しげる牧師のブログ

聖書のことばから、エッセイを書いています。
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朝の露 <あなたの息子です>

2023-10-06 | ヨハネ福音書
「イエスは、母とそばに立っている愛する弟子を見て、母に『女の方、ご覧なさい。あなたの息子です』と言われた。」(ヨハネ19:26新改訳)

四福音書に出ている十字架の光景のうち、もっとも詳細(しょうさい)な記事はヨハネのものであろう。それは彼がマリアたちと共にイエスのいちばん近くにいたからにちがいない。たぶん最初はきびしく見張(みは)っていたローマ兵たちも、午後になると、女性や群衆の何人かが十字架のそばに近寄(ちかよ)ることを黙認(もくにん)したと思われる。▼母マリアにとり、イエスは「腹を痛めて産(う)んだ息子」にちがいなかった。しかしその悲しみも忘れ去るほど厳粛(げんしゅく)な空気が、あたりを包(つつ)んでいた。ふつうの死であれば、「お母さん」とか「ママ」と呼びかけるのに、この息子は「女の方」と尊敬の念をこめ、マリアに語りかける。▼万物をあがなう「なだめのそなえもの」としての死が今や完了しようとしていた。だが主イエスはマリヤの将来(しょうらい)も決して忘れたまわない。「あなたの息子がそばにいます」と仰せられたのである。こうして愛する弟子ヨハネはマリアを引き取り、生涯その世話をした、と言い伝えられている。▼まもなく、イエスは万物と人類の審判者として、私たちの前に立たれる。だがそれは同時に、ひとりひとりの地上生涯をつぶさに見つめ、関心と愛をもって見つめてこられた審判者としてである。私たちの家族、隣人、すべての地上における生活、あり方を主は無視されることはない。人はキリストのご関心が自分の人生のすべてのすべてにわたっていたことを知り、驚嘆(きょうたん)のまなざしをもって御子イエスを見上げることになる。