Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ペンデレツキ/都響

2019年06月26日 | 音楽
 ペンデレツキ(1933‐)が客演した都響のBプロ。1曲目はペンデレツキの「平和のための前奏曲」(2009年)。金管と打楽器のためのファンファーレで、演奏時間は約5分と短い曲。この曲だけはペンデレツキのアシスタントとして同行したマチェイ・トヴォレクMaciej Tworekという人が指揮した。

 平明なハーモニーなので、作曲者名を伏せて聴かせられたら、これがペンデレツキの曲だとは思わないだろう。初演はゲルギエフ指揮のワールド・オーケストラ・フォー・ピース2009という団体なので、なにかの機会音楽かもしれない。

 演奏は冒頭でアンサンブルが乱れて、バス・トランペット(ファースト・トロンボーン奏者の持ち替え)のテーマが不安定になったが、その後持ち直した。

 2曲目はヴァイオリン協奏曲第2番「メタモルフォーゼン」(1992‐95年)。アンネ=ゾフィー・ムターによって初演された曲。ペンデレツキの人気作といえるだろう。演奏時間約40分の大曲だが、変化に富み、飽きさせない。ペンデレツキの「聴かせ上手」な側面が遺憾なく発揮された曲だ。

 ヴァイオリン独奏は庄司紗矢香。曲をすっかり手中に収め、生き生きとした演奏だった。意味不明な音の動きは一切ない。大変な存在感だ。ペンデレツキの指揮は少々緩かったが、庄司紗矢香のヴァイオリンが演奏全体を引き締めていた。わたしはとくにコーダの、音楽が異次元に韜晦するような部分の、集中力ある表現に惹かれた。

 アンコールにバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番から第3楽章ラルゴが弾かれた。凛とした音が、まるで透明な空に吸い込まれていくかのような演奏だった。

 3曲目はベートーヴェンの交響曲第7番。過去に何度かペンデレツキの指揮する都響や日本フィルの演奏会を聴き(余談だが、日本フィルのときもヴァイオリン協奏曲第2番をやった。ヴァイオリン独奏は諏訪内晶子で、それも名演だった。1999年11月のこと)、その指揮するメンデルスゾーンやドヴォルジャークの交響曲を聴いてきたので、ベートーヴェンがどのようになるか、大方の予想はついた。そしてその予想の範囲内で、最良の結果になった。

 都響のしっかりしたアンサンブルが演奏を支えていたのはいうまでもないが、ペンデレツキがそのアンサンブルにどっしり乗って、余計なことをせずに、幾分古風なオーラを放ったことが、良い結果に結びついたのだろう。
(2019.6.25.サントリーホール)

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