ひとしれず おもへばくるし くれなゐの すゑつむはなの いろにいでなむ
人知れず 思へば苦し 紅の 末摘花の 色に出でなむ
よみ人知らず
人知れずあの人を思っているのが苦しい。紅色の末摘花のように、思いを表に出してしまおう。
相手には伝えない秘めた恋の歌が続いていましたが、いよいよ恋情を抑えきれず、思いを伝えようという歌の登場です。「末摘花」はベニバナの古名。源氏物語に登場する末摘花は、鼻が赤いことから光源氏にそう呼ばれます。「出づ」は自動詞「出る」、他動詞「出す」の両方の意味があります。ここでは後者ですね。