Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

カンブルラン/読響

2016年02月13日 | 音楽
 カンブルランによる‘夜’のプログラム。東京にいると‘夜’を意識することはあまりないが、‘夜’とは幻想、怪奇、怯え、孤独、あるいは‘愛’に満ちたものだという感慨に浸るプログラムだ。

 1曲目はモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」。8‐8‐6‐4‐3のスリムな編成で、配置は第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ(後ろにコントラバス)、第2ヴァイオリンの順。各声部の動きが明瞭に聴き分けられる。リズムが粘らない。

 第2楽章が(わたしのイメージよりも)速めだった。そうか、この楽章はアンダンテだったかと気付く。中間部はさらに速めだった。短調に転調するその中間部がさらに印象的になった。愛の不安、愛の悲しみ、そんなロマンチックな感情に揺れた。

 2曲目はマーラーの交響曲第7番「夜の歌」。編成は16型。第1楽章の展開部後半に入って第1ヴァイオリンの甘美な旋律が浮き上がり、思わず惹きこまれた。テンポも少し落ちたようだ。陶酔的な音楽。愛の音楽。これは「トリスタンとイゾルデ」の‘愛の二重唱’の続きではないかと思った。カンブルランと読響は昨年9月に「トリスタンとイゾルデ」を演奏したが、それとこれとはつながっているのかと思った。今シーズンのプログラムを組むときに、すでに計算されていたのだろう。

 第2楽章以下でも幸福感に満ちた音楽が繰り広げられた。瑞々しい音色。とげとげしいところは微塵もない。しかもこの巨大な音楽のすべてを描き尽くそうとする演奏。並外れた演奏。カンブルランの恐るべき実力に脱帽するほかない。

 トランペットの一番奏者が好調だった。若い人だが、なんていう人だろうか。ホルンも頑張っていたが、第2楽章冒頭のソロで音を外したのが痛い。あそこは難しいのだろう。ユーホニュームも朗々とした音だ。金管の真ん中、トランペットとトロンボーンの間に陣取っていた。この曲でこの配置はいい。

 記憶している方も多いと思うが(プログラムの「楽員からのメッセージ」欄で打楽器の野本氏も触れているが)、読響は2006年にこの曲をセーゲルスタムの指揮で演奏したことがある。第5楽章の爆発的な演奏に度肝を抜かれた。あれはあれでこの楽章の一つの捉え方であり、問題提起だったと思うが、今回は第5楽章をふくめた全体が巨大な構造体を形成していたように思う。

 終演後の拍手の熱かったこと。
(2016.2.12.サントリーホール)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ボッティチェリ展 | トップ | パーヴォ・ヤルヴィ/N響 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

音楽」カテゴリの最新記事