Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ラザレフ/日本フィル

2021年10月23日 | 音楽
 ラザレフ指揮日本フィルの東京定期。プログラムの前半はリムスキー=コルサコフの「金鶏」組曲とピアノ協奏曲(ピアノ独奏は福間洸太朗)、後半はショスタコーヴィチの交響曲第10番。ラザレフは今年4月に続いての来日だ。客席はよく埋まっていた。徐々にコロナ以前の日常に戻りつつあるのか。

 リムスキー=コルサコフの2曲は珍しい曲だ。わたしは「金鶏」のオペラ上演を2000年7月にオーストリアのブレゲンツ音楽祭で観たことがある。革命前の帝政ロシアを風刺したオペラだが、楽しい舞台だった。それから21年もたつのかと感慨を覚える。21年ぶりに聴く「金鶏」の音楽は、異国情緒たっぷりでカラフルで、「そういえばこういう音楽だったな」と懐かしかった。

 ピアノ協奏曲を聴くのは初めてだ。山野雄大氏のプログラム・ノーツによれば、リストのピアノ協奏曲第2番をモデルにしているそうだ。たしかにピアノ・パートはリストのように甘美で華麗だ。福間洸太朗のピアノ独奏はそのような曲想をよく伝えていた。アンコールにリストの「愛の夢」第3番が弾かれた。

 ショスタコーヴィチの交響曲第10番はラザレフの十八番といってもいい曲だ(第10番にかぎらずショスタコーヴィチのほとんどの交響曲が十八番だろうが)。演奏はスケールの大きさ、豪快さ、そしてアンサンブルの緻密さを備えた申し分のないものだった。とくに第2楽章の猛スピードは特筆ものだ。目の前をあっという間に駆け抜けた感がある。

 弦楽器は16型だった。日本フィルでは久しぶりだ。16型だと音圧がちがう。それもコロナ以前の日常だった。その弦楽器と3管編成の木管・金管(そして2台のハープ、チェレスタ、多数の打楽器)が繰り広げる演奏風景は、昔懐かしいものだった。

 ラザレフは10月16日の横浜定期ではドヴォルジャークのチェロ協奏曲(チェロ独奏は宮田大)とブラームスの交響曲第2番を演奏した。そのブラームスの交響曲第2番が名演だった。スケールの大きさとアンサンブルの緻密さを兼ね備え、しかもよく歌う演奏だった。そのときに感じたのだが、ラザレフの演奏には最近一種の客観性が備わってきたのではないか。悠然とした風格のようなものが感じられた。

 ショスタコーヴィチの交響曲第10番でも同じようなものが感じられた。豪快な演奏にはちがいないが、ぐいぐい押すタイプではなく、そこに一種の客観的な構えが感じられた。それはラザレフの年齢からくるものなのか(ラザレフは1945年生まれだ)、日本フィルとの協演の積み重ねによるものなのか(首席指揮者就任は2008年だった)、それらの混在によるものか。
(2021.10.22.サントリーホール)

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