あさなあさな たつかはぎりの そらにのみ うきておもひの あるよなりけり
朝な朝な たつ川霧の そらにのみ うきて思ひの ある世なりけり
よみ人知らず
毎朝立ちのぼる川霧が空に浮かぶように、あの人への私の思いも通じているかどうかもわからずふわふわと漂っていることよ。
「朝な朝な」は、「夜な夜な」と同じ語法で、朝毎に、の意。0016 にも出てきましたね。「世」には、古語では「男女の仲」という意味もあり、ここではその意でしょう。「うきて」は「浮きて」と「憂きて」の掛詞とも読めますが、「憂し」にも掛けた詠歌かどうかは両論あるようです。