Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

小泉和裕/日本フィル

2013年12月07日 | 音楽
 小泉和裕が振った日本フィルの定期。ベートーヴェンの交響曲第2番と第7番のあいだに小倉朗(おぐら・ろう)の交響曲ト調が演奏された。

 小倉朗(1916‐1990)のこの曲は日本フィル・シリーズ第20作として書かれた曲。1968年(昭和43年)6月13日に渡邉暁雄/日本フィルによって初演された(Wikipediaの日本フィルのページより)。次の第21作は小澤征爾の指揮で高橋悠治の「オルフィカ」だったので、渡邉体制の最後の作品だ。

 当時わたしは高校生だったので、この演奏会は聴いていない。演奏会に行けるようなお金はなかった。日本フィルや読響の公開録音に応募しては、せっせと会場に足を運ぶのが関の山だった。あとはFM放送やレコードで聴く音楽がすべてだった。

 今回初めて聴くこの曲は、まさに昭和の曲だった。今ではもう失われた活気があった。活気のある社会がこの曲には刻印されていた。第一次オイルショックが起きたのは1973年(昭和48年)だから、まだ活気があったのだ。ノスタルジックな想いがしたのは、わたしが当時を知っているからだろう。

 この曲は「日本フィル・シリーズ再演企画」の第7弾として演奏された。同シリーズの諸作品が再演されるようになって、今回でもう7回目というわけだ。なんといっても傑作だったのは(傑作というのは、すぐれているという意味だけではなく、笑いを誘うという意味でも使いたいのだが)下野竜也が取り上げた山本直純の「和楽器とオーケストラのためのカプリチオ」(同シリーズ第10作)だ。あのハチャメチャな曲が渡邉暁雄の指揮で初演されたというのだから、その光景を想像するだけでも楽しい。

 こうしてみると、同シリーズの再演企画は‘発掘’の楽しみがある。どんな曲が過去に作られたか、その宝探しの趣がある。作曲当時の時代を問う意味もまたある。

 なので、もしできれば、手書きのスコアをパネルにしてロビーに展示したり、当時の演奏会風景や社会での出来事をパネルで展示したりすれば、もっと楽しい企画になるかもしれないと思った。

 ベートーヴェンの演奏についても触れると、小泉和裕の今の充実ぶりがうかがえる演奏だった。実りの秋という言葉がふさわしい時期を迎えていると感じられた。その一方で、長年培ってきた都響とのパートナーシップは、一朝一夕では築けないレベルに達しているのだとも思った。
(2013.12.6.サントリーホール)

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