Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

武満徹の『ジェモー(双子座)』

2016年08月27日 | 音楽
 サマーフェスティヴァル2016のプログラムに「国際作曲委嘱シリーズ」の一覧が載っている。それを見ると、同シリーズはサントリーホールが打ちたてた金字塔という感を強くする。その再演シリーズとして、第1作の武満徹の「ジェモー(双子座)」(1986)と第17作の譚盾(タン・ドゥン)の「オーケストラル・シアターⅡ:Re」(1993)が演奏された。

 1曲目は武満徹の「ジェモー(双子座)」。舞台下手(左側)にはオーボエ独奏(荒川文吉)とオーケストラⅠが陣取る。指揮者は三ツ橋敬子。上手(右側)にはトロンボーン独奏(ヨルゲン・ファン・ライエン)とオーケストラⅡが陣取る。指揮者はタン・ドゥン。オーケストラは東京フィル。

 外見的にはオーボエとトロンボーンの2重協奏曲だ。木管と金管、高音と低音、鋭い音と柔らかい音という具合に、対照的な音色の組み合わせ(その経緯はともかくとして、結果としてはそうなった)。

 一方、2群のオーケストラのほうは、対照的というよりも、一つのテクスチュアを交互に織っているような感じだ。多層的というよりは、いつもの武満トーンを、いつもより入念に織っている感じがする。

 演奏は、独奏者2人も優秀だったが、オーケストラⅠを率いた三ツ橋敬子の敏感さに注目した。音楽への反応がよく、加えてはっきりした主張がある。オーケストラのリードにためらいがない。三ツ橋敬子は今まで何度か聴いたことがあるが、その才能が花開く時期が近づいたようだ。

 2曲目はタン・ドゥンの「オーケストラル・シアターⅡ:Re」。武満ファンのわたしがこんなことをいうのも何だが、この曲のほうが鮮やかなインパクトがあった。細かい描写をしても冗長になるし、言葉でそのインパクトを伝えられるものでもないので、結論だけいうと、劇場のライヴ感を演出するタン・ドゥンの手腕に圧倒された。なおオーケストラは三ツ橋敬子が振り、客席に配置された奏者と聴衆(!)をタン・ドゥンが振った。

 3曲目の武満徹の「ウォーター・ドリーミング」(1987)は、いつもの武満の世界で、ホッと一息ついた。そして4曲目はタン・ドゥンの「3つの音符の交響詩」(2010)。ラ・シ・ドの3つの音符が陳腐なコラールを奏するが、それを妨害し、揶揄するような足踏みその他の音が入る。でも「ラ・シ・ド」も負けていない。バトルが起きる。これもライヴのための曲だ。
(2016.8.26.サントリーホール)

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