【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「サンシャイン・クリーニング」:西葛西六丁目バス停付近の会話

2009-07-08 | ★亀29系統(なぎさニュータウン~亀戸駅)

ここにもきれいな公園があるのね。
でも、こういう公園の掃除って、びんとか缶とかいろんな落し物があってたいへんだろうなあ。
もっと、たいへんな掃除があるわよ。
なに?
殺人とか自殺とか、事件現場の掃除。
血まみれの床とか家具とかの掃除か。考えただけでぞっとする。
でも、それを女の姉妹で始めるっていうんだから、勇気があるわよね。
「サンシャイン・クリーニング」の話か。
うん。30過ぎたアメリカの姉妹が始める新しい仕事。
姉は昔の恋人と不倫しているシングル・マザーだし、妹はすぐ職場をクビになるフリーターだし、どうにもパッとしない姉妹が、事件現場の掃除という仕事を見つけ、衝突しながらもなんとかこなしていく。
うーん、なんか、身につまされるなあ。
こんな冴えない姉妹が?
冴えないからこそ身近で、それだけに身につまされるのよ。
こういう登場人物に比べると「それでも恋するバルセロナ」の登場人物はみんな華やかだったよなあ。
あれはセレブの世界よね。こっちは庶民の現実。現実の中で右往左往しながらそれでも生きていくその姿が健気じゃないの。
学生時代はチアリーダーでブイブイ言わせてたのに、いまや見る影もなく、仲間たちのほうがよっぽど幸せになっているなんて、ありそうな話だもんなあ。
ありそう、ありそう。
って、ずいぶんうなずいてるけど、ひょっとして、お前にも経験がある?
あたらずといえど、遠からずなところがくやしい。
奇妙にチャーミングな映画だった「リトル・ミス・サンシャイン」のスタッフがつくったっていうから、もっとぶっ飛んだキャラクターの一家が出てくるのかと思ったら、案外近所にいそうなお姉ちゃんたちなんでびっくりした。
最後にはいい男が現れてめでたし、めでたしかと思ったらそういう展開でもないところがまたリアルで共感しちゃうのよねえ。
それも経験がある?
いい男なんてそんな都合よく現れないってところがね。
悪かったな。
彼女たちと仲良くなる男は出てくるんだけど、恋とか愛とかとは無縁な存在なのがいいのよねえ。
事件現場の掃除なんていう設定で、「リトル・ミス・サンシャイン」のスタッフなら、もっと事件にからんだドラマをふくらませていくらでもおもしろい話にできただろうに、そっちには持っていかなくて姉妹の日常に的をしぼったっていうのが意外だった。
でも、そこがこの映画の魅力なのよ。
魅力かどうかはわからないけど、憎めない映画だったことはたしかだな。
何をやってもうまくいかなくて落ち込んだときに観たら、しょーがないなあ、明日からまたがんばろうかなって気持ちにさせてくれそうな映画。
サンシャイン・クリーニングだけに、心洗われた?
ううん、事件現場の掃除と一緒で、過去まできれいに洗い流すことはできないけど、少しぐらい汚れがあっても生きていっていいかなっていう気にはなった。




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ふたりが乗ったのは、都バス<亀29系統>
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