漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0495

2021-03-08 19:59:28 | 古今和歌集

おもひいづる ときはのやまの いはつつじ いはねばこそあれ こひしきものを

思ひ出づる ときはの山の いはつつじ 言はねばこそあれ 恋ひしきものを

 

よみ人知らず

 

 あなたのことを思い出す時は、口に出しては言わないけれど、とても恋しいのです。

 第二句・第三句(「ときはの山の いはつつじ」)が挿入されていて、結果、現代の感覚では解釈が難しくなっています。「ときは」は「常盤(の山)」と「時は」の掛詞で、さらに「ときはの山の いはつつじ」全体で次の「言はねば」を導く序詞になっています。それを含めて書けば、「あなたを思い出すときには、常盤山の岩つつじではないが、そのことを声に出しては言わない。だけれども、口に出さずとも恋しい気持ちの強さにかわりはないのです。」ということですね。技巧を凝らした詠歌です。