Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

小泉和裕/日本フィル

2016年06月11日 | 音楽
 小泉和裕が客演指揮した日本フィルの定期。プログラムはシューマンの「マンフレッド」序曲、ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」、ブラームスの交響曲第2番というもの。きわめてオーソドックスなプログラムだ。そのオーソドックスなプログラムという点に意味がありそうだと思った。

 どの曲も誠実かつ丁寧な演奏だった。曲の規模からいって、やはりブラームスの交響曲第2番がもっとも聴き応えがあった。どっしりと構えて、しかも重くならず、情感豊かな演奏になった。端的にいって、指揮者の内面的な充実が感じられる演奏だった。円熟といってもいいかもしれないが、ともかく、あの若々しくて颯爽としていた小泉和裕が、こんなふうに成熟を遂げつつあるのかと思った。いい年の取り方をしている。わたしよりも2歳年上だが、ほぼ同世代。我がことのように嬉しい。

 日本フィルがこの指揮者に今回このようなプログラムを任せたのは、その成熟ぶりに信頼を寄せたからではないだろうか。それが実って、立派な成果を上げたと思う。

 たしかに地味なプログラムだ。小泉和裕も、どちらかというと地味なキャラクター。なので、満席とはいかなかった。わたしが座っている2階席後方には空席もあった。でも、演奏が進むにつれて、客席に集中力が増すのが感じられた。舞台と客席との一体感が生まれたと思う。

 演奏中の(そして演奏後の)派手なパフォーマンスで人気を取る日本人指揮者もいる。先日もその指揮者の演奏会を聴いた。それに比べると、小泉和裕のこの演奏会の後味の良さが際立つ。

 小泉和裕と日本フィルとの関係も良好のようだ。少なくとも演奏を聴くかぎりでは、しっかり噛み合っていたと思う。日本フィルのアンサンブルもよかった。ラザレフとインキネンの効果が蓄積されているようだ。

 個別の奏者では、ブラームスの交響曲第2番でのホルンの1番奏者を挙げたい。日橋さんがトラで入っていた。古巣に帰った日橋さん。さすがの演奏で聴き惚れた。

 終演後にオーケストラ全員で一礼するのは日本フィルの流儀だが(東京シティ・フィルもやるが)、当夜は小泉和裕もオーケストラの中に入って一緒に一礼した。インキネンもそれをやる。でも、客演指揮者がやるのは珍しい。些細なことだが、これも小泉和裕の自信の表れ――演奏の面でもオーケストラとの関係の面でも――と感じられた。
(2016.6.10.サントリーホール)

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