Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

読売日響第500回定期演奏会

2011年01月24日 | 音楽
 読売日響の第500回定期。指揮は正指揮者の下野竜也さん。1曲目は委嘱新作、池辺晋一郎さんの「多年生のプレリュード」。節目の演奏会にふさわしく、いかにも祝典序曲的な曲だ。よく鳴る。これまでに夥しい数の作品を書いてきたこの作曲家が、すでにベテランの域にたっし、このスタイルならもうなんでも書けるという筆致の曲。求心的ではなく遠心的。さまざまなアイディアが盛り込まれている。部分、部分ではデジャヴュ(既視感)をおぼえることもあった。

 休憩後はリストの「ファウスト交響曲」。怪物的なこの大作を驚くべき――といっても大袈裟ではないほどの――把握力と表現力で演奏した快演だった。下野さんの明晰な構成力と読売日響の演奏力が結実した演奏。

 第1楽章冒頭の「1オクターヴの12の半音をすべて用いた不安定な主題」(プログラムノート)が――もともと遅いテンポの部分だが――さらに遅めのテンポで演奏された。この主題はなんども顔を出すが、その都度テンポは同じ。第2楽章も遅めのテンポがとられていた。ここまで来て、上岡敏之さんを思い出した。ただ、上岡さんにはある種の表現主義的な性向が感じられるが、下野さんの場合はなかった。

 第3楽章(最終楽章)の末尾のテノール独唱(吉田浩之さん)と男声合唱(新国立劇場合唱団)も美しかった。大曲の決着を声楽でつける発想はマーラーの嚆矢となるもの。

 終演後、アフタートークがあった。西村朗さん、片山杜秀さん、江川紹子さん、下野竜也さんがパネリスト。司会は理事長の横田弘幸さん。さすがに報道機関のオーケストラだけあって人選がうまい。それぞれの立場でご自分の意見をいくらでも持っている方々だ。

 テーマは「今、オーケストラには何を求めるか?」。ちょっと大上段にふりかざしたテーマ。それを承知のうえで、自由に語ってもらおうという趣旨だろう。

 これが面白かった。内容は速報がホームページに載っているし、詳細は3月号の「月刊オーケストラ」(プログラム誌)に載るそうだ。が、参加できなかったかたには申し訳ないが、ライヴのニュアンスは紙面では難しいかもしれない。今のオーケストラを法隆寺にたとえた西村さんのブラックジョーク、音楽好き=マイノリティーの生きる権利を主張した片山さんの自虐的ユーモア、ドヴォルジャークの交響曲第4番をめぐる「名曲コンサート」か「有名曲コンサート」かの下野さんの問い・・・。会場の笑いや拍手には共感がこもっていた。
(2011.1.22.サントリーホール)

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2 コメント

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初めまして♪ (vodka)
2011-01-25 13:24:52
私の拙いブログをブックマークしてくださって、どうもありがとうございます。
私もこの読響の公演に行きました。演奏も素晴らしかったですが、アフタートークがとても面白く、またいろいろ考えさせれましたので、今度記事にしようと思っていました。
Enoさんは音楽と美術にとても造詣が深くていらっしゃるんですね! これからも音楽のこと、美術のこと、いろいろ勉強させてください。どうぞよろしくお願いします。
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Unknown (Eno)
2011-01-25 19:25:17
vodkaさん、コメントありがとうございます。いつも愛読しています。わたしもvodkaさんのように、楽しい、センスのあるブログを書きたいと思いますが、到底無理です(笑い)。新しいブログも好調のようで、なによりですね。
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