Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

パーヴォ・ヤルヴィ/N響

2017年09月24日 | 音楽
 パーヴォ/N響のCプロは、グリンカの「幻想的ワルツ」、ラフマニノフのピアノ協奏曲第4番、スクリャービンの交響曲第2番というプログラム。グリンカの「幻想的ワルツ」はどこかで聴いたことがあるが、ラフマニノフとスクリャービンの2曲は聴いた記憶がない。ありきたりの曲目ではないところが好ましい。

 まずグリンカでは、淡々とした表情の中に、短調のワルツ特有の抒情が漂う。パーヴォ/N響のいつもの緊張感のある音とは異なる、しなやかな、心地よい弾みのある音。曲に応じて多彩な音を使い分けるパーヴォのパレットの豊かさ。

 2曲目はラフマニノフのピアノ協奏曲第4番。ピアノ独奏は1986年ロシア生まれのデニス・コジュヒン。わたしはこのピアニストを知らなかったので、事前にナクソス・ミュージック・ライブラリーを覗くと、いくつかのCDがあったので、ラフマニノフのピアノ三重奏曲第2番「悲しみの三重奏曲」を聴いてみた。たいへんな名手だと思ったので、期待していた。

 だが、よく分からなかった。事前に得たイメージが髣髴とする瞬間もなくはなかったが、たぶんわたしがラフマニノフのこの曲をつかむことができず、ギクシャクした感じを持ってしまったからだろう、このピアニストのこともよくつかめなかった。

 アンコールにロシア情緒を湛えた小曲が演奏された。だれの曲だろう‥。じつは演奏前にコジュヒンがメガホンのように両手を口に当てて曲を言ってくれたのだが、聞き取れなかった。休憩中にロビーの掲示を見たら、スクリャービンの「3つの小品」作品2から第1番「練習曲」。プログラム後半へのつなぎを意識した選曲。

 スクリャービンの交響曲第2番は名演。この曲は全5楽章からなるが、第1楽章と第2楽章は連続していて、緩徐楽章の第3楽章は独立し、第4楽章と第5楽章は連続している。中間楽章(第3楽章)を中心としたアーチ型の構成。各楽章は異なる音楽的性格を持つが、それらを的確に描き分け、しかも全体をクリアーに造形した演奏。わたしは音の道筋を終始追うことができた。

 この曲の決定的な名演だと思った。時々ある演奏を聴いて、その曲の何たるかが分かったと思うことがあるが、今回はそのような稀有の経験の一つだった。

 それにしても、第3楽章の鳥の声を交えた音楽は印象的だ。不安な夜の音楽か。「トリスタンとイゾルデ」の第2幕とは異なるスクリャービンの夜。
(2017.9.23.NHKホール)

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