おもふとも こふともあはむ ものなれや ゆふてもたゆく とくるしたひも
思ふとも 恋ふともあはむ ものなれや ゆふ手もたゆく とくる下紐
よみ人知らず
あの人のことをどれほど思い、恋慕っても実際には逢えないというのに、結びなおす手が疲れるほどに、下紐が何度も解けてしまうのです。
言葉的にも意味内容的にもなかなかに難解です。^^;
「ゆふてもたゆく」は「結ふ手も弛く」で、下紐を結ぶ手が疲れてだるくなってしまうの意。「下紐」は下袴や下裳の紐で、下紐が解けるのは恋人に逢える前兆と信じられていました。結び直す手が疲れてしまうほどに下紐が何度もほどけるのに実際には逢えないもどかしさ、苦しさを詠んでいますが、逢いたい一心で、わざと下紐を緩く結んでは逢瀬を願っているのかもしれません。そう考えると一層切ない歌に思えてきますね。