【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「美代子阿佐ヶ谷気分」:スポーツセンター前バス停付近の会話

2009-07-15 | ★亀29系統(なぎさニュータウン~亀戸駅)

ここの音楽教室、ピアノやバイオリンだけじゃなくて、ギターも教えてくれるのかな。
どうして、いまさらギターなんて習いたいの?
「美代子阿佐ヶ谷気分」を観ていたら、70年代のことを思い出しちゃってさ。
あの頃は、みんながギターを抱えていたもんね。
ガロの「学生街の喫茶店」なんかを口ずさみながらな。
ガロといえば私が思い出すのは、有名なコミック雑誌の「ガロ」。
その雑誌「ガロ」に漫画を投稿していた安部愼一と彼の恋人の物語が「美代子阿佐ヶ谷気分」。
彼自身、自分たちのことを描いた「美代子阿佐ヶ谷気分」という漫画を発表している。それがこの映画の原作。
二人で東京に出てきて、阿佐ヶ谷にアパートを借りて男は漫画を描き始める。
それだけでもう70年代我等の時代って感じで、いかにも陰々滅々な物語が始まりそうよね。
暗い、暗い。ひたすら暗い。とにかく誰も笑わない。
ちょっと、つげ義春風の感じっていえば、わかるかな。
漫画を描くことに悩んで、ついには頭がおかしくなってしまう。
あんな暗い漫画ばっかり描いてたんじゃ、気も滅入るわよ。
それを支え続ける女性のたくましさ。
よくあんな風采の上がらない男に、愛想もつかさず、一緒に暮らしてるわね、って思っちゃうんだけど、それは今の感覚かしら。
あの頃は、ああいう暗い男が流行ってたんだよ。その空気はよく出ている。
でも、監督の坪田義史は90年代後半の生まれだっていうから、あの頃の空気は知らないはずなんだけどね。
そんなこと言ってたら、時代劇とか戦争映画なんか誰にもつくれなくなる。
自分の経験していないことだって、きちんと描けるのがほんとうの映画監督ってもんよね。
でも、一方で、安部愼一は自分の経験していないことは描けなかった。
そっか。安部愼一に心酔している映画監督が、安部愼一と違う方法論で彼をモチーフにした作品をつくるって矛盾してない?ってことか。
漫画と映画の違いがあるとはいえ、そのあたりのことをどう自覚していたんだろうな。
難しいわね。
どっちがほんものの芸術家か議論のわかれるところだ。
どっちもほんものなんじゃないの?
あ、そつなくまとめるね。何をおいても妥協を嫌う70年代の会話じゃあないな。
そりゃそうよ。いくら70年代を描いた映画の話をしているって言っても、私は今を生きる女なのよ。それに、映画だって70年代だけじゃなくて、その後の安部愼一も描いてたじゃない。
俺だってそうだ。ギターは懐かしいから、弾きたくなっただけだ。
で、いまさら何を弾きたいの?
浅田美代子の「赤い風船」。
それは美代子違いでしょう。





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