Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

原田慶太楼/日本フィル&ソッリマ

2023年04月23日 | 音楽
 原田慶太楼指揮日本フィルの横浜定期はトラブル発生で、ライブならではの面白さだった。1曲目はドヴォルジャークのチェロ協奏曲だが、冒頭でファゴットの1番奏者の楽器にトラブルが起きた。奏者がしきりに楽器をいじっているが、直らない様子。奏者も慌てているが、それを見ているわたしも気が気でない。第1楽章が終わった時点で奏者が舞台裏に引っ込んだ。

 チェロ独奏はジョヴァンニ・ソッリマだ。ソッリマは客席を向き、オーケストラには背を向けているので、何が起きたかはわからない。原田慶太楼がそっと事情を伝えると、ソッリマは頷き、演奏の中断を埋めるかのように、抒情的な曲を弾き始めた。弾きながらオーケストラの弦楽パートにサインを送る。それに気づいた弦楽パートがハーモニーをつける。しみじみとした美しい曲だった。

 客席からは拍手が起きる。でも、まだファゴット奏者は戻らない。するとソッリマは、今度はリズミカルな曲を弾き始めた。ノリノリの演奏だ。客席は大いに沸いた。ファゴット奏者が戻る。原田慶太楼が客席に「まだドヴォルジャークです」と告げて(笑いが起きる)、第2楽章の演奏が始まった。

 演奏終了後は大拍手。ソッリマはさらにアンコールを演奏した。ドヴォルジャークの中断中に演奏した2曲目にも増してノリノリの演奏だ。どこかエスニックな調べの曲(帰宅後、日本フィルのツイッターを見ると、アルバニア伝承曲「美しきモレアよ」とのこと)。客席は湧きに沸いた。

 休憩に入り、ロビーに出ると、トイレが故障中とのこと。2階と3階のトイレが使えず、1階のトイレしか使えない。もちろん大混雑だ。それでも不思議と、とげとげしい雰囲気にはならなかった。たぶん皆さんソッリマの機転の利いた対応を楽しんだからだ。その余韻があったので、トイレの故障を面白がる余裕があったのだろう。ソッリマに救われたのは日本フィルだけではなく、ホールの運営側も、だ。

 2曲目は吉松隆の交響曲第6番「鳥と天使たち」。吉松隆、原田慶太楼、音楽評論家の齋藤弘美の3人のプレトークがあった後、演奏に入った。元々は室内オーケストラのための曲だが、当夜は14型の弦楽器で演奏された。子どものころの想い出のようなノスタルジックで美しく、かつ楽しい曲だ。吉松隆の書いたプログラムノートには、『「Pastoral(田園)」的な「Toy(おもちゃ)」のシンフォニー』とある。そのうちの「おもちゃの交響曲」的な側面が表れた演奏だった。賑やかでポジティブな演奏だ。原田慶太楼の日本人離れした感性のためだろう。
(2023.4.22.横浜みなとみらいホール)
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