「当世源氏物語」(谷崎潤一郎訳 源氏物語風)
ちらし
「住まいのイシダ」様にお伺いした時のことでございます。店長の后様はちらしの印刷にお忙しいご様子でした。
刷り上ったものを眺めておられた店長の后様は、突然慌てたご様子で、
「と、止めまする!い、印刷機を止めまする!」
と叫ばれながら印刷機のところへ急いで行かれました。そのご様子に驚いた女官のF井は店長の后様にお伺いしました。
「いかがなされました?お后様」
店長の后様はちらしをお示しになり、言われました。
「このちらしには価格が入っておりませぬ」
「なな、なんと!」
女官のF井も大変驚いておりました。
「いかがいたしませう。もうだいぶ刷ってしまいました」
店長の后様は大変お困りでしたが、女官のF井もこれといった思案はなく、
「これは笑ふしかありませぬ」
と、なんの生産性もない返答をしておりました。
「いかがでせう?そのままお配りになれば。この物件はいくらでせう?と問い合わせがくるかも知れませぬ」
わたくしの意見はただ鼻で笑われただけでございました。
いかほどか あかさず配る それもまた
人の興味を あおるものかな
店長の后様が社長の帝のお叱りを受けておられないか心配でございます。
「桜」
桜咲く 見る人もなく 桜散る
誰しも未だ 心は晴れず
蔵
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