Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

メッケネムとドイツ初期銅版画展

2016年08月13日 | 美術
 国立西洋美術館で「メッケネムとドイツ初期銅版画展」が開かれている。メッケネムという版画家は、わたしには未知だった。1445年頃に生まれ1503年に亡くなったドイツ人。デューラー(1471‐1528)よりも前の世代の人だ。

 デューラーの版画展が、やはり同館で2010年に開かれた。デューラーの油彩画はもちろんだが、版画もすばらしいことを、そのとき初めて知った。今回も、メッケネムという名前は知らなかったが、見るだけ見ておこうと思って出かけた。

 版画は小さいので、混んでいるとよく見えない。そこで平日の夕方に出かけた。それでも小中学生が結構いた。大人も多かった。夏休みということもあるが、同館が世界遺産に登録されることになったのも、多くの人々が訪れる一因だろう。

 チラシ(↑)に使われている「モスカリダンス」は、奇想という面ではインパクトが強いが、メッケネムの初期か、中期か、ともかく描線にまだ硬さがある(本作の場合はそれが魅力でもあるが)。一方、後期の作品になると、線描が柔らかくなり、自由に動き、かつハッチング(平行線)による陰影が繊細になる。

 そういう作品の好例と思われるものに「恋人たちのオーナメント」があった(画像は下記リンク参照↓)。本作は装飾的な作品なので、宗教的な題材や世俗的な題材を扱ったものではないが、その繊細さには驚くべきものがあった。

 宗教的な題材を扱った作品をあげると「ヘロデ王の宮廷での舞踏会」(画像は↓)。サロメが洗礼者ヨハネの首を受け取っているが、その光景は左上に小さく描かれているだけで、画面の前景には舞踏会を楽しむ賓客がぎっしり描かれている。メッケネムの力量の高まりを示す好例だと思う。

 一言触れておきたい作品は「聖グレゴリウスのミサ」(画像は↓)。キャプションによると「免罪の機能を持つ銅版画の最初期の例」。本作を買うと「2万年分の贖罪の免除」になるそうだ。免罪符の一種。免罪符という言葉は知っていても、実物を見たことはなかったので、興味深かった。作品としても力作だと思う。

 閉館までまだ時間があったので、常設展にも回ってみた。人が大勢いた。常設展がこんなに賑わっているのを見るのは、わたしは初めてのような気がした。‘世界遺産’効果だろうか。ひょっとすると同館を初めて訪れる人だっていたかもしれない。そうだとしたら嬉しい。
(2016.8.10.国立西洋美術館)

「恋人たちのオーナメント」
「ヘロデ王の宮廷での舞踏会」
「聖グレゴリウスのミサ」

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