Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

画家マティス(マインツ歌劇場)

2017年05月16日 | 音楽
 最終日はマインツに移動してヒンデミットのオペラ「画家マティス」を観た。フランクフルトからマインツまでは電車で40分くらいなので、マインツに行く前にフランクフルトでマチネー公演のフランクフルト歌劇場管弦楽団の定期演奏会を聴いた。

 指揮はミヒャエル・ザンデルリンク。曲目はシベリウスの交響詩「フィンランディア」、シベリウスのヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン独奏はヴィクトリア・ムローヴァ)、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」。会場はアルテオパー。

 ミヒャエル・ザンデルリンクは(首席指揮者を務めている)ドレスデン・フィルを率いて来日公演をしているし、また都響を振ったこともあるが、評判はどうだったのだろう。わたしは初めてだったが、「運命」はLPレコードで聴いていたような懐かしい演奏だった。一方、ムローヴァはかつての精悍さが薄れた印象だ。むしろアンコールのバッハがよかった。

 さて、「画家マティス」だが、このオペラは当地マインツを舞台にしている。オペラに出てくるマインツ大聖堂もマルクト広場も、当劇場のすぐ前にある。そういうオペラを当地の市民が観るということは、どういうことだろうと思っていたが、特別なものは感じられなかった。

 がらんとした舞台。大道具は一切ない。小道具も最低限に抑えられている。オペラというよりも演劇に近い。それも悪くはないが、それならそれで、もっと演劇的な面白さを追及してほしかった、というのが正直なところだ。ストーリーを追うだけの生真面目な上演だった。

 演出はエリザベト・シュテップラー。座付演出家の一人だ。この人の演出がいつもそうなのか、いつもは違うのかは分からないが、わたしは「画家マティス」がご当地ものなので、かえって思い切ったことをしにくかったのではないかと想像した。

 指揮はヘルマン・ボイマー。当劇場の音楽監督だ。オーケストラは(こんなことをいっては失礼だが)わたしが思っていたよりもしっかりした音を出していた。とくにオーデンヴァルトの場面(交響曲「画家マティス」の第3楽章に相当する)では熱い演奏が繰り広げられた。歌手陣も熱演だったが、音程が甘くなる人もいた。

 じつはこの日は他の都市で他のオペラを観るつもりだった。ところが、なんと、ソルドアウトでチケットが取れなかった。次善の策で「画家マティス」に行ったという事情もあった。
(2017.5.7.マインツ歌劇場)

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