Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

山下一史/千葉響「ありがとうコンサート」

2023年04月09日 | 音楽
 先日、千葉交響楽団(以下「千葉響」)の「ありがとうコンサート」に行った。「ありがとう」の意味は3通りあるそうだ。一つ目は5弦のコントラバスの購入のためのクラウドファンディング成功への「ありがとう」。二つ目は4月から2年余りの大規模改修工事に入る千葉県文化会館への「ありがとう」。三つ目は聴衆の皆さんへの「ありがとう」。

 クラウドファンディングでは目標額を大きく上回る募金が集まったそうだ。当コンサートでは募金で購入した5弦のコントラバスのお披露目があった。ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」を例にとり、通常の4弦のコントラバスでは出ない音が、5弦のコントラバスでは出ることが実演で示された。またサン=サーンスの「動物の謝肉祭」の中の「象」が5弦のコントラバスと4弦のコントラバスの二重奏で演奏された。

 千葉県文化会館は千葉響のホームグラウンドだ。また千葉響の事務局が入居している施設でもある。それが4月から2年余り使えず、事務局も引越しを余儀なくされた。加えて、千葉響が千葉県文化会館とともにホームグラウンドにしていた習志野文化ホールも取り壊される。そのお別れコンサートも過日開かれた。せっかく上り調子にある千葉響としてはダブルパンチだ。ともかく頑張るしかないと。

 「ありがとうコンサート」ではチャイコフスキーのオペラ「エフゲニー・オネーギン」から「ポロネーズ」、マーラーの交響曲第5番から「アダージェット」、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」そしてスメタナの「モルダウ」が演奏された。指揮は音楽監督の山下一史。山下一史が音楽監督に就任して以来、そのリーダーシップのもとで、千葉響は急速にレベルを上げている。

 余興といってはなんだが、クラウドファンディングへの返礼品に「千葉響との共演」があり、それに応募した4人が登場した。いずれもアマチュアだが、会社を早期退職して桐朋学園芸術短期大学に入学した人や、国立音楽大学の卒業生もいる。曲目はグリンカのオペラ「ルスランとリュドミラ」序曲(指揮)、ハイドンのチェロ協奏曲第1番から第1楽章(チェロ独奏)、映画「ニュー・シネマ・パラダイス」の音楽(アルトサクソフォン独奏)、シャンソン「老いぼれ役者」(歌)。この4人が楽しかった。それぞれの人生がにじみ出て、音楽とはプロだけのものではないと思った。

 アンコールにドヴォルジャークのスラヴ舞曲第1番が演奏された。冒頭のトゥッティが明るくポジティブな音で鳴り、目が覚めるようだった。その後も快演が続いた。千葉響のいまのモラルの高さが表れた演奏だった。千葉県のマスコットキャラクター「チーバくん」も登場して、客席を盛り上げた。
(2023.3.30.千葉県文化会館)
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