Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ircam×東京春祭

2013年04月07日 | 音楽
 今年はイルカムircam(フランス国立音響音楽研究所)の当たり年だ。東京・春・音楽祭にはイルカムに関連する作品を集めた「ircam×東京春祭」が組まれているし、ラ・フォル・ジュルネにはアンサンブル・アンテルコンタンポランが参加する。

 「ircam×東京春祭」は2部のコンサートから成り、第1部では3曲が演奏された。1曲目はジェローム・コンビエ(1971-)のKogarashi(木枯し)。ギターと電子音響のための曲だ。これが面白かった。電子音響が空間を移動し、楽器音(ギター)も電子的に処理されている。それらが絡み合い、繊細な空間を形成していた。

 2曲目のヤン・マレシュ(1966-)の「スル・セーニョ」は、ハープ、ギター、ツィンバロン、コントラバスと電子音響のための曲。これには退屈した。ある一か所に停滞して先に進まないもどかしさを感じた。言い換えると、水溜りのような淀んだものを感じた。もっともそれは、作品のせいか、演奏のせいか、判断はつきかねた。この曲だけでマレシュという作曲家はこうだと決めつける気もない。

 3曲目はファウスト・ロミテッリ((1963-2004)のTrash TV Trance。エレクトリック・ギターのための曲。Trashとはゴミ箱、Tranceとはトランス状態のトランスのこと。この曲はもっとユーモラスな曲ではないかと思いながら聴いていた。そのユーモラスな味が出てこなかった。

 もっとも、個々の曲の品定めよりも、全体を通して、イルカムで定期的に開催されている演奏会に参加したような疑似体験ができたことのほうが重要で、かつ興味深かった。演奏はアンサンブル・クール=シルキュイという団体。

 第2部では2曲が演奏された。1曲目はブーレーズの「二重の影の対話」(サクソフォン版)。端的にいって、現代美術におけるインスタレーションのような曲だと思った。もっと実感に即していうと、インスタレーションのなかで聴いたらよく合うだろうな、と思った。

 2曲目は野平一郎の「息の道」。「二重の影の対話」にヒントを得て、さらに発展させたような曲。「二重の~」より壮麗になっているが、その分インスタレーションとの親近性は後退している。もっとも、インスタレーションとの関連で捉える必要はないわけだが(わたしなりの理解の工夫にすぎない)。以上2曲はクロード・ドラングルのサクソフォン独奏。
(2013.4.5.日経ホール)

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