Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

大野和士/都響

2016年11月29日 | 音楽
 大野和士指揮都響のAプロ。1曲目はベルクの「アルテンベルク歌曲集」。ソプラノ独唱は天羽明恵。全5曲からなるこの作品の、どの曲もミニチュアな中で、演奏は第1曲と第5曲が、聴き応えがあった。風に舞う粉雪のような動きの第1曲と、荘重なパッサカリアの第5曲。ともにオペラ「ヴォツェック」を予告するようだった。

 大野和士のベルクはよさそうだ。「ヴォツェック」と「ルル」を聴いてみたいと思った。それは新国立劇場に行ってからの仕事だろうか。

 2曲目はラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」。ピアノ独奏はピエール=ロラン・エマール。最後のカデンツァでのアルペッジョの繰り返しが、まるで七色に湧き立つ雲のようだった。

 オーケストラもよかった。音色とリズムにセンスがあった。大野和士とエマールには音楽的志向に共通項があるというか、同質の緻密さがあるというか、何かそんな高いレベルでの相互理解を感じた。

 驚いたことに、エマールはアンコールにブーレーズの「12のノタシオン」の第8曲~第12曲を弾いた。これはもうエマールの独壇場だ。聴くほうもじっと息を殺して音に集中する。そういう凝縮力のある音楽=演奏だった。

 3曲目はマーラーの交響曲第4番。透明感のあるハーモニー、しなやかなリズム、そして瑞々しい感性というように、大野和士の前任者(といっても、前任者は首席指揮者、大野和士は音楽監督なので、役割は違うが)のマーラーとは相当異なるマーラーだ。

 わたしは第1楽章がよいと思った。細かく変化するテンポに、大野和士らしいドラマトゥルギーを感じた。とくにホルンのソロが出る終結部のテンポに、日没のような深い余韻を感じた。また第3楽章の冒頭では、弦の透明な音に、彼岸の世界を感じた。わたしは11月23日に山で遭難したので、そのためかもしれないが‥。

 高い山ではなかったが、枯れ葉が積もっていたので、登山道を見失った。元の場所に戻ろうとしているうちに、道に迷った。夜間からは降雪の予報だったので、やむを得ず救助を求めた。ヘリコプターが飛び、レスキュー隊が入って、夜の8時頃だったろうか、無事に救助された。翌朝、白く冠雪した山々や、なおも降り続ける雪を見て、もし救助されずに山にいたら、低体温症になって、一晩もたなかったかもしれないと思った。地元の警察と消防の方々には、いくら感謝してもしきれない。
(2016.11.28.東京文化会館)

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