獣が、
泳いでいる。
その生物が、向こう岸を登り始めたとき、
気が付けば、それは人間だった。
白いYシャツを着た人間だった。
濡れたYシャツの男は、岸を登りきると、
何故か現れた床屋に入っていこうとする。
驚いた事に、古い床屋がそこにあった。
私は、
見てはいけないものを見てしまったと感じた。
奇妙なものを見たからというよりは、
それを見たという事自体が、
畏れるべき事と感じたからだ。
逃げる様に、その場を後にする。
先ほど下ってきた斜面を登っていくと、
シェルターの様な扉があった。
扉を開けると、そこはとある居住空間だった。
スーパーや居住区が混在するコロニーだった。
そこで、ある男に呼び止められる。
上の世界で見てきた事について、だ。
私は無視を決め込んだ。
私たちの前では、
スーパーの店長と思しき男性が、
せっせと品出しをしていた。
彼の姿を見ながら、会話が始まる。
「お前は上の世界で何を見たのだ。」
「・・・・・・・・。」
「見た事を、話せ。」
「なぜ、話さなければならない。」
「見たのだな。」
「知らない。」
「お前が見た事は、大変なモノなのだ。」
一瞬、何がそんなに重要な事か判らなかった。
アレ、がか・・・・?
「見たのだな。」
「知らない。」
「・・・・・。お前がアレを見たとすると、恐ろしい事が起こる。」
「恐ろしい、事?」
「正直に言うんだ。」
「・・・・、何を。」
「どこまで見たんだ。」
「・・・・・・・、床屋、だ。」
「・・・・!そこまで見たのか!」
「それが、どうした。」
「恐ろしい事になる。」
「・・・・・・・。」
「何故なんだ!」
「・・・・・・・。恐ろしい事になる。この先、何か良くない事が起こるたび、お前は今日見た事が原因で良くない目にあったと認知するのだ。そしてこの事をずっと思い続けるのだ。」
恐ろしい事だ。