「おまえは自分が作ったものと財宝に拠り頼んだので、おまえも捕らえられ、ケモシュはその祭司や首長たちとともに、捕囚となって出て行く。」(エレミヤ48:7新改訳)
モアブ民族は長い間平和のうちに暮らしていて、敵に攻められることがなかったようだ。しかし今度ばかりはそうも行かず、バビロンのためひどい目に会う、とエレミヤは預言し、そのとおりになった。▼彼らの罪は大きく分けて三つあった。ひとつは心の高ぶりである。親戚関係(モアブの祖・ロトはアブラハムの甥)にあるイスラエルに冷たくし、その苦難や滅びのときは助けるどころか侵略者に加担したのだ。第二は真の神を信じないでケモシュという偶像を拝み、小さな子供たちを火で焼くという、恐ろしい風習を取り入れた。第三は財宝をためこみ、まことの神ではなく富を頼りにしたこと。それを知ったバビロン軍が黙っているはずはない。モアブは高い所から引きずり下ろされ、持っていた財産を全部奪われ、バビロンに捕囚として連れて行かれた。▼高慢不遜(こうまんふそん)な生き方は必ず報いを受ける、モアブ民族はその典型となったわけである。ただし彼らは永遠にほろびる、というわけではなく、神のあわれみによって回復するとも預言されている。「しかし終わりの日に、わたしはモアブを回復させる。―主のことば。」(エレミヤ48:47同)
ここに挙げたモアブの三つの罪を全部否定し、まことの神への信仰をつらぬいたモアブ人が一人いた。そう、ルツである。彼女はベツレヘムの女性ナオミに出会い、イスラエルの神こそ唯一、まことの神であることを知った。▼ルツはこうして自分の民族・モアブを離れ、その神を捨て、貧窮の生活をもいとわず、ナオミについて異国の地ベツレヘムにやって来た。旧約聖書でもっとも美しい物語といわれるルツ記にそれらが書かれている。そして彼女はユダヤ人ボアズの妻になり、やがてその四代目にダビデが生まれたのである。つまり、ダビデ王の曾祖母はモアブ人ルツなのだ。▼真の神に対するほんとうの信仰を抱くなら、民族も出自も関係なく、人は驚くべき祝福にあずかることができる。ルツの一生はその証明でもある。