おもひいづる ときはのやまの いはつつじ いはねばこそあれ こひしきものを
思ひ出づる ときはの山の いはつつじ 言はねばこそあれ 恋ひしきものを
よみ人知らず
あなたのことを思い出す時は、口に出しては言わないけれど、とても恋しいのです。
第二句・第三句(「ときはの山の いはつつじ」)が挿入されていて、結果、現代の感覚では解釈が難しくなっています。「ときは」は「常盤(の山)」と「時は」の掛詞で、さらに「ときはの山の いはつつじ」全体で次の「言はねば」を導く序詞になっています。それを含めて書けば、「あなたを思い出すときには、常盤山の岩つつじではないが、そのことを声に出しては言わない。だけれども、口に出さずとも恋しい気持ちの強さにかわりはないのです。」ということですね。技巧を凝らした詠歌です。